2008年01月16日更新

#177 『ハーフェズ ペルシャの詩』

「イランの巨匠アボルファズル・ジャリリ監督最新作!」
というフックだけだと守備範囲外だが、
これに出演:麻生久美子がくっ付くと、しっかりキャッチします!




『ハーフェズ ペルシャの詩』
 『ハーフェズ ペルシャの詩』
2008年1/19より東京都写真美術館にて
配給会社 ビターズ・エンド




映画宣伝の仕事を経て、映画紹介番組に携わるようになってから、
世界各国の映画に触れる機会が増えた。
その中にイラン映画もあった。


しかしながら、アメリカ、イギリス、香港、たまに日本、
そんな感じで育った人間にとって、イランはまさに異国だ。


で、初めて見たのが『ブラックボード 背負う人』。
モフセン・マフマルバフ監督の娘、サミラ・マフマルバフが撮った作品。


全く理解できませんでした。


以来、イラン映画は高尚であり、
単純な脳細胞しか持っていない伊藤Pの手には負えないものとして位置づけられた。


そんなトラウマを抱えながら、麻生久美子に釣られて、
数年ぶりにイラン映画『ハーフェズ ペルシャの詩』に挑んだ。


ハーフェズとはコーランを全て暗唱することの出来る者に与えられる称号であり、
古代ペルシャに実在した詩人の名前でもあるのですが、
そんな説明もあまりないまま物語は突き進んでいくし、目当てである麻生久美子
がなかなか出てこない。


久美子渇望の中、なんとか話についていこうと必死になっていると、
ハーフェズにコーランを教えてもらう高位の宗教者の娘ナバート役で麻生久美子が
満を持して登場。


お待ち申し上げておりました。


『ハーフェズ』


美しい麻生久美子演じるナバートは好奇心旺盛で、ハーフェズに様々なことを質問してくる。
その問いへ答えるべくハーフェズは詩を詠み、視線を交わしてしまう。


「結婚前の娘と詩を詠み交わし、視線を交わした」
ということでハーフェズは罪に問われ、称号と家を失う。
更に母親もショック死してしまう。


ナバートの父親も、娘の意向を無視してさっさと別の男との結婚を決めてしまう。


ハーフェズは全てを失い、失望する。
ナバートも原因不明の病に侵されてしまう。


ここから麻生久美子の出番が、メチャクチャ激減する。


ファン心理的にはガァーンなのですが、
意外や意外、この頃にはすっかりこの作品の世界観に引きずり込まれており、
マイナス麻生久美子であっても、あまり気にならない。
気になるのは主人公のその後だ。


『ハーフェズ』


いろいろあって、ハーフェズはナバートへの愛を忘れるために、
7つの村で処女を探し、鏡を拭いてもらう「鏡の誓願」の旅に出る。
条件を満たせば、願いが叶えられると言われている風習だ。


ここから繰り広げられるハーフェズの旅は、結構面白かった。


本当にたまたまなのですが、
鑑賞時に山崎豊子の「沈まぬ太陽 アフリカ編」を読んでいた。
主人公の恩地元はテヘランに左遷されるので、
イスラム文化の描写が随所に出てくる。


具体的には、飲酒は禁じられているけど、陰で飲んでいるのが当たり前とか、
ピタという平べったい円形のパンが主食とか。


ハーフェズの旅の途中で、お酒やパンが重要なアイテムとして登場してくるので、
「沈まぬ太陽」で得た知識はとても助かった。


そして、ハーフェズの旅ですが、終盤に向かうにつれ、
時間軸が交錯しだし、見る者を戸惑わせる。


要するに難解なのですが、
あとちょっとで理解できそうかも?という微妙な匙加減で、
正直、もう一度見たくなる中毒性を持っている。


ハーフェズや鏡の誓願の意味や、
ちょっと複雑な人物関係をある程度理解したうえで、
もう一度見たら、きっと話の根底にある切ない恋物語をもっと実感できるのかも。


あと、セリフも少なく、スクリーンに映し出される映像から、
シーンの意味を探らねばならない。


説明過多の日本映画ばかり見ていた頃だったので、
久しぶりに頭働かせて、意味を探りながら能動的に映画を見た。
これって実はとても大切なことだと思う。


ということで、久しぶりに体感したイラン映画は、
予想を遥かに上回る面白さでした。


そして、アル中手前の伊藤Pは、イスラム教徒に絶対になれないと思った。
そんな戒律絶対に無理っす!!







『ハーフェズ ペルシャの詩』
麻生久美子&アボルファズル・ジャリリ監督インタビュー動画テキスト
麻生久美子取材記



『忘れられない花のいろ』
『忘れられない花のいろ 麻生久美子のペルシャ紀行』
麻生久美子、吉村未来、竹内裕二(写真)著
A5並製 128ページ・オールカラー ISBN978-4-86020-259-0
好評発売中 1680円

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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