2012年09月19日更新

#678 『ロック・オブ・エイジズ』

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『ロック・オブ・エイジズ』
2012年9月21日より全国にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2012 WARNER BROS. ENTERTAINENT INC.


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きらびやかであり、かつスキャンダラスだった1987年のハリウッド。


シンガーになるためにオクラホマからやってきたシェリーは、
伝説的なライブハウス「バーボンルーム」で下働きをしながらロックスターを目指すドリューと出会う。


ドリューの口利きで、「バーボンルーム」のウェトレスの職を得たシェリーは、
共に夢を語り合い、やがて恋に落ちた。


そんなある日、ロックのカリスマであるステイシー・ジャックスが、
初のソロライブを行うため「バーボンルーム」へやって来た。


急遽、前座を務めることになったドリューは、最高のパフォーマンスをみせ、一躍注目される。


しかし、ドリューが、手当たり次第に女に手を出すステイシーとシェリーが関係を結んだと勘違いし、、
ケンカの末、2人は破局してしまう。


これがきっかけとなり、2人は夢とは程遠い人生を歩み始める。


一方、「バーモンルーム」のオーナーであるデニスは、税金の支払いに苦しみ、
外ではロックを毛嫌いする新市長の夫人パトリシア率いる奥様方が、抗議運動を繰り返していた。


そして、ステイシーも自分の人生に嫌気が差していた…。


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ロックの名曲を集め、その歌詞に合わせて物語を構成したミュージカルの映画化。


タイトルは、我が愛するデフ・レパードのロックアンセム「Rock Of Ages」から取られているし、
劇中、トム・クルーズがデフ・レパードの曲を歌っている。


この他、ポイズン、ジャーニー、エクストリーム、ボン・ジョヴィ、ガンズ・アンド・ローゼスなど、
“俺たちの青春ソング”が、ふんだんに使われている。


これを見ずして年は越せません!


で、見たわけですが、まずは細かい指摘を少々。


80年代のロックシーン、とくにLAメタルといえば、
モトリー・クルーを筆頭にバッドボーイズが席巻し、
まさにセックス!ドラッグ!ロックンロール!!を実践していた。


ドラッグでぶっ飛びながらライブをこなし、
ラリったままグルーピーとやりまくる。


もちろん酒もガブ飲み。


『ロック・オブ・エイジズ』では、このうちドラッグが完全に欠落していた。
ついでにタバコを吸うシーンが皆無。


健康促進法なんてもんはない時代ですから、
ミュージシャンはみんなヤニ吸っていました。


ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュやダフ・マッケイガンなんて、
ステージ上でギター弾きながらプカプカでしたよ。





なので、当時のシーンを完全再現しているかと言われると、
足りない要素もあるんだが、この映画の性質上、仕方が無いかなと。


音楽が80年代ならば、映画の中身も80年代ぽくって、
王道のサクセスストーリーだから、今の時代から見て負の要素となりうるネタは、
なるべく排除したいというのが、作り手の本音でしょう。


あと、時代設定が1987年ということなんだが、
劇中にかかるデイヴィッド・リー・ロスの「Just Like Paradise」は1988年、
ウォレントの「Haven」、スキッド・ロウの「I Remember You」は1989年、
エクストリームの「More Than Words」は1990年にそれぞれリリースされているので、
厳密に言うと時代が合わないのだ。


まぁ、この辺は雰囲気!雰囲気!!細かいことは気にしないようにしよう!
時代考証をするような作品でもないしね。


ということで、細かいところを抜きにして見ると、
予想以上の面白さでした。


ミュージカルは苦手なんだが、大好きな楽曲に彩られていれば問題なし。


冒頭、ナイト・レンジャーの「Sisiter Christian」から始まるメドレーは、
見事にストーリーとシンクロしており、驚かされた。


各曲のアレンジも良いし、2曲を交互に聴かせる構成力とか斬新だった。


実は、映画を見る前にサントラを聴いていたんだけど、
その時はどうも物足りなくて、大分不満だった。


でもこうして映像と合わせてみると、かなりしっくりくる。


そして、ある人物以外、みんな歌が上手い。


ドリューとシェリーをそれぞれ演じたディエゴ・ボネータとジュリアン・ハフは、
後で調べたら共に歌手だった。


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ジュリアン・ハフは、カントリーシンガーということで、
なるほど、“イモ臭さ”も含めての配役なんだなと納得。


ロックに憎悪を抱く新市長夫人パトリシアに扮したキャサリン・ゼタ=ジョーンズは、
パット・ベネターの「Hit Me With Your Best Shot」を大胆(?)な踊りと共に熱唱。


ものすごいパワフルです。


もう一曲、ツイステッド・シスター「We're Not Gonna Take It」を歌うんだが、
この曲の使い方が、メタルファンを唸らせる。


パトリシアたちは、ロックは社会の毒であると抗議をしているが、
実際にその類の団体が当時、音楽シーンに大きな影響を与えた。


ペアレンタル・アドバイザリー (PMRC)だ。


この委員会から「両親や教師に対して反抗的であり、青少年に悪影響を与える」と難癖を付けられたのが、
「We're Not Gonna Take It」のビデオクリップだったりする。





なので、『ロック・オブ・エイジズ』では立場を逆転させて使っているのだ。


因みに、PMRCはツイステッド・シスターのボーカリストであるディー・スナイダーを聴聞会に呼び出し、
徹底的に叩きのめそうと考えた。


このような音楽をやっている奴らはバカに違いないと、PMRCの人たちは高をくくっていたのだ。


しかしながら、ディー・スナイダーはバカどころか、とても頭の良い人物で、
委員たちからのイチャモンを全て論破し、逆にやり込めてしまったという逸話がある。


因みに、ツイステッド・シスターはその後、子供向け番組出演し、
子供たちからも絶大な支持を得た。


PMRC!ザマーミロ!!!


