2008年11月19日更新

裏#67 『ブラインドネス』ネタバレ解釈編

『ブラインドネス』を見た数人から、意味が判らない部分があると言われた。


そこで今回、その意味不明という部分の解釈を伊藤Pなりにしてみようと思うのですが、
かなり後半部分の出来事も含まれるため、当然、ネタバレになってしまう。


よって、以下、ネタバレですので、読まれる際はご注意下さい。


因みにこの解釈を知ったところで、『ブラインドネス』の鑑賞時に楽しみが増すかと言えば、
そうとも言えないので、映画をご覧になってから読まれた方が良いかも知れません。


『ブランドネス』の簡単なストーリーとネタバレ込の解釈ですが、
ストーリーはあまり解釈に影響しないので、読み飛ばして頂いても構いません。


ブラインドネス
『ブラインドネス』
11/22より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて
配給会社:ギャガ・コミュニケーションズ
(C) 2008 Rhombus Media/O2 Filmes/Bee Vine Pictures


■ストーリー


とある都会の街角。突然、日本人男性が視力を失う。
視界が真っ白になった日本人男性は妻に付き添われ、病院で診察を受けるが、
医者は異常が無く、失明の原因が判らないと告げる。


その後も各地で失明者が続出。
日本人男性の妻、日本人男性を助ける振りをして車を盗んだ泥棒、
サングラスを掛けた娼婦、そして、医者までもが視力を失っていく。


失明患者が驚異的な感染力で増加するため、
政府は感染者をかつて精神病院だった収容所に隔離して軟禁する。
その中に、ただ一人目の見える女がいた。
それは夫の身を案じて紛れ込んだ医者の妻だった。


隔離政策も空しく、感染者は拡大を広げ、収容所も込み合っていく。
軍に厳しく監視され、食料や医療品の給付も満足になされず、
次第に苛立ちを募らせる感染者たち。


やがて、第三病棟の王(キング)と名乗る男が、拳銃を振りかざして、
収容所内を制圧し実権を握る。


第三病棟の王とその仲間たちは、限られた食料を独占し、
「食べ物が欲しければ、金や貴金属をよこせ」と他の感染者に要求する。


金目の物がなくなると、今度は「女を出せ。女が食事代だ」という要求を出す。


女たちは屈辱の中、生きるために自分たちの身体を男たちに差し出す。
その中には医者の妻もいた。
そして、女たちの夫は、無力感に打ちひしがれ、絶望する。


収容所の秩序は完全に崩壊し、地獄と化す。
目の見えることを隠し続けている医者の妻は、なんとか状況を打破しようと思案する。


そんな折、第三病棟の王の仲間の一人が、女を殺してしまう。
怒りが沸点に達した医者の妻は、
第三病棟へと向かい、隠し持っていたハサミで襲い掛かる。


これを機に、支配層と被支配層の抗争は激化するが、
目が見える医者の妻の存在が有利となり、
第三病棟の王と仲間は倒され、収容所は解放される。


感染者たちを引き連れて収容所から出た医者の妻は、
失明者たちで溢れ、荒廃した街並みを目撃する。


感染者たちは次第に離れ離れになり、
医者の妻の元に残ったのは、夫である医者、日本人夫婦ら数名となっていた。


壮絶な食料争いを経て、医師の家に向かう感染者一向。


その途中で、激しい雨が降り出す。


収容所で身体を洗うことなど出来なかった感染者たちは、
喜びながら雨に当たり、身体を潤す。


そして、医師の家に到着した一行は、
久しぶりに人並みの生活を享受し、安らかな時間を共有する。


翌朝、日本人男性の視力が突然回復する。


それを発端にして、他の感染者たちの視力も戻る。


喜びを分かち合う元感染者たち。


ここで映画は終わる。




■疑問点
本作を見て、意味が判らないと指摘されたのは、


・そもそも目が見えなくなる現象の原因はなんだったのか?
・なんで目が見えるようになったのか?


