![]() 2/13〜2/19まで池袋シネマ・ロサにてレイトショー 配給会社:パロマイン、ロサ映画社 (C)2005 PALOMINE |
雄二と俊。
2人の男が車に乗って地方都市へと向かう。
行く先々で様々な人たちと出会いながら、2人は遂に目的地へと辿り着く。
そこはある人物によって殺害された雄二の母親が眠る場所だった・・・。
昨年、ドバイ国際映画祭審査員特別賞を受賞した『休暇』の脚本を手掛け
2月20日には新作『ランニング・オン・エンプティ』の公開を控える佐向大監督が、
2005年に制作した自主映画。
2006年に一度劇場公開されているが、
この度『ランニング・オン・エンプティ』の公開を記念してリバイバル上映される。
DVD化されていない作品なので、この機会に紹介したいと思うんだが、
久しぶりに“手ごわい映画”だった。
前半はともかく、後半の展開が難解で、
イマイチ理解出来ないまま映画が終わってしまった。
く、悔しい・・・。
何度も思い返して、理解しようと努めたが、
結局、スッキリとした解釈には至ることが出来なかった。
なんとなくだが、
街宣車やラジオのニュースから聞こえてくる終末的な雰囲気の中、
若者たちが次に向かってスタートを切る物語という感じかな。
あまりに漠然としていて、
“降参!”でございました。
![まだ楽園](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/madaraku.jpg)
あとで思ったんだけど、
2005年に作られた作品だから、漠然としてしまったのかなって。
2005年は9.11の余韻がまだまだ漂っていたし、
イラク戦争が開戦してまだ2年目。
5月には北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射している。
天災ではあるが、スマトラ沖大地震が起きたのもこの年だ。
映画は時代を反映するものだから、
『まだ楽園』も2005年の世相を表している。
それが本作に漂う危機感だ。
不況にリストラにデフレと、別の意味で世の中は危機的状況下ではあるが、
2005年と今とでは明らかに何かが違う。
たった5年だけど、
時代の流れがあまりに早すぎて、
5年前の抱いた危機感や不安を自分は忘れ去ってしまったんだな。
そして、
“2005年は“まだ楽園”を維持していたけど、
ひょっとして今はもう楽園じゃないのかもしれない・・・”
という思いに至りちょっとブルった。
佐向大監督は、日本の行く末を案じて、
本作を作ったのかもしれない。
こう考えると本作が自主制作にも関わらず、
黒沢清監督に絶賛され、劇場公開に至ったのも納得だ。
しかもこの自主制作ってのが、
半端ないほど自主制作なんだよね。
制作費は約10万円だって。
135万で作った『パラノーマル・アクティビティ』もぶっ飛ぶ、
超ロウバジェットだ。
そんな訳で、出演者たちも演技経験ゼロの素人ばかり。
正直、辛い演技もあるんだけど、
ノーギャラということを考えると致し方なしかな。
![まだ楽園](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/image/madaraku2.jpg)
一方で、低予算に抑えるためにポイント・オブ・ビューを用いる作品が多いが、
本作はちゃんと構図と考えて正攻法で撮影している。
そして、そのカット数とロケーションの多さに驚かされる。
恐らく撮影許可も取らずにゲリラ撮影を敢行したんだろうけど、
よく撮ったなぁーって。
限られた場所でカットをあまり割らずにダラっと撮ってしまい、
テンポが悪くなってしまう自主制作映画が多いけど、
本作にはちゃんとメリハリがある。
だから82分の上映時間、まったく飽きが来ない。
いやはや中々凄い自主制作映画ですよ。