2010年12月07日更新

#537 シネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』


大江戸りびんぐでっど

シネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』

公開中
配給会社:松竹
(C) 松竹株式会社




江戸時代、の大江戸。
くさや汁を浴びた死人が“ぞんび”として生き返り増殖してしまい江戸の町は大騒ぎ。


くさやの名産地新島出身の半助は、
くさや汁を体に塗ることで彼らを従わせることに成功。


想いを寄せるお葉と共に、
人間の代わりに“ぞんび”を働かせる人材派遣会社「はけんや半助」を起業するが・・・。


もう2ヶ月以上前の10月16日(土)公開なので今更なのですが、
まだ公開中なので紹介します。


歌舞伎座さよなら公演で上映された宮藤官九郎作・演出、
市川染五郎、中村七之助ら出演の新作歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』を
HD高性能カメラで撮影し、劇場上映用に編集したシネマ歌舞伎。


師と崇める淀川長治先生は、感性を磨くために、
「映画だけではなく、舞台、歌舞伎、オペラなんでも見なさい」
と言っていた。


この教えに従いたいと思いながらも、
映画だけで一杯一杯で、なかなか手が出なかった。


歌舞伎に至っては、小学校の課外授業の一環で、
国立劇場で一度見たっきり。
(お題目は「毛抜」だった)


歌舞伎座に足を踏み入れたことはないし、
歌舞伎役者の方々の名前も顔もよく認識していない始末。


シネマ歌舞伎も『牡丹亭』、『法界坊』などがあったが、
見ても分らないような気がしてスルーしてしまった。


そうこうするうちに歌舞伎とは縁のないまま、歌舞伎座は取り壊されてしまった。
(丁度、取り壊しの前日に歌舞伎座の辺りに行ったのだが、凄い人だった)


大江戸りびんぐでっど


そんな中、『大江戸りびんぐでっど』という気になるタイトルのシネマ歌舞伎のリリースが届いた。


宮藤官九郎が、ゾンビを題材にして創作した新作歌舞伎ということで、
俄然見たくなった。


宮藤官九郎の作品は、その出来にムラがあるんだけど、
基本的には好きだ。


他人に脚本を委ねた作品よりも、
自分で監督した作品の方が突き抜けているので、
本作も“作・演出”ということで期待出来る。


そして、何よりもゾンビが大好きだ。


「歌舞伎座の花道をゾンビで埋め尽くしたら面白いと思って−」ってな感じで、
親和性が全く無い歌舞伎とゾンビを関連付けてしまうクドカンのセンスは最高だ。


やっぱり天才は違うなぁ〜。


こんな発想自体出来ないよ。
ゾンビで埋め尽くしたら面白そうなのってどこだ?
大江戸温泉?


それはさておき、
『大江戸りびんぐでっど』が、正統派の歌舞伎でなはないことは百も承知だが、
ド素人の小生にとって、歌舞伎への取っ掛かりとしては最高の一品だ。


そして、入門編という感じで見たわけですが、面白かった。


物語の細かい部分は、説明不足だったりするんだけど、
そんなものはどうでも良くなる軽いノリと勢いが本作にはある。


冒頭の海辺でのお葉と着ぐるみの干物たちとのやり取りからして、
爆笑ものだった。


本当の歌舞伎を見たことがないから分らないが、
恐らく、普段は大真面目に芝居をしているであろう歌舞伎俳優たちが、
超くだらないコント級のネタをバンバンかます。


大工の辰を演じた中村勘太郎(前田愛の旦那)に至っては、
露骨な下ネタを披露。


「伝統ある歌舞伎座で、こんなことしていいのか!?」とさえ思ってしまった。


歌舞伎を見慣れている人たちは、
歌舞伎俳優さんたちのはじっけっぷりに戸惑いながらも、
その落差が楽しんじゃないかな。


大江戸りびんぐでっど


歌舞伎俳優たちの悪ノリ演技はもちろんのこと、
いつものクドカンらしくゆる〜い雰囲気の中、
殺陣、ギャグ、ミュージカル、ホラーとなんでもありのテンコ盛りで楽しませてくれる。


舞台であろうと、映画であろうと、ドラマであろうと、
そして、歌舞伎であろうと己の“らしさ”を貫き通すクドカンは凄いね。


異端でありながらも、歌舞伎らしい(?)
ワビとサビをキチンとちゃんと最後に持って来ている点も見逃せない。


歌舞伎ファンの中には「邪道だ!」と言う人がいるかもしれない。
それは仕方がないことだと思う。


でも重要なのは歌舞伎俳優たちが、超楽しそうに演じているという点だ。


これが本作品の全てを物語っていると思う。


歌舞伎が今後、更なる発展していくためには、
新しい世代の獲得が必要不可欠でしょう。


『大江戸りびんぐでっど』は、新規獲得という点でも、
大きな役割を果たしている。


素人である伊藤Pは、
悪ノリしまくる歌舞伎俳優たちが、いつもはどんな演技をしているのか見たくなったし、
歌舞伎そのものも体験してみたいと思った。


特に四十郎を演じた坂東三津五郎に惚れました。


しかしながら、鑑賞後、
劇中何度もかかる「おおえど りびんぐ でぇっど」という調子の外れた歌が、
頭の中をリフレインしまくり、ちょっと困ったぞ。


大江戸りびんぐでっど

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コメント (1)

tkk:

今年のコクーン歌舞伎ではラップやってましたよ(笑
歌舞伎界の懐の深さには、まったく驚かされます。

伝統芸能ではありますが、最近では新作歌舞伎や古典の新演出にも積極的ですし、
歌舞伎の敷居は思っているほど高くはない!ってことを多くの人に知っていただきたいですね。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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