![]() 3/20よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて 配給会社:パラマウント ピクチャーズ ジャパン (C)2009 DW STUDIOS L.L.C and COLD SPRING PICTURES. All Rights Reserved. |
年間322日も出張で飛び回り、
企業のリストラ対象者に解雇を通知する専門家ライアン・ビンガム。
あらゆるしがらみを煩わしく感じ、
人との本当の繋がりを持とうとしないライアンは、
“バックパックに入らない人生の荷物は一切背負わない”がモットーで、
1000万マイル達成だけが、彼の人生の目標となっていた。
無駄なく、優雅に仕事をこなし、
自分の行き方に何の疑問も持たなかったライアンだったが、
彼と同様に出張で全国を飛び回っているアレックスと、
優秀ではあるが超合理的な新入社員ナタリーとの出会いがきっかけで、
自らの人生を見つめ直すことになる。
![マイレージ、マイライフ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/mymy2.jpg)
リアルでシビアな内容を、軽快に、そして、時に感傷的に描いたスキのない作品。
未曾有の大不況によって、アメリカだけでなく、
日本でも当たり前のようにリストラが横行している今日。
まさにタイムリーとしか言いようのない作品だった。
本当にリストラに関しては、骨身に沁みる。
幸い、今すぐリストラという危機は免れたが、
いつそういう話が出てもおかしくない状況があった。
直ぐに解雇はないにしても、思わぬ異動とかの可能性はあったわけで、
映画を見ながら、「俺は映画見ている場合なのかな?」って不安になった。
単にリアルな話なだけでなく、
自分にも大いに起こりうるという事実がメッチャ怖く、
そういった意味では、リアル・ホラー映画だった。
でも、そんな中、
ジョージ・クルーニー演じる“リストラ宣告人”ライアン・ビンガムと、
J.K.シモンズが演じたリストラを言い渡される男の会話には救いがあった。
確かに、解雇宣告によって不安という奈落の底に突き落とされるが、
場合によっては新しい道が開けるキッカケになるのかもしれない。
かつて一緒に仕事をしていた同僚で転職ばかりしている奴がいる。
放送媒体 → ライター業 → 配給会社 → 映画製作会社 → また新しい仕事
彼はリストラされたのではなく、自ら転職していったんだけど、
キャリアに固執しない、こういう人間の方が意外としぶとかったりする。
逆に今までの自分のキャリアが足枷になって、
自らの可能性を自分の手で摘んでしまった知人もいた。
これは極端な例だけど、
『マイレージ、マイライフ』は、
“自分の実績への決別も悪くない”と思わせる要素があった。
![マイレージ、マイライフ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/mymy3.jpg)
でもね、現実問題として、家庭を持っている人とかは、
あまり気楽なことを言っていられないよね。
養わなきゃいけないんだから。
本作では、どうにもならない窮地に立たされた際の、
家族の在り方も提示する。
危機的状況下で、家族が一丸となって協力してくれるのか否か?
助けてくれるのか否か?
ライアンは他人だけでなく、家族との絆さえも疎ましいと思っている男だが、
今まで避けてきた家族とのつながりを試される問題に直面する。
協力するのか?助けるのか?
まぁ、言ってしまえば家族賛歌なわけですが、家庭環境は人それぞれ。
例え家族が協力してくれたとしても、
窮地を脱することができないケースだってあるでしょう。
簡単に解決できる問題じゃない。
結局、これが現実・・・。
リストラ、家族に関しては、救われる部分も多分にあったが、
「でもこれは映画の世界でしょ」という冷めた目で見ている自分がいた。
昔みたいに能天気に「新たなスタート!家族万歳!!」と言えないのは、
病気なのか?
そんな中、一番本作で良かったのが、ライアンのリーダーシップ。
ライアンは新人のナタリーを指導する。
![マイレージ、マイライフ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/mymy5.jpg)
人に物を教えると実は自分が勉強になっていることがある。
まさにそれ。
ライアンとナタリーは反発しあう。
それでもお互いがお互いから学んでいく。
ちょっと前にテレビに出まくっていた元楽天の野村克也監督が、
選手を育てることに生き甲斐を感じていたと語っていた。
「指導者冥利に尽きる」
これが野村監督の口癖だった。
野村監督は多くの選手を育てた。
凄いことだ。
昨年亡くなった元広島の三村敏之監督は、
選手として芽が出ていなかった広島時代の金本知憲選手を徹底的にしごいた。
「なんで俺だけ・・・」と金本選手が思うほど、
“特別扱い”された。
その試練を乗り越えた金本選手は、“鉄人”となり、
連続フルイニング出場試合数、連続出場イニング数の世界記録を更新中だ。
恩師の葬儀の際の金本選手は号泣しながら、
「三村さんがいなかったら、今の自分はいない」と語った。
![マイレージ、マイライフ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/iamges/mymy6.jpg)
ナタリーもきっといつかライアンに感謝する日が来るはず。
そして、いつか自分も同じ言葉を言われたい。
器じゃないって・・・。