2009年01月15日更新

#325 『感染列島』


感染列島

『感染列島』

1/17より日比谷スカラ座ほか全国東宝系にて
配給会社:東宝
(C)2009 映画『感染列島』製作委員会




突如、日本列島を襲った新型ウィルス。
瞬く間に大感染していく見えない敵と闘う医師、
患者、そして、患者の家族たちの姿を描いたパニック人間ドラマ。


まず、オリジナル企画であることに注目したい。
リメイク、テレビドラマやベストセラー小説、人気漫画の映画化が多い昨今の邦画。


その中でも先導的な東宝が、このクラスの娯楽作品をオリジナル脚本で作った。
これが良い意味で意外だった。


ドラマや小説、漫画にある程度の知名度があれば、
それらが映画化されるというだけで話題になるし、
余程ファンを裏切るような内容でない限り、集客も想定しやすい。


でも『感染列島』には、
そういった基盤がないから、完全に映画で勝負しなくちゃならない。


しかし、元がない代わりに、本作には時代性という強い味方が存在する。


今年の1月2日にベトナムで13歳の少女が、鳥インフルエンザと見られる症状で死亡
5日には中国・北京で鳥インフルエンザに感染していた19歳の女性が死亡した。


世界保健機構(WHO)は、2009年1月7日時点で、
全世界で発症者数393人、うち死亡248人と報告。
発症者の63%の人が死亡している。
コチラのサイトを参照


ヒトからヒトへの感染例はないけど、
変異して新型のインフルエンザになる可能性も示唆されている。


どちらにしても、現に鳥インフルエンザで死亡者が出ているし、
いつ新型ウィルスに変異するかも分からない。


現実社会でウィルス危機の不安を抱えている中で、
この『感染列島』はあまりにもタイムリーだ。


『感染列島』に登場するウィルスは、
有効なワクチンが存在しない、しかもヒトからヒトへ感染する新型ウィルスで、
瞬く間に全国的に広がっていく。


鳥インフルエンザじゃないけど、やはりこれだけ頻繁に報道されていると、
当然、思い起こしちゃう。


そんな今の時代だからこその『感染列島』ですが、
今までの映画になかったウィルスとの戦いが描かれている。


かつて『アウトブレイク』とか、近年では『アイ・アム・レジェンド』とか、
ウィルスを扱った映画はあるけど、ウィルスが感染していく過程と、
ウィルスを分析し、どう対処していくかを描いた作品はなかったのでは?


・それは何か? → ウイルスの正体


・それは何をするのか? → 感染者の症状


・それはどこから来たのか? → 感染経路の究明


・それをどう殺すのか → 治療法


4つの命題を一つずつ潰していき、それからワクチンが開発される。


こうやってウィルスに対峙していくんだぁーって。


そして、その間、医師や看護師たちは患者に対症療法を施すしかなく、
その医師たちの奮闘ぶりは、この映画の肝でもある。


自分に感染する恐れもある中、家にも帰らず患者を診る医師と看護師たち。
肉体的にも精神的にも辛い、過酷な現場に従事する彼らの姿をリアルに描き出している。


感染列島


また、役者も概ね良かった。


医師を演じた妻夫木聡はいつも通りっちゃいつも通なんだけど、
役柄にピッタリとはまっていると思う。


感染列島


相手役の檀れいは、
事態の究明と感染拡大を防ぐためWHOから派遣されたメディカルオフィサー役で、
私的感情を押し殺して、自分のやるべきことをやらなければならない女性を、
説得力を持って演じている。


感染列島


この二人の芝居が滑ると、映画の世界が台無しになってしまうんだけど、
流石、共にキャリアを積んでいるだけあって、安心して見ていられる。


国仲涼子、池脇千鶴、佐藤浩市、藤竜也、光石研、キムラ緑子と、
他の主要キャストも実力派が揃っている。


少々気持ちの悪い無名の研究者を演じたカンニング竹山が、
思いの外、演技が上手くて驚いた。


感染列島


逆に同じくお笑い芸人の田中裕二(爆笑問題)は、ちーと芝居が臭かったな。
でもそういう役柄だから仕方ないか・・・


感染列島


オリジナル企画、時事性、内容、キャスティングどれも良いんだけど、
一点、残念なことがある。


それはリアリズム。


序盤と病院内のやり取りは、リアリティがあるんだけど、
爆発的な感染によって、交通危機が凍結し、都市機能も停止。
日本の経済すら破綻してしまうという描写は、やや大風呂敷を広げ過ぎたように思う。


銀座とか未曾有の事態に陥っているのに、
そこからそれ程遠くない場所で暮らしている住民(特に田中裕二親子)は、ノホホンとしていたりする。


都市機能が崩壊しているのなら、惨事を伝える報道機関だって正常に機能していないでしょう。


流通機能も麻痺しているだろうから、食を得るのも困難だろうし、
ガスや電気の供給も通常とはいえないでしょう。


電気で言えば、田中裕二親子の家はローソクで明かりを取っているのに、
舞台となる病院は電気バリバリ使っている。
携帯電話のメールは勿論、パソコンの通信だって出来ちゃう。


『252-生存者あり-』もそうだったんだけど、
こういった被害の規模にムラがあると、やや白ける。


そして、これだけウィルスが猛威を振るっているというのに、
妻夫木聡と檀れいは、外出時にマスクすらしていない。


ちーと無防備過ぎやしませんか?


あと、日本での感染の原因を作った○○の行動も腑に落ちないな。


あれだけの感染力を持っているウィルスなんだから、
どう考えても○○が○○に辿り着くまでに、もっと多くの人たちに、
それも多くの国々の人々に感染するでしょう。


重箱の隅を突くようで、申し訳ないんだけど、
もうちょっと細部まで徹底してくれたらなぁ〜って。


因みに、エンディング間近の大学講義室で檀れいが、
宗教改革者マルティン・ルターの格言を口にするんだけど、
全く同じ格言が映画『フィッシュストーリー』(3月公開)で使用されていた。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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