2011年02月09日更新

ゲイリー・ムーア

月曜日の朝、友人のナレーター佐藤朝問から知らされた訃報。
ゲイリー・ムーア逝く。


あまりの突然で驚いた。


ネットで調べてみると、
静養中のスペインで亡くなっているのが発見され、死因は不明とのこと。


享年58歳。若過ぎる。


ゲイリー・ムーアは、アイルランド出身で、
スキッド・ロウ(80年代から90年代初頭に人気があったバンドではない)や、
同郷でありスキッド・ロウにも在籍していたフィル・ライノット(86年没)率いる
シン・リジィといったハードロック・バンドに参加する一方で、
ソロとしても活躍。


80年代には、「ヴィクチム・オブ・ザ・フューチャー」(84)、
「ワイルド・フロンティア」(87)など良質なハードロックアルバムを残し、
特に日本では高い人気を誇っていた。
(浜田麻里や本田美奈子にも楽曲提供している。本田美奈子の方の曲の日本語歌詞は秋元康!)








インパクト大の風貌で、骨太なフレーズを一音一音しっかりと、
しかもとてつもない速さで弾き倒すプレイスタイルなんだけど、
激しいだけでなく、哀愁と牧歌的な雰囲気が漂う、そんなギタリストだった。


そのゴリゴリなハードロック・ギタリストのイメージを覆したのが、
1990年に発表されたブルース・アルバム「スティル・ガット・ザ・ブルース」だ。


カバーとオリジナルをバランス良く配し、
アルバート・キングといったブルースマンをゲストに迎えて制作されたこのアルバムは、
高い評価を得て、売上げ的にも成功を収め、ゲイリーの代表作となった。


この歴史的な名盤以降、ゲイリーはハードロック・ギタリストよりも、
ブルース・ギタリストとして認識されていった。


その後、元クリームのメンバーと結成したBBMなど、
様々なバンドを結成したりもしたが、基本はソロイスト。


シン・リジィもフルで参加したアルバムは「ブラック・ローズ」(79)のみであり、
あまり人とつるまない孤高のギタリストだ。


最近のゲイリー・ムーアは追いかけていなかったが、
80年代〜90年代初頭のゲイリーのアルバムはちょいちょい聴いていた。


そして、個人的にもっとも重要なのは、
ブルースの入り口を開いてくれたのがゲイリーだったってこと。


フィル・ライノットとの共作「パリの散歩道」。





後の「スティル・ガット・ザ・ブルース」への布石となる、
ギターが泣きまくるブルースナンバーだ。
(誰かがこの曲はブルースじゃないと言っていたが、オレにとってはブルースだ)


シン・リジィのベストに収録されており、
ハードロック以外の音楽をあまり聴くことがなく、
ブルースというものを良く分かっていなかった自分に、
ブルースを初めて明確に提示してくれたのがこの曲だった。


そして、ゲイリーからは、チョーキングの時に辛そうに顔しかめ、
ビブラートでは目をつぶって頭を揺らし悦に入るゲイリーのプレイスタイルからは、
エリック・クラプトン以上に、顔でギターを弾くこと、
もっと言うと全身全霊、魂を込めてギターを弾くことの大切さを学んだ。


もともと凄い顔しているけど、
ギターを弾いている時のゲイリーの顔と佇まいは、一度見たら絶対に忘れられない。


ゲイリーのアルバムを聴くだけで、
悦に入ってギターを弾くゲイリーの顔が目に浮かぶ。


そんなゲイリーが死んでしまった。


残念でならない。


訃報の知らせを受けた日、
ゲイリーの曲を聴きながら帰ろうと思ったが、
生憎「スティル・ガット・ブルース」がiPodに入っておらず、
シン・リジィの「ブラック・ローズ」を聴くことに。
(なんで入れていなかったのか・・・)


何度聴いても素晴らしいアルバムだ。
全ての曲が美しい。
特に1曲目から5曲目の「サラ」までは圧巻だ。


で、ラストを締めくくる名曲中の名曲であるタイトルソング「ブラック・ローズ」。
壮大で優雅で激しい。
ソロはいつ聴いても鳥肌が立つ。



ギブソン・レスポール愛好家のスコット・ゴーハムがストラトを使用している。
そーいえば、インタビューで最近はストラトが好きって言っていたな。


しかし、映像がないとどっちのパートをスコット・ゴーハムが弾いているのか、
ゲイリーが弾いているのか分からんぜよ・・・。


もっとゲイリーを感じたい!ということで、
「ブラック・ローズ」を聴き終えた後、「パリの散歩道」を聴き感傷に浸った。


そして、家に帰ってから「パリの散歩道」をギターで弾き、
〆としてアルバム「スティル・ガット・ザ・ブルース」を鑑賞。


ゲイリーはギタープレイが注目されがちだけど、
ボーカリストとしても優れた才能を持っていたんだなぁ〜と、改めて感じた。


で、タイトル曲を久しぶりに聴いたが、本当に良い曲だ。
ぶっとい音で泣いて、泣いて、泣きまくるギターソロは圧巻の一言。


ライナーノーツで伊藤政則が、
「美しい。美しすぎて言葉が出ない」
と書いているんだが、その言葉通り美しい。





生前の雄姿を思い浮かべ、涙を流しながらゲイリーを偲んだ。


きっとゲイリーは、天国でフィル・ライノットと再会して、
「パリの散歩道」、シン・リジィの名バラード「Still in Love With You」とか、
一緒に演奏しているに違いない。


I've still got the blues for you in heaven.

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.t-shirt-ya.com/blog/cgi/mt-tb.cgi/1971

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)




リンク

プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
Powered by
Movable Type