2011年08月26日更新

#612 『日輪の遺産』


日輪の遺産

『日輪の遺産』


8/27より全国にて
配給会社:角川映画
(C)2011「日輪の遺産」製作委員会




終戦間近の昭和20年8月。


「900億円(現在の貨幣価値で約200兆円) にものぼるマッカーサーの財宝を、秘密裡に隠匿せよ」
という極秘任務の命を受けた帝国陸軍の真柴少佐ほか2名と、
勤労動員として呼集された20名の少女たちの運命を描く。


「鉄道員」、「地下鉄に乗って」の浅田次郎が、1993年に発表した同名小説を映画化。


本作で、軍のトップは、敗戦が濃厚となり、
マッカーサーの財宝を復興費用に充てようと考える。


この話はフィクションだし、
3.11以前に製作された作品なので、
たまたまなんだけど、タイムリーな作品となった。


今、日本は戦後最大の危機に瀕している。


今こそ、一致団結をしなければならないのに、
日本の政府は、各党が攻撃をし合い、
党内でさえ足の引っ張り合いをしている。


菅首相はスケープゴートと化しているし、
菅首相自身も、人徳がなくまるでリーダーシップを発揮できていない。


本当にこの人たちは、被災者のことを考えているのだろうか?
日本の未来を案じているのだろうか?


政治家でなく、被災した人以外の一般人の多くも、
段々と被災地に目を向けなくなっているような気がしてならない。
(自分も含めてね)


日輪の遺産


『日輪の遺産』に登場する軍人たちは、
強い信念を持っている。


人の財産を盗んで、その金をお国の復興資源にしようとする行為は、
正直、いかがなものか?と思わなくもないが、
マッカーサーの財宝を活かして、日本の未来を次世代に託そうとする。


日本を立ち直らせるためには、形振り構っていられない。
愛国精神が成せる業なのかもしれない。


しかし、一方で、軍上層部は、非情な命令を真柴少佐に下す。


一体、人間の命とはなんなのか?


そして、財宝を隠す作業を担った20名の少女たちの純真な言動は、
今を生きる我々に、様々な思いを沸き立たせる。


日輪の遺産


戦争なんて愚行だとは思うけど、
戦時下の子供たちは、現代の子供たちなんかよりも、
ずっと逞しいし、しっかりしている。


健気で真摯な彼女たちに、強く心を打たれました。


本作の監督は、
戦争と人間をテーマにした『出口のない海』、『夕凪の街 桜の国』の佐々部清。


一度、『カーテンコール』の時に取材をさせてもらったことがあるんだけど、
物凄い熱くて、誠実で、優しくて、映画を愛している方でした。


あまりに情熱的なので、取材中、
お話を聞いているこちらが思わず涙ぐんでしまうぐらいだった。


往年の日本映画を見て育ち、強い影響を受けてきた佐々部清監督は、
オーソドックスな手法を用いる、今の日本映画界において貴重な監督の一人だ。


そして、“常に人を撮る”を信条として映画を作っている。


『日輪の遺産』も、その思いがムンムンと漂ってくるような、
まさに佐々部清監督ならではの作品になっている。


日輪の遺産


奇しくも太平洋戦争開戦直前を描いた『シャンハイ』が公開中だ。


それぞれタイプの違う作品だけど、
終戦前夜を描いた『日輪の遺産』と合わせて見るのも良いかもしれない。


共通するのは「混乱」か?

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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