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ある事件に巻き込まれ連れ去られた少女ソミ。
救い出すため立ち上がったのは、
ソミの家の隣りで質屋を営む元特殊部隊員のアジョシ(おじさん)だった。
少女を守るおじさんという大まかなプロットを聞くと、
“これって『レオン』じゃないの?”って思うんだが、
守るというよりも救い出すことが目的だし、臓器売買の問題を巧みに取り入れていたり、
麻薬組織と臓器売買組織と警察とアジョシという四つ巴の戦いが展開されたりと、
その内容は『レオン』と大分違う。
それから戦うおじさんの年齢も大分違う。
『レオン』のジャン・レノが46歳だったのに対して、
『アジョシ』はウォンビン32歳だ。
2010年製作の映画だから、撮影時は30か31歳。
ちゅうか、ウォンビン30代に見えません。
そんな童顔(?)なウォンビンを捕まえて、
「アジョシ」と呼ぶソミ。
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshiktwo.jpg)
小学生低学年のソミから見れば、三十路越えたらみんなアジョシなのかな?
で、本作を見た人が異口同音に語るのが、そのウォンビンの凄さ。
そして、確かに凄いのだよ。
アジョシは特殊部隊の元要員だから格闘技に長けていて、
随所にその俊敏な動きを披露する。
短刀を手にしての接近戦では、
ポール・グリーングラスの「ジェイソン・ボーン」シリーズを研究したに違いない
巧みな撮影と編集の効果もあって、ウォンビンの動きが映える。
形や一瞬一瞬の動きが美しい。
とても左側ひざ十字靭帯を部分断裂した人とは思えない動きだ。
(元格闘家の前田日明もひざの靭帯を断裂してしまい、動けなくなった)
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshiwobintanpatu.jpg)
あと注目すべきは、なんといっても目の演技だ。
アジョシは口数が少なく、感情のほとんどを言葉ではなく目で表現している。
最初、アジョシの目にはあまり感情を感じられない。
目に力がないのだ。
しかし、少女が拉致されてから目に様々な感情が見て取れる。
更に、戦闘シーンで見せる特殊部隊員としての鋭い目、
激闘の末の恍惚とした虚ろな目などなど、目がアジョシの“今”を代弁している。
そして、その目に常に宿っているのが、悲しみだ。
この悲しい眼差しがあるからこそ、ラストシーンが大いに活きるのだ。
このウォンビンの「目は口ほどにものを言う」演技が素晴らしい。
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshiwobinkatame.jpg)
ウォンビンは、前作『母なる証明』(09)で明らかに変わった。
2005年〜2006年にかけての兵役経験が、なにか影響を与えたのだろうか?
前から演技力はあると言われていたけど、どこかアイドル的な扱いをされていた。
でも兵役後の2作を見ると、完全にアイドルを脱し、演技派俳優へと変貌を遂げている。
いち俳優としての成長も相まって、
今回のウォンビンには、男も惚れます。
そんなウォンビンの魅力を最大限に引き出したのは、イ・ジョンボム監督。
まず良いなと思ったのが、“アクションを見せるためのドラマ”ではなく、
“ドラマを見せるためのアクション”だったこと。
この映画の場合、これが逆さまだったら成立しなかったと思う。
無理矢理ジャンル分けするのならば、人間ドラマ・アクションかな。
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshikaction.jpg)
アジョシの過去、
物語が進むにつれて変化する感情の変化をキチンと描き、
見る者を感情移入させる。
そして、アジョシが行う攻撃に、ちゃんと感情を持たせているから、
その暴力的行為が見ていて切なくなる。
でも一方で、勧善懲悪的な爽快感も見る者に与えてくれる。
普通のアクション映画としてもきちんと成立させているのだ。
このスカッと感は、悪役が“悪”に徹しているからだろう。
アジョシと対峙するマンソク兄弟は、心底腐っている。
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshikyoudai.jpg)
マンソク兄でぇーす。
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshikyouda1.jpg)
マンソク弟でぇーす。
最近の映画は、“悪に落ちた理由”とかを加味して、
悪役にも“仕方のない事情”を持たせたりするケースが多い。
確かに、作品に深みが増すんだが、
上手くやらないと敵を倒した時の痛快さが得られない。
そこで『アジョシ』は、マンソク兄弟を徹底的な悪にする代わりに、
彼等のボーディガードである殺し屋ラム・ロワンに、
少し良心を植え付けて、“悪”の全体的なバランスを取っている。
(それでも殺し屋に徹するラム・ロワンが良い)
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/imagages/ajoshiseron.jpg)
殺し屋ラム・ロワンでぇーす。
この辺のキャラクター配置は常套手段かもしれないが、
やれそうでやれないことだと思う。
あと、アジョシの心を動かすソミの描写も良い。
単に孤独感を描いているだけでない。
ややネグレスト状態で、
気を引きたくて万引きをしたり、
自分を愛してくれているのか確認するために、悪事を働いたりするソミ。
その矛先がアジョシへと向かう。
それを受け止められないアジョシだったが・・・。
![アジョシ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshiwobinsomin.jpg)
この辺の心の動きは、本作の最大のポイントになっている。
濃厚な人間ドラマ。
華麗で切ないアクション。
臓器売買といった社会派的な要素。
適材適所で強い印象を残すキャラクターたち。
そして、ウォンビンの凄さ。
かなりオススメの一本です
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特集『アジョシ』
![ajoshtokusyu.jpg](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/ajoshtokusyu.jpg)