容赦のないバイオレンス・シーンが連発。


しかも、刺す、（骨を）折る、殴るといった、
人によっては経験したことのある痛みが多く、
この手の描写が苦手な人にはキツイ作品。

『軍鶏 Shamo』 5/3より新宿トーア、シアター・イメージフォーラムほか全国にて

優等生だった成嶋亮は、両親を殺害した容疑で逮捕され、
少年院に入れられる。
そこで、ひどい仕打ちを受けた成嶋は、
自分の身を守るのは己であることを悟り、
教員の黒川から格闘技術を学ぶ。


少年院を出所し、事件後消息を絶った妹を探す傍ら、
リーサル・ファイトなる人気格闘技大会で、
自分の存在意義を確かめるため、戦いに身を投じるが・・・





主人公の名前が日本人名だが、本作は香港映画。
「スケバン刑事」シリーズの脚本家、橋本以蔵原作のコミックを映画化していて、
香港からショーン・ユー、フランシス・ン、
台湾からディラン・クォ、
そして、日本人はK-1ファイターの魔裟斗、石橋凌が出演している。


日本人原作の香港映画にして、アジア各国の俳優が大挙出演。
もうこれだけで無国籍感が漂っている。


無茶苦茶な展開があったりして、リアリティは全く無いんだけど、
サービス精神旺盛の香港映画だから、
あそこはどーなのよ的なツッコミをするのはやめておこう。


言ってしまえば、何でもありであり。
その何でもありを受け止めなくてはならない作品。


フランシス・ン演じる黒川との戦いとか意味不明なんだけど？
まぁ、いっかって。


成嶋は女を拉致るのに、なんで犯さないんだ！？
そもそも拉致る必要もないんだけど。
まぁ、いっかって。


殺しても、怪我負わせても傷害罪に問われないの？
まぁ、いっかって。


ショーン・ユーはカッコイイし、凄みもあるし、鬼気迫る演技で良かった。
フランシス・ンはやっぱり渋くてカッコイイなぁ〜、良い役者だ。
ブルース・リャンのズラも最高！


女優陣もみんな美しくて、スタイル抜群。
目の保養になったよ。


ついで、この作品の肝であるアクションはどうだったかというと、
ジャッキー・チェンで育った人間なので、
格闘シーンにはやや五月蝿い方だけど、大合格です。


撮り方もストレスを感じない。
リーサル・ファイトの会場での、場外乱闘のシーンがちょっと雑だったけど、
やっぱりアクションの本場、香港は違うなぁーと改めて思ったね。


初めて本格的なアクションに挑んだショーン・ユーも良かった。
魔裟斗も流石は本物。
ブルース・リャンが放った後ろ回し蹴りとかも、サモ・ハン級の重量感があった。


という感じで、概ねOKな作品なのですが、
決定的にNGな部分がある。


それは主人公・成嶋に全く感情移入出来なかった点。


単なるキチガイだし、アホだし、バカだし、取っている行動も迷惑極まりない。
誰にもバカにされたくない、見下されたくないのなら、
最低限の品行方正ってもんがあるでしょうが。


何度言われても直らないし、直そうともしない。





ストーリーとしては、「あしたのジョー」に似ている部分があるんだけど、
矢吹丈は丹下段平に出会い、力石徹というライバルを得たことで、
自分の居場所、戦う目的を見つけ、人としても、ファイターとしても成長する。


そこに我々は共感し、ジョーを応援する。


それに対して成嶋は。。。


そもそも格闘技自体が好きだったので、よく見ていたのですが、
どんなにやんちゃで、不良で、どうしようもない奴でも、
選手になれば成長して、物事の良し悪しが判断できるようになる。


プロ意識が目覚めるんだよ。
前田日明とかさ。


出来ないやつはリングに上る資格ないよ。


ということで、成嶋の余りのアホさ加減に嫌気が差して、
成嶋のデブの友達同様、途中で見限りましたわ。


魔裟斗との戦いも当然、魔裟斗を応援してました。


原作自体がそういう感じらしいので、忠実なのかもしれませんが、
戦う目的も、戦う姿勢も格闘家としてサイテーの野郎です。


ショーン・ユーはどういう感情を持って、成嶋を演じたのか・・・
一応、インタビューで聞いてみたんだけど、なんだか良く判らなかった。


役者も良いし、演出も悪くない。
面白いは面白いんだけど、共感が全く出来なかった。
そんな作品でした。


続編があるのであれば、
人間的にも成長し、戦うことの本当の意味を見出す主人公の姿を描いて欲しい。

『軍鶏 Shamo』 ※ショーン・ユー インタビュー 動画 & テキスト