という2点だった。


確かに劇中、説明は一切無い。


正直、伊藤Pもよく判らん。


ただ、なんとなく解釈できはした。




■解釈
<目が見なくなった原因>
これはもう、現代社会に蔓延る未知の病原菌としか言えないでしょう。


人類は常に病原菌と戦ってきた。
炭疽菌、結核、ペスト、コレラ、最近だとエイズ、エボラ、鳥インフルエンザ・・・


特に地球温暖化が進み気候が変わったことによって、
食物連鎖が破壊され、未知の病原菌が生み出される。


気温上昇によって、
本来、生息出来なかった地にも、病原菌を運ぶ媒体となる生物が飛来し、
ウィルスを撒き散らす。


そんな温暖化の原因を作ったのは人類だ。


■目が見えるようなった理由
雨。


『ブラインドネス』の雨のシーンと、その後の視力回復を見て、
とある映画を思い出した。


『ベン・ハー』である。


以下、今度は『ベン・ハー』のネタバレになってしまうので、
見ていない方は、読む前に見て頂きたいのですが・・・
4時間あるしなぁ・・・


まぁ、古い作品ということで書いちゃいます。


『ベン・ハー』には、ベン・ハーの母と妹が出くる。
この2人はハンセン病に罹っており、隔離されている。


ベン・ハーは2人を連れて、イエスの元へ救いを求めに行く。
しかし、イエスは十字架を背負い、ゴルゴダの丘へと向かっている最中だった。


絶望するベン・ハーに追い討ちを掛けるように、
イエスは磔の刑に処される。


イエスが息を引き取ると、嵐が吹き荒れ、血が洗い流される。
そして、その雨を浴びた母と妹の病が、一瞬にして治るという奇跡が起こる。


似てないかい?『ブラインドネス』と。


失明した感染者たちは隔離され、雨によって癒される。


このイエスの死後の雨というのは、
『ベン・ハー』の中だけの出来事で、
聖書とかに記されているのかどうか知らないけど、


「天の父が善人にも悪人にも太陽の光を注ぎ、雨も降らせる様に敵を愛せ」
というイエスの教えがある。
基本、人類皆兄弟だ。


目の見える医者の妻に導かれて、医師の家に向かう感染者たちは、
収容所内でそれぞれが愛する人を裏切っていたりする。


そんな彼らだけど、お互いを許し、医師の家に向かおうとする。


この悟りの心境は、イエスの教えとある程度合致する部分がある。


人類が自らの手で、世の中を悪い方向に向かわせていることへの戒めとして、
神が視力を奪い、人々の身の程と人間の本質を悟らせる。


そして、視力を戻すために雨を降らせ、
改心した人類に新しいスタートを切らせる。


つまり、『ブラインドネス』の中で起こった出来事は、
神のなせる業なのだ。


だから『アイ・アム・レジェンド』みたいに、人類滅亡の原因も描かれないし、
宇宙から飛来した何かに因るといったものでもない。


その裏を取るために、フェルナンド・メイレレス監督に取材した際、
下記の様な質問をしてみた。


Q:あの雨はゴルゴダの丘でイエスが亡くなった後に降った雨、と解釈して良いですか?

メイレレス監督の返答はこうだった。


「そう考えてもらって良いです。
雨は大変な目に遭った彼らを清める効果があったと思います。まるで贖罪のように。
そして、医者の家に辿り着いて、新しい家族として再出発をするのです。
お互いが目ではなく心で見始めたのかもしれません。
あの雨は、間違いなく大きな変化をもたらしています」


あながち間違っていなかったようだ。


なので、もしも同様の質問をされたら、
「『ベン・ハー』にヒントがあるよ」と、助言してあげましょう。


※【伊藤Pの部屋】『ブラインドネス』
※『ブラインドネス』フェルナンド・メイレレス監督インタビュー


メイレレス

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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