……話をキャサリン・ゼタ=ジョーンズに戻しましょう。


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キャサリン・ゼタ=ジョーンズは、歌だけでなくて貫禄と度胸も凄いと改めて感じた。


舌をベロベロベロベロ〜ってやるシーンがあるんだけど、
「この人オスカー女優だよね?」と思ってしまうぐらいバカバカしいです。


こういう一歩間違えると浮いてしまう役を、そうならないようしっかり演じるのは難しいことだと思う。


もう1人有名俳優が歌を歌っている。
「バーボンハウス」のオーナーを演じたアレック・ボールドウィンだ。


とびっきり歌が上手いというわけではないが、
彼が歌う曲、そして、シーンが最高でした。


これも音楽ファンだったら、笑えるであろう選曲だった。


そして、抜群に上手いのが、メアリー・J・ブライジ。
流石はソウル・クィーン。
超パワフルです。


彼女が歌いだした瞬間、ザワザワザワっと鳥肌が立ってしまった。


こんな感じで、みなさん印象的な歌唱を披露してくれているのですが、
1人だけ、どーーーーーーーしても納得いかない方がいらっしゃいました。


それは、トム・クルーズです。


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歌手ではない、ムービースターがメタルを歌うという点では、
及第点なのかもしれないが、彼の声質はメタルに向いていないと思う。


やや甲高いのは良いとしても、声に芯がなくて軽い。


ガンズの「Paradise City」とか聴いているとなんだかイライラしてくる。
「あぁ〜、アクセル(ガンズのボーカル)のバージョンが聴きたい!!!」って。


我が心のデフ・レパードの「Pour Some Sugar On Me」も然り。
デフ・レパードのジョー・エリオットは、そんなに声量のあるボーカリストではないんだが、
ややハスキーな感じで、それがいい感じに耳に残るんだよね。


トムのステージパフォーマンスも、マイクをシコシコしごいたりと、
やっていることは悪くないんだけど、なんかかっこ悪い。


ホワイトスネイクのデイヴィッド・カヴァデールなんかは、
よくステージでマイクスタンドを股間のところに持ってきて、シコシコってしごくんだけど、
超カッコイイ。



1〜2曲目がヤバイっす・・・2008年のジャパンツアーでこれやってよ!!


ハードロック/ヘビーメタルにしては、声質があまりあわないし、
ステージパフォーマンスもなんか野暮ったい。


なのにカリスマ・・・ってのがずぅーーーーーーーーーーーーーと、引っかかり続けた。


あとね、メタルのボーカリストにしては、ゴツすぎるんだよね。
もう少し細いほうが良い。


まぁ、スティーブ・グリメットよりはマシだが・・・(でも、グリメットは歌は上手いぞ)。





と、ちょっと厳しめな感じですが、それもメタルを愛するが故です。


そのメタル・ソングですが、今回、字幕スーパーを読んで、
「あぁ、こういうことを歌っていたのね」と今更ながら知る機会が多かった。


ポイズンの「Every Rose Has Its Thorn」の歌詞とか、
「こんなに良い歌詞だったのか!」と驚かされた。


バカバンドというレッテルを貼られがちだが、そんなことはないんだな。



このPV、今見ると泣ける・・・


この他、使用楽曲をもっと多く、そして細かく説明したいところだが、
メッチャ長くなりそうなので、止めておこう。


と思ったが、一曲だけ。


ジャーニーの「Don't Stop Belivin'」。
ジャーニーで一番好きな曲だし、前から良い曲だと分かってはいたが、
改めて、素晴らしい曲です!!!!!


序盤でドリューがアコギで、少しだけこの曲を弾き語るんだが、
それだけで涙が出そうになった。


その後、もう一度かかるんだけど、そこでは泣いちゃいました。


『ロック・オブ・エイジズ』じゃなくて、
映画のタイトルこっちにした方がいいんじゃない?って思うような扱いだったな。


これらの楽曲が本当にものの見事にストーリーを形成しているので、
曲を知っていたほうが、より一層楽しめるのは間違いなんだが、
使用楽曲を知らなくても十分に楽しめると思います。


一般試写会で見たのですが、上映終了後、自然発生的に拍手が起こりました。
一般試写会での拍手はあんまり経験したことがない。


この映画がきっかけで、この時代の音楽に興味を持ってくれる人が増えるといいな。


■『ロック・オブ・エイジズ』オリジナルサウンドトラック

■『ロック・オブ・エイティーズ 〜R.O.A.的音楽のススメ〜』

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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