2011年11月28日更新

#636 『50/50 フィフティ・フィフティ』

50/50 フィフティ・フィフティ


『50/50 フィフティ・フィフティ』
2011年12月1日よりTOHOシネマズ渋谷、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて
配給:アスミック・エース
(C)IWC Productions, LLC.


ラジオ局に勤める27歳のアダム。
酒もタバコもやらず、ごく普通に暮らしていたアダムに突然下されたガンの宣告。
5年生存率は50%。
予測だにしない事態に戸惑うアダムと周囲の人々の姿を描いた人間ドラマ。


こう書くと少し前に日本映画界と韓国映画界で増産された“涙の押し売り難病モノ?”って
思われてしまうかもしれないが、この作品は大分、趣が違う。


本作は、映画やテレビ番組のプロデューサーとして活躍していたが、
25歳の時にガンの宣告を受け、1年半に及ぶ闘病生活を経験したウィル・レイサーの実体験がベースになっている。


ウィル・レイサー
僕がウィル・レイサーです!


ガンを克服したウィルに、友人のセス・ローゲンが映画の脚本を書くように提案。
ウィルは、ガン患者の葛藤、周囲の人たちとのよそよそしい関わり合いなど、
ガンを経験した人だからこそ書ける心温まる物語を作り上げた。


もちろん、ガンという難病に対して真摯に向き合っているが、
全編を通してユーモアに満ち溢れており、
思わず笑ってしまうようなエピソードやセリフがたくさん出てくる。


アダムの友人や母親、恋人たちのそれぞれの反応や行動をおもしろおかしく描き、
ちょっとした笑いを誘うのだ。


50/50


友人のカイルは、やたらとアダムにセックスさせようと躍起になるし、
ガンをネタにナンパまでしてしまう。


過保護な母親ダイアンはアダムの予想通り、過剰に反応し、アダムを別の意味で煩わせる。
恋人のレイチェルは、アダムの傍にいようと試みるものの、長くは続かない。


アダムの近しい人々の今までと違う接し方に、アダムは違和感を抱くのだが、
そのギャップを笑い飛ばしてしまうのだ。


また、アダムが受診する心理治療の新米セラピスト・キャサリンとのぎこちないやり取りも笑える。


この作品を見て泣く人はいるかもしれないが、悲しくて泣く人はあまりいないと思う。


50/50


笑いを誘う周囲の人たちとの人間関係も重要な要素になっていて、
馬鹿なことばかりやっているが、心底アダムのことを心配しているカイルの友情は、
アダムにとって大きな支えになっているはず。


27歳の息子からすると母に面倒見てもらうのは照れもあって、拒絶したくなって当然だ。
それでも、ダイアンは母親ならではの愛情を持ってアダムに接する。
ラスト近くで、セラピストのキャサリンに放つダイアンのセリフとか最高です。


50/50


レイチェルは、この作品ではどちらかというと嫌われ役になってしまうが、
彼女の気持ちも分らなくはない。
結婚しているわけではないし、お互いそこまで愛し合ってはいないのだから。


実は、このアダムとレイチェルのやり取りが、個人的には一番好きだったりする。
アダムの家のポーチでの拒絶と、その後のレイチェルの絵の破壊行為が、
アダムの優しさと決別を表していて切ないッス。


50/50


そして、アダムにとってもう一人重要な人物となるのがキャサリンだ。
彼女を若い研修医という設定にしたことで、アダムの心境がより明確になるし、
2人が少しずつ距離を縮めるにつれ、共に成長していく。


この他、出番は少ないが、同じく抗がん剤を投与している患者仲間たちとの交流も、
アダムに大きな影響を与えてくる。
アルツハイマーの父親も、良い味出している。


アダムを含めた、個性豊かで必要不可欠なキャラクターたちを演じた役者たちも良いです。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットは、どんぴしゃのはまり役。
彼なくして、本作は有り得ないとさえ思えてしまう。


友人カイルを演じたセス・ローゲンは、
実際に脚本を書いたウィル・レイサーの闘病生活に付き合っただけあって、かなり説得力がある。


ダイアン、レイチェル、キャサリンをそれぞれ演じた、
アンジェリカ・ヒューストン、ブライス・ダラス・ハワード、アナ・ケンドリックも素晴らしい。


50/50


あと、面白いと感じたのは、アダムが主人公なのに、
アダムよりも周囲の人たちの立場になって見ている点。


幸い、自分はガンを患っていないので、アダムに自身を投影するよりも、
右往左往するアダムの周辺の人たちの気持ちの方が入り込みやすいからだと思う。


なので、自分だったらどうガンの友達と接するか?って考えてしまう。


普通に接することが大切なんだろうけど、普通に接するのが難しい。
人によって求める心地好さも違う。
ガンの進行具合によっても変わってくる。
つまり接し方に正解なんてないのだ。


知人・友人・家族がガンになった時の指南書的な役割を果してくれる作品でもある。


一方、伊藤家もガッツリとガン家系だったりするので、
いつアダムと同じ境遇になるか分らない。


対策と言えば、毎年の健康診断ぐらいしかしていないが、
食事の内容がガンの原因の大きな割合を〆ているので、
バランスの良い食生活を心がけるようにしたいと思います。


まぁ、慢性的な肝機能障害と、尿酸値高という、
ガン以前に改善すべきことがたくさんあるのですが・・・。


何事も体が資本ですからね。
頑張ります!
特に酒!


■「エンタメ〜テレ 最新映画ナビ」
特集『50/50 フィフティ・フィフティ』
50/50特集

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.t-shirt-ya.com/blog/cgi/mt-tb.cgi/2157

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)




リンク

プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
Powered by
Movable Type