2010年01月06日更新

#445 『(500)日のサマー』


(500)日のサマー

『(500)日のサマー』

1/9よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて
配給会社:
(C)2009 TWENTIETH CENTURY FOX




建築家を夢見て、グリーティングカード会社で働くトムは、
ある日、社長秘書として入社してきたサマーに一目惚れする。


やがて、トムはサマーと付き合い始めるが、
2人の恋愛観はまるで正反対。


トムはサマーから突然の別れを告げられる。


運命の女性だと思ったのに・・・なぜ?
トムはサマーと出会ってからの500日間を思い巡らす。


(500)日のサマー


ちょっとお洒落で小粋な男と女の物語を描いていて、
久しぶりにこの手の作品を見たけど、面白いと感じつつ、
やはり映画は時代を反映するものだと思った。


本作はいきなり別れから始まり、
トムとサマーが出会ってからの500日間を、
行ったり来たりする構成になっている。


運命を信じるロマンチストな男。
真実の愛なんて信じない現実主義の女。


トムの恋愛に関する考え方は、男としてよーく判るし、
大いに支持したい。


一方で、運命なんて信じないというサマーの心境も、
30代半ばにもなると大分理解できる。


トムとサマーは、もう単に恋愛を楽しむというよりは、
その先にある“結婚”を意識している。


“恋愛する相手と結婚する相手は違う”
という言葉をたまに聞くが、
そんなニュアンスがサマーから感じられる。


“私の周りには幸せそうな既婚者がいない”


これはサマーのセリフなんだけど、
全く同じ言葉を発した知人が数名いる。


アメリカと日本では生活の基盤や環境が違うけど、
結婚に対する昨今の意識変化や現状は、共通なのかもしれない。


トムとサマーのやり取りを見ると、
自分自身や身近な人物たちのエピソードが蘇り、
自分の恋愛観というものを再確認させられる。


(500)日のサマー


恋愛に限らず2人は共通の価値観を持つ部分もあるが、
微妙な擦れ違いを繰り返す。


それを象徴するのが音楽。


2人の直接的な関係は、ザ・スミスの曲が共に好きというところから始まる。


一方で、ビートルズのメンバーで誰が一番好きかという議論になると、
意見が一致しない。


(500)日のサマー


こんな話は良くあることだけど、
本作では2人の相性を表すちょっとしたサインになっている。


監督が数々のミュージック・クリップを手掛けてきたマーク・ウェッブだからか、
音楽ネタや選曲のセンスが良い。


サマーがトムに別れを切り出す時に、
セックス・ピストルズのシドと恋人のナンシーの話を持ち出したり、
飼い犬の話で、ブルース・スプリングスティーンが出てきたりする。


この手のネタを楽しむにはそれなりの知識が必要だけど、
知っていればニンマリしてしまう。


選曲で印象に残るのはやはりホール&オーツの「You Make My Dream」でしょう。
サマーとの関係が良好になり、有頂天になっているトムの心情を表すシーンで使用されており、
その大げさミュージカルタッチの演出が、ちょっと滑稽で笑える。


他のシーンとは明らかにカラーが違うので、
失敗すると“寒いだけ”になり兼ねないが、
マーク・ウェッブ監督のセンスが良いからか、
見事に作品の中に溶け込んでいる。


あと、個人的に笑ったのが、
カラオケでトムの同僚がポイズンの「Every Rose Has Its Thorn」を歌っていたこと。
“アメリカ人ってカラオケでポイズン歌うんだ!”ってことが新発見だった。


(500)日のサマー


トムとサマーをそれぞれ演じたジョセフ・ゴートン=レヴィット、
ズーイー・デシャネルも良かった。


ジョセフは繊細で優男であるトムにピッタリだ。
ズーイーは超美人とは思わないけど、人を惹きつける不思議な魅力を持っている。


A級の役者が出ているわけでもないし、派手なシーンやキラーショットもない。
その分、脚本と構成が良く出来ている良質な作品。


“ボーイ・ミーツ・ガール”だけど、“ラブストーリー”じゃない。


本作の冒頭で語られるこのナレーションの通り、
トムとサマーの恋模様は決してハッピーじゃない。


それでも最終的に、
ちゃんと幸せな気持ちにさせてくれる点も良かったかな。


因みに一番好きなシーンは、公園で“○○○!!”って大声で叫ぶシーン。
最高だった。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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