2010年02月25日更新

#462 『ロックアウト』


ロックアウト

『ロックアウト』

2/27よりシネマート六本木にてレイト上映 (『Lost&Found』と日替公開)
配給会社:ブラウニー




記憶の一部を失いながら、ただ車を走らせる男・広。


ちょっとしたことで苛立つ彼は、
次第に自分でも気付いていなかった暴力性に戦慄を覚え始める。


そして、フラッシュバックする断片的な記憶の中で、
広は、自身が引き起こしたかもしれない過ちにも怯え始める。


そんな折、スーパーマーケットに立ち寄り、車から離れ戻ってくると、
広の車に見知らぬ少年が乗り込んでいた。


成り行きで少年を家まで送り届けることになった広だったが、
少年との出会いによって、やがて広の内面に変化が訪れる。


ロックアウト


伊藤Pと同い年である新鋭・盒狭進監督の劇場長編第一作。


「ニューヨーク国際インディペンデント映画祭 2009」の外国語部門で、
最優秀長編映画賞、最優秀監督賞、最優秀スリラー賞というトリプル受賞を果たしたのも
大いに頷ける出来栄えだった。


新人監督の長編第一作目の場合、
気負い過ぎてアレコレと詰め込めこんで散漫になってしまったり、
「俺は他の人と違うんだ!」ってことを誇示したいが故に、
難解で意味不明の作品に陥ってしまうケースが多々ある。


いわば、独りよがりのマスターベーションだ。


しかしながら、高橋康進監督は、映画が娯楽であることをよく理解しているようだ。


時間軸を巧みに交錯させ、ミスディレクションを施しながら、
広のバックグラウンドとミステリーを徐々に明らかにしていく展開で、
ラストまでグイグイと引っ張っていく。


そして、物語そのものが面白いだけでなく、
世の中から締め出された(Locked Out)男の戸惑い、
人と人との繋がりの大切さや、更には雇用問題にまでも言及していく。


ラスト近く、広がある人物と交わす会話には、グッと来るものがあった。


人は何かを背負った時、より輝き、強くなれる。


それは新たな旅立ちでもあり、挑戦でもある。


良いですねぇ。
こういの好きです。


そんな高橋康進監督の思いを代弁する主人公・広を演じた園部貴一が良い。


ロックアウト


苛立ち、怒り、優しさ、悲しみ、喜びといった
人間の持ちえるあらゆる感情をサラリと表現している。


広はどこにでもいそうな普通の男だ。
どこにでもいそうな男だからこそ、演じるのは難しい。


その広と行動を共にすることなる少年役の島田岳君も、
自然な演技を披露。


母親役の緒方美穂、広の恋人に扮した宮下ともみも、
はまり役だった。


役者たちが、監督の熱意と意図するところをキチンと理解し、
本作に臨んでいる。


そんな現場のやる気が伝わって来た。


子供がいなくなった時の母親の心情と行動に違和感を(もっと取り乱すはず)、
そして、車にチャイルドシートが取り付けられていないことや、
派出所でのやり取りと経過時間に不自然さ感じたといえば感じたんだけど、
まぁ、そこよりも広と少年の方に重きが置かれた作品なので仕方ないか。


何にしても新しい才能に巡り合う喜びを感じさせてくれる作品でした。
高橋康進監督の次回作が早くも見たくなった。


無名の監督・俳優だからといって、本作を見ないのは勿体無い。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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