2008年04月05日更新

裏#57 『クローバーフィールド』ネタバレ感想編

<注意!!>
完全ネタバレです!
『クローバーフィールド/HAKAISHA』を見てから読んでください。
(別にいろいろ知っても良いよって人は構わず読んでください)




クローバーフィールド
『クローバーフィールド/HAKAISHA』
4/5よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて
配給会社:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
(C)2008 Paramount Pictures. All rights reserved.




衝撃的なティーザートレーラー(特報)で“なんだこれは!?”と思わせ、
その後、徹底的に秘密主義を貫きながらも、
ネット上に周辺情報を撒き散らし興味を喚起、維持させる。


早くみたいという渇望感を持って、劇場に来させる。


見たら見たで手持ちカメラのみの主観撮影で、
観客もわけのわからない状況に突き落とされる。
主人公たちと同じ視点で、この未知の大惨事を疑似体験。


『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』肯定派なので、
この手のイベントムービーはウェルカムだ。


“普通と違う!”って思わせる企画力だけでもすごいと思う。


クローバーフィールド
良く考えるとおかしな写真だ




見たら中身がないって言う人もいるようだけど、
あの衝撃のトレーラーから数ヶ月間、ずっと見たいと思い、
気にかけ、人によってはネットで情報を収集する。
そして、やっと見ることが出来る時のワクワク感。


もう見る前から『クローバーフィールド』を楽しんでいるってことじゃない?
製作者の思う壺だ。


さて、そんな製作者の一人が『M:i:3』で監督を務めたJ.J.エイブラムス。
そもそもこの企画は、J.J.が『M:i:3』の来日時に子供とおもちゃ屋に行き、
そこでゴジラのフィギュアを目にしたことから始まっている。


しかし、怪獣映画はお金がかかる。


それで安くするためにビデオカメラでの撮影、
それも主観撮影のみで怪獣映画を作ることを思い付く。


で、どうせなら完全秘密主義、
セミドキュメンタリー・タッチにして煽っちまえ!ってね。


本当にすごい企画だ。


クローバーフィールド


作品自体も良く出来ていると思う。
何が起きているのか判らない、まるで9.11を髣髴させる恐怖。


その恐怖をもたらすのは、ゴジラからヒントを得た怪獣“HAKAISHA”だ。
公開前に一切ビジュアルが出なかった“HAKAISHA”は、
本編でもなかなか姿を現さない。
足、尻尾など部分部分しか映し出さないチラリズム。


HAKAISHAだけでなくミニモンスターも登場させ、より不安感を募らせるなか、
逃走劇と救出劇が繰り広げられる。
なかなかスリリングだった。


クローバーフィールド


そして、とてもテクニカルな作品だとも言えある。


撮影もビデオカメラによる手持ち撮影だから、
ざっくりと撮影されているように思えるけど、緻密に計算されてから撮られている。
わざとアマチュアっぽくなっている。


また、視覚効果は据え置きカメラで撮影されたシーンよりも、
手ぶれの酷い映像に追加する方が難しい。


クローバーフィールド


そして、結局この映画は“HAKAISHA”が何であったのかを語ることなく終わる。
これを不満とする人が多くいる。


その不完全な部分を補うのがネットで流された様々な情報だ。


・日系企業のタグルアト社(主人公のロブが就職する会社) → 企業サイト
・タグルアル社の「SLUSHO!」という中毒性の強い飲み物 → 商品CM
・東海岸沖にあるタグルアト社の油田掘削装置爆破事故映像 → ニュース映像
・ホームページ上の写真 → 公式サイト


では、いちいちネットで情報を収集してからじゃないと、
この作品を楽しむことが出来ないのかというとそうではない。


伊藤Pは『クローバーフィールド/HAKAISHA』を見る前に、
上記の情報をあまり知らなかった(知りたくなかった)。


なんも情報がない=登場人物と同じ心境で映画を体感できる。


だからとても楽しかった。


クローバーフィールド


あと、ネットだけではなく、本編中にもヒントや更なる謎が仕込まれている。


映画のラストシーン。ロブとベスがセントラルパークの橋の下に埋まった後、
1ヶ月前に撮影され、テープに残されていた映像が流れる。


コニーアイランドの観覧車に乗るロブとベス。
カメラを回すロブは、偶然、海を撮る。
映し出された海の右の方を良く見ると、空から何かが降ってきて、
海に落ち水しぶきが立つ



ほとんどの人が気付かない。
というか、伊藤Pも判らなかった。


また、エンドクレジットの途中で、ノイズまみれの声が聞こえる。
「I'm still alive....」
一体これは何を意味しているのだろうか?


『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、
何も知らないで見る → ネットで調べる → もう一度見る


こういう楽しみ方も出来る作品だ。


9.11以降の不安感、インターネットの普及など、
時勢を巧みに捉えた、今の時代だからこそ生まれた映画だと思う。


さて、なんだかんだと『クローバーフィールド/HAKAISHA』で、
何回も引っ張ってきましたが、いよいよ次が最後です。


次回はマット・リーヴス監督のインタビュー時に得た、
HAKAISHAの謎を解き明かす大ヒントを基に、
伊藤Pなりに“HAKAISHA”がなんであったのかを分析してみようと思います。
→ 裏#58 『クローバーフィールド』 “HAKAISHA”ネタバレ分析編




『クローバーフィールド/HAKAISHA』
J.J.エイブラムス インタビュー 本作の本質、捉え方がわかる!
マット・リーヴス監督 インタビュー 超ウルトラ大ヒント有り!!

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コメント (2)

NABE:

はじめまして。

色々調べてるんですが・・・なんせ、英語が読めなくって…。
ベテランの方々にお聞きしたいのですが、

これって、吉田ガヌさんのHPですか??
(http://ganuyoshida.com/)
このページを見ると、TOPページに画像がありますが、
それをクリックすると、ある文書がでてきます。
その中に、ロブと書いてあるんですが、関係ありますか?

英語が読めないんで、なんて書いてあるか…わかなくって…。

はじめまして〜。

>空から何かが降ってきて、
海に落ち水しぶきが立つ。

見逃しました・・・機会があったら、またみてみようと思います(・∀・;)

http://blog.livedoor.jp/mystery009/

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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