2008年06月02日更新

裏#62 『春よこい』

昭和晩年。佐賀県にある海辺の町・唐津市で漁業を営む尾崎修治は、
借金の取立てに来た高利貸しをあやまって殺してしまい逃亡する。


残された妻の芳枝は、父の帰りを健気に待ち続ける9歳の息子・ツヨシのために、
苦しい生活に耐えながら、気丈に生きていた。
しかし、新聞記者が書いた記事によって、芳枝たちに更なる苦難が降りかかる・・・




春よこい
『春よこい』
6/7より丸の内TOEI2ほか全国にて
配給会社:東映




芳江を演じた工藤夕貴、逃亡犯となる修治を演じた時任三郎、
息子役の小清水一揮、新聞記者の西島秀俊、刑事の宇崎竜童など、
役者の演技や配役は申し分ない。


女の苦労話で「おしん」チックな昭和テイスト溢れる、
「何で今、この映画?」という時代錯誤感は否めないけど、
(逆に、だから良いのか?)
映画の作りはしっかりしていてるし、安定感もある。


でも【裏部屋】だ。


【裏部屋】行きを決定付けたのは、逃亡犯となる修治の行動。
まるで納得できなかった。


修治は高利貸しを殺してしまう。
でも、故意ではない。
情状酌量の余地もあるでしょう。


にもかかわらず“愛する家族”を捨てて逃げる。


その期間4年である。


殺人を犯した直後だから混乱していた、
というのなら少し冷静になってから考えよう。


もしも逃げずに、罪を認めて捕まっていたとしたら、
刑期は何年だろうか?
面会だって出来る。


逃亡犯として捕まった時の方が、逃げた分、より罪は重くなる。


それだけじゃない。
一家の大黒柱が逃げたら、
家族はとてつもない精神的、経済的ダメージを被ることになる。


逃げたことによって、より“愛する家族”を苦しめているのだよ。


そして、息子のツヨシが、
未だに自分の帰りを待っていることを報じた新聞記事を読み、
いろいろあった後、ついに修治は芳枝とツヨシの前に姿を現す。


春よこい


伊藤Pは、修治がどうやってツヨシと向き合い、
この4年間を清算するのかとても気になっていた。


勿論、4年間という長い空白期間だから、
簡単に穴埋めすることは出来ないと思うけど、
「どんな話をするのかな?」って、
ある意味、この作品のもっとも楽しみな部分だった。


しかし、修治は一晩だけ家で過ごした後、
ツヨシと向き合うことなく、自首するために再び家族の元を去る。


警察に向かう車を追いかけるツヨシ。


「お父さん!なんで!説明して!!」って・・・


修治さん、ずるくない?


なんのためにあなたはツヨシ君の前に一日だけ戻ってきたの?


少しはツヨシと向き合う時間はあったよね?


また逃げるんですか?


こんな男のために4年間、家庭を守って待ち続けていた芳枝や、
ツヨシが心底かわいそうだと思った。


伊藤P的には理解不能。
こりゃ、ダメだなって。


春よこい


ところがですね、
この話をしたらとある女性から下記のような指摘を受けた。


「もしも私が修治の立場だったら、たった1日ではツヨシと向き合えないし、
その時だけでも楽しく過ごしたいから、修治同様、説明しない。


 あとこの作品で、修治が戻った一夜の中身を描いてしまったら
 観客は想像力を掻き立てない。そこは観客に委ねても良いと思う。


 そもそも夫を待ち続けた奥さんの映画なのだから、
 修治がツヨシと向き合うシーンは必要ないのでは?」


うーん、なるほど。
全部納得とはいかないけど、
確かに芳枝の生き様がメインストーリーだ。


若い頃だったら、「いや、違うね!」ってムキになって、
持論を押し通そうとして“口論”になったかもしれないけど、
映画の感想は100人いれば100通りだ。
いろんな意見があって当たり前。


このように感想・意見を交換し合って、
別の側面から映画を解釈するのも映画の楽しみ方の一つかも。


うーん、上手くまとまった。


が、


それでもぼくは理解できない。






『春よこい』
※工藤夕貴 インタビュー 動画テキスト

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.t-shirt-ya.com/blog/cgi/mt-tb.cgi/948

コメント (2)

ひろくんママ:

私もこの映画観て来ました。
確かに修治が何故妻子を残して逃げまわっていたのか理解できません^^;
でも、工藤夕貴さんの頑張るお母さんの姿と子役の男の子の演技に泣かされました。
実話に基づいたストーリーもおもしろかったし、よい映画だったと思います。

伊藤P:

>ひろくんのママ


コメントありがとうございます。
今更のお礼で申し訳ないです・・・


頑張る母親の姿を見て、男よりも女性の方が感銘を受けることが多い映画のようですね。


もう修治が逃亡し続けるだけで、感情移入が出来なくなってしまいまして・・・
こんな男のために苦労している芳江が不憫で、不憫で・・・


そして、何の後ろ盾も無い逃亡犯を4年間逮捕できない警察って何?って・・・


それをいったら映画は成り立たないって判っているんだけど、
ついつい穿った見方をしてしまうんですよねぇ・・・

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)




リンク

プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
Powered by
Movable Type