2008年04月14日更新

#208 『映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者』

第16作目となる映画「クレヨンしんちゃん」。
監督はなんと、1作目から4作目を手掛け、
原恵一監督と共に「クレしん」ワールドの礎を築いた本郷みつる。


『ヘンダーランドの大冒険』以来、実に12年ぶりの参戦だ!


本郷監督作品は、野原一家をトリップさせ別世界で活躍させる、
いわばファンタジーのテイストが強い。


また、キャラクターや設定に、
白黒、明暗、善悪、男女といった対比の構図を取り入れることが多い。
男女に関してはその中間ネタ(つまりホモとか男装とか)もよく用いる。




クレヨンしんちゃん
『映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』
1/19より日劇2ほか全国にて
配給会社:東宝




今回のポスタービジュアルを見ても、本郷テイスト全快。
かなりファンタジー要素が強そうなので、そのつもりで見た。


確かにファンタジーだけど日常生活を巧みにインサートし、
素晴らしいバランスで物語を進行してくれる。


日常とファンタジーを適度な時間と間隔で見せてくれるので、
全く飽きが来ない。


日常シーンでの笑いが、TVの「クレしん」の面白さだと思っているんだけど、
今回はその日常での出来事を、ファンタジーシーンで更なる笑いに昇華させている。


特にひろしの通勤、勤務中のシーンは効果的だ。


そして、ファンタジーの世界観も独創的で面白い。


「ファンタジーはなんでもありだから嫌いなのよ」という、
伊藤Pの思いを代弁してくれるようなセリフをみさえに言わせている。
これは確信犯でしょう。


本作ではきちんとしたルールがあった上で、ファンタジーの世界が展開するので、
“ファンタジーだからなんでもあり”といった予定調和は、それ程感じない。
ファンタジーが苦手な人でも大丈夫でしょう。


クレヨンしんちゃん


また、対比の構図ですが、
地球と地球を侵略しようとする暗黒界の対比という、
本作の核となる設定がまずそれに該当する。


そして、敵のボスキャラが白黒だし、
手下も男女で互いにライバル視している。


野原家の愛犬シロとそっくりだけど、色が黒い犬まで登場する。


野原家の定番ひろしVSみさえも当然ある。


男女の中間ネタは封印?と思わせるが、これもちゃんと出て来る。


クレヨンしんちゃん


あと、今回、“おや?”と思った点が2つある。


まず、しんのすけの“ケツだけ星人ブリブリ”をことごとくスベらせる。
流石にしんのすけも“ウケない”と気が付き、この行為を控える。
チンチンとかも出てくるのですが、下ネタをギャグとして使っていない。


これはひょっとして、「クレしん」は有害だというクソバカ連中(PTAとか)対策か?


更に、これは今までもそうなんだけど、
野原一家は朝食と夕食を必ず一家全員で摂っている。


食事は、家族間のコミュニケーションを取る重要な時間。
みんなで美味しく、楽しく食事を摂るのは最高の食育だ。


最近、バラバラに食事を摂るという家族が増えていると聞く。
それが家族疎遠の要因のひとつとまで言われている。


野原一家はごくごく当たり前なこととして、食育を行っている。


これでもPTAのお母さん方は、「クレしん」を有害だと言いますか?
そういうお宅は、きちんと家族みんなで食卓囲んでいますか?


また、不況、温暖化といった近年の話題の社会問題も、
いやらしくない程度に随所に入れる。


というか、悪いニュースだらけの社会に対して、
「暗いときこそ明るくしようよ!」という投げ掛けを、本郷監督がしているように思う。


作品自体、地球が暗黒界の侵略者に脅かされるわけでして、
この侵略者こそ、今の社会に蔓延する暗い出来事であり、
その対抗として、“明”である野原しんのすけ(野原一家)をぶつける。


アニメ技術の部分も含め、
今だから出来る表現、テーマを本郷ワールドにぶち込んだ。


そんな印象を受けました。


子供には理解できない文面かもしれませんが、
伊藤P的には「クレしん」ワールドに触れていない、
また、その素晴らしさを理解していないという大人の方々に対して、
布教活動をすることが使命だと思っている。


PS:今年も東宝さんにお願いして、一般試写会で鑑賞させて頂いた。
  いつもはほとんど親子連ればかりなのに、今回は若いカップルもチラホラ。
  どうやら主題歌を歌っているDJ OZMAの舞台挨拶が目当てだったようで。
  そんな舞台挨拶の模様はコチラでどうぞ!

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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