![]() 7月15日より丸の内ピカデリー1ほか全国にて 配給会社:ワーナー・ブラザース映画 (C)2009 Warner Bros.Ent.Harry Potter Publishing Rights (C)J.K. |
純真さなどとうの昔に捨て去った伊藤Pの心に響くぐらい、
ダーク・サイドな部分が前面に押し出されていたうえ、
原作を読んでいなくても戸惑うことなく見ることが出来た
前作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』。
続くシリーズ第6弾『ハリー・ポッターと謎のプリンス』は、
予告編を見る限りでは、
更にそのダークさを増し完全にお子様ランチから脱却しているかの様だった。
ホラー映画と見間違えそうな描写さえもあった。
監督もデイビッド・イエーツが続投なんで、
前作同様、原作未読者にもストレスを感じさせずに物語を語ってくれるだろうというのもあり、
見る前にかなり期待した。
初めてだぞ。
『ハリポタ』見る前にこんなにワクワクしたの。
しかしながら、その期待はものの見事に裏切られた。
出足は快調だった。
マグル界に現れたデス・イーターが、ロンドンの街を破壊する。
ジェットコースターに乗っているかのようなスピーディーなカメラワークと、
暗雲が益々立ち込めて来たという緊張感。
つかみはOKだったんだけど、
ハリーたちがホグアーツに戻る頃には・・・。
![ハリー・ポッターと謎のプリンス](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/hp62.jpg)
全てのエピソードがブツ切りで、唐突。
ストーリーがあるんだか、ないんだか・・・。
何をしているのか、したいのかさっぱり分からない。
意味不明なセリフも多々あった。
ハリーが魔法薬を飲み、ラリった状態でハグリッドを訪ねるんだけど、
その行動の根拠は?
そこに出てくる大蜘蛛の意味は?
この毒蜘蛛は必要なの?
鑑賞後、パブリシストにその疑問を投げかけてみたら、
“原作を読んでいれば判る”んだと。
またこれだ。
元の『ハリポタ』に逆戻り。
後で知ったが本作の脚本家はスティーブ・クローブス。
この方、シリーズ1〜4作の脚本を担当。
犯人はコヤツか。
ラストの二部作『ハリー・ポッターと死の秘宝』も担当だと。
作品の中だけでなく、作品の出来の部分でも暗雲が立ち込めてきたぞ・・・
それからバランスも悪い。
ホグワーツどころか、魔法界を飛び出し、
マグル界にまでもヴォルデモートの脅威が迫っているというのに、
ハリー、ロン、ハーマイオニーは恋愛に現(うつつ)を抜かす。
この下手な学園コメディぷりにガックシ。
![ハリー・ポッターと謎のプリンス](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/hp61.jpg)
彼らの恋愛感情の描き方は、恋愛喜劇の最高峰『赤い糸』級に雑過ぎる。
ハリーも恋愛となるとニヤニヤしてばかりで、何を考えているのか皆目わからん。
あんたは誰が好きなんじゃい!
親友であるロンやハーマイオニーの恋愛相談の時もニヤニヤしたりして、
もっと親身になろうよ。
で、今回ロンが人生最大のモテ期を迎えるんだが、
この男のどこが魅力的なんだ?
謎のプリンスどころじゃない、ハリポタ史上最大の謎だ。
シリアスな展開と学園コメディがまるでマッチせず、互いに足を引っ張りあっている。
宙に浮き、体を硬直させる女子生徒とか、
ハリーVSドラコ@トイレとか、
水中から突然飛び出す○○とか、
インパクトのあるショットがあっただけに、この中途半端さが残念だ。
![ハリー・ポッターと謎のプリンス](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/hp63.jpg)
今までの展開上、物語が恋愛路線にシフトすることはないわけで、
もう少し恋愛パートを抑え目にするか、描くのならもっとシビアに描いて欲しかった。
3人の恋の行方なんてどうでも良いし、物語に流れもない。
それでも2時間半見せきってしまうんだけどね。
今回は『ハリー・ポッターと死の秘宝』に向けての序奏的位置付けなのかな。
次への期待感を持って終わらせてくれるのは良かった。
恋愛部分は本作で完結して頂いて、
残りの二部作では、ドップリと暗黒世界を舞台に、
ハリーVSヴォルデモートが見たい。
そこにロン、ハーマイオニー、ドラコ、そして、スネイプがどう絡むのか?
![ハリー・ポッターと謎のプリンス](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/hp64.jpg)
『ハリー・ポッターと死の秘宝』の第一部は2010年。
第二部は2011年公開予定。
あと2年で10年間に及ぶ「ハリー・ポッター」シリーズが終わる。
熱狂的なファンでもないし、どちらかと言えば否定的な発言ばかりしていたシリーズだけど、
終わりよければ全て良しであって欲しい。
<余談>
2009年一発目の【伊藤Pの部屋】で、「2009年の展望」を書いた。
そこで、「ハリー・ポッター」シリーズの興行成績に触れた。
『ハリー・ポッターと賢者の石』('01) 203億円
『ハリー・ポッターと秘密の部屋』('02) 173億円
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』('04) 135億円
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』('05) 115億円
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』('06) 94億円
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』で、遂に100億割れをしてしまったんだが、
期待に反して洋画壊滅状態である今の映画界を見るに、
恐らく、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』も、厳しい結果になると思われる。
キャストやスタッフの来日キャンペーンもないし、
イマイチ盛り上がりに欠けている感は否めない。
作品の中身同様、ラストに向けて“溜め時”なのかな?