2008年01月25日更新

裏#50 『陰日向に咲く』

原作を読んでいなかったので
全くどんな話なのか知らないで見た。




陰日向に咲く
『陰日向に咲く』
1/26より日劇2ほか全国東宝系にて
配給会社:東宝
(C)2008「陰日向に咲く」製作委員会




原作では各章の登場人物が、最終章で全員登場するという手法らしいけど、
映画はそうではない。


原作を読んだ人は「あぁーなるほどー」と思うのかも知れないけど、
伊藤Pは基本、原作と映画は別物というスタンスをとりたい人間だし、
そもそも読んでいないのだから、そこに上手さを感じることは端から出来ない。


映画では各エピソードが、オムニバスのようにキッチリ分かれているのではなく、
普通の映画と同じような編集で、物語が進んでいく群像劇。


しかしながら、各エピソードはあまりシンクロしないので、
総てのパートがバラバラ。


人間関係や何故その人がそこにいるのかとか、
多分に説明不足なところがあり、上手くつながらないし、納得も出来ない。
無理もかなりある。
クライマックスの持って行き方も、上手いとは思えない。


塚本高史演じるアキバ系オタクのパートなんて完全に浮いていて、
いるの?って。


全てのエピソードを繋ぐ、台風とか黄色い傘といった小道具的な要素も、
機能しているとは言いがたい。


その黄色い傘は、現実では有り得ない空間移動をする。
今まではかなり現実的に物事を進行しているのに、
突然、ファンタジーになる。


陰日向に生きる人たちに光を当て、観客に共鳴させようとしているのなら、
ファンタジーよりもリアルを追求した方が、よりグッとくると思う。


まぁ、現実的と言っても、
夜中に取立て屋が現れ、更には不法侵入したりするので、
厳密に言えば、ちっともリアリティがなかったりするんだけどさ。
(現在は取立て方法、取立て時間は法律によって決まっているんだってさ)


映画なので、そうした方が面白いのもわかるし、
別に突き詰める程の事でもないんだけどね。


それよりも何よりも、日陰に生きる人たちのエピソードっていうけど、
登場人物のほとんどが日陰に生きているとは思えないんだよね。


岡田准一演じる借金まみれで、パチンコ大好きなシンヤはよしとしよう。


西田敏行演じる浮浪者モーゼ、伊藤敦史演じる売れない芸人雷太も良いでしょう。


それ以外の方々、日陰に生きてるか?


宮崎あおい演じる芸人鳴子。
美人だし、芸人としての力量もある。
その娘の寿子(宮崎あおいが一人二役)も弁護士だ。


三浦友和演じるリュウタロウは、
モーゼに憧れ自らホームレス生活を始めるけど、
エリートサラリーマンであることは変らない。
全て捨て切れてないし。


平山あや演じるアイドルみゃーこも、崖っぷちという割には、
CDやDVDをリリースしている。
出したくても出せないアイドルはたくさんいると思う。
客は入らないが、イベントだって開催している。
例えアイドル扱いされていないにしても、テレビ出演も果たしている。
仕事があるだけマシでしょう。
しかも、それでブレイクした。


塚本高史演じるみゃーこを追っかけるアキバ系オタクも、
みゃーこを応援している時楽しそうだよ。
第一、オタクは日陰に生きる人たちなんかい?


緒川たまき演じるストリッパーのジュピターは、
登場シーンが少ないし、あまり説明してくれないので良くわからん。


あまりダメ人間いないじゃん。
これって作品の根底にあるテーマ性を覆さないか?


ということで、疑問だらけの作品なのですが、良いところもたくさんある。


岡田准一はやっぱりカッコイイ(でも演技がいつも同じ)。
宮崎あおいはやっぱり可愛い(でも人妻)。
平山あやも可愛いことに気が付いた(インタビュー経験あるんだけど。。。)。
冒頭の空撮からバスの中に入っていくカメラワークが面白い。
ロケ地が新宿なのが嬉しい。
原作を読んでみたいと思った。


ほら、こんなに列挙できた。


では、何故、本作品が「裏部屋」行きとなったのか?


それは、西田敏行演じるモーゼがサイテーな人間だからという理由に尽きる。


モーゼは適当で嘘つきだ。
でもその嘘は明らかに嘘だとわかる可愛らしい嘘だ。


しかしながら、モーゼは絶対に許せないような嘘をついてしまう。


あるプロ野球選手がホームレスとなった父親を探していて、
どうやらモーゼが父親らしいと判明し、モーゼに会いに来る。


自分たちを捨てて出て行った父親に対して、
プロ野球選手は、


「あなたのことを許せないけど、許そうとする努力はします」


と言い、一緒に暮らそうと提案する。


酷い人間だけど、自分の父親である。
やり直せるならやり直したいというプロ野球選手の気持ち。
とても勇気のいる行動だし、立派だと思う。


そして、モーゼはそんな息子の気持ちが嬉しかったのか、
オイオイ泣きながら父親であることを認め、
息子の元へと歩み寄り、ホームレス生活を捨てる。


ところが、モーゼはプロ野球選手の父親ではなかったことが、
後で判る。


このプロ野球選手の気持ちを踏みにじる酷い嘘が、どうしても許せなかった。
オオボラ吹きにも程がある。


ふざけんな。


その後、モーゼとプロ野球選手のやり取りは描かれない。
なんだこの演出は。


こんなクソキャラのどこに共鳴して、感動しろというのだ。


2008年度の最低キャラが確定した。






『陰日向に咲く』
塚本高史 インタビュー テキスト

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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