2010年06月15日更新

#489 『ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実』


ハーツ・アンド・マインズ

『ハーツ・アンドマインズ/ベトナム戦争の真実』 

6/19より東京都写真美術館にて
配給会社:エデン
(C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.




ベトナム戦争から帰還した兵士。
戦死した兵士の遺族。


村を焼かれて、家族を殺されたベトナム人。


米官房長官をはじめとする役人。


賛成派、反対派を含め、あらゆる層の人々の証言や取材映像、
ニュース・フィルムを駆使してベトナム戦争の是非を問うドキュメンタリー映画。


大学の卒業論文のテーマは「ウッドストック」だった。
カウンターカルチャーを語る上でベトナム戦争は外せない。


ベトナム戦争関連の映画を見たりもしたけど、
お恥ずかしい話、本作の存在すら知らなかった。


本作はアメリカ軍がベトナムからの撤退を完了した翌年の1974年に製作され、
第47回アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー映画賞を受賞している。


戦時中もアメリカ国内外から何かと批判の多かったベトナム戦争。
そのほとぼりが冷めないうちに、
このようなドキュメンタリー映画を作ってしまう点が凄い。


ハーツ・アンド・マインズ


まず興味深いのが、南ベトナムのビジネスマンたちの発言だ。


「戦争の後には復興がくる。その復興に備えて金儲けする」


こういう視点からベトナム戦争を考えたことがなかった。


また、南ベトナムで反政府運動をする人々に焦点を当てている点も興味深い。


祖国を思って反戦運動をしている人たちが、“政治犯”になってしまう。
その不条理さがなんともいえない嫌な気分にさせられる。


それからベトナム戦争を象徴する有名な写真がいくつかあるが、
その瞬間を別の角度から撮影された映像がインサートされている。


まず、1968年、南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)と北ベトナムが、
南ベトナムに奇襲攻撃(テト攻勢)をした際、
南ベトナムのグエン長官が、
見せしめにサイゴンの路上で、ベトコン兵士を短銃で射殺した瞬間を捉えた写真。、


ハーツ・アンド・マインズ


「正義なき戦争」というベトナム戦争のイメージを植えつけた有名な写真だ。


この一部始終を捉えた映像が映し出される。
ベトコン兵士は撃たれた瞬間に、膝から崩れ落ち即死。
こめかみからは血が噴水のように溢れ出しているという映像だ。


続いて、1973年にピューリッツァー賞スポット・ニュース写真部門を受賞した
ベトナム人報道写真家のフィン・コン・ウトによる「戦争の恐怖」。


ナパーム弾による爆撃を受け逃げ惑う全裸の少女の写真だ。


この少女ファン・ティー・キム・フックを含めた子供たちの姿が映し出されるのだが、
キム・フックは苦痛の表情を浮かべていない。


恐らく放心状態だったのだろう。
それがまた辛い。


彼女は生き延びており、
この時彼女を助けた英国ITNテレビ記者のクリストファー・ウェインと、
38年ぶりに再会を果たしたというニュースが、先日流れたばかりだ。


これら以外にも凄惨な記録映像がたくさん出てくる。


このような惨劇を目の当たりにした帰還兵たちの証言は、
戦争に対して悲観的なものが多いが、
戦死した青年の両親は、それでもニクソンを支持し、戦争を否定しない。


でもそれはまだその当時ベトナム戦争の現状が、
正確に伝わっていなかったからだと思う。


本作にはこの両親の他にも戦争賛成派の意見が出てくる。


賛成派の意見も取り入れることによって、
一見、客観的に捉えているように見えるが、
逆に賛成派のアンポンタンな証言が、愚かな戦争をより一層明確にしている。


恐らく、確信犯的な使い方だろう。


中でもウィリアム・ウエストモーランド大将という軍人の終盤の発言には耳を疑う。


このオッサンは東洋人の命の価値は安いという。


どうやったら平気な面してこのようなクソ忌々しい発言が出来るのか!?
ってぐらいむかっ腹が立ったし、憤りを感じた。


ウエストモーランド大将は、2005年に91歳でこの世を去っているが、
その後、ベトナム戦争が考証され、少しは考え方を変えてくれたのだろうか?


子供を殺されたベトナム人たちの悲痛な叫び。
父親を失ったベトナム人の子供の泣き声。


先述のキム・フックや、
ナパーム弾に焼かれ皮膚が剥離してしまった赤ちゃんを抱いて徘徊する女性。


本作の後半に映し出されるこれらのニュース映像を見て、
心を痛めない人がいるのだろうか?


本作のチラシに掲載されたジョージ・サンタヤナの一文、
“過去を記憶できない者は同じ過ちを繰り返す。”


まさにその通りだ。


こんな馬鹿人たちが、一国の上層部にいたこと自体、
大いなる過ちだ。


それは今も変わらないのかもしれない。


“現在”に通ずる問題を提起する作品なので、
是非多くの方々に見て頂きたい。


久しぶりにドキュメンタリー映画を見て泣いた。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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