2009年10月01日更新

#415 『一年之初』


一年之初

『一年之初』

10/3より新宿バルト9にてレイトショー
配給会社:ティ・ジョイ




“いちねんのはじめ”と読む。


第19回東京国際映画祭「アジアの風」部門で上映された作品が、
何故だか分りませんが、突然、3年後の今、特別上映される。


大晦日の24時間に起きる5つの物語をパラレルに描き、
徐々にそれぞれの物語の人間が交錯し、その関係性が明らかになっていく群像劇。


台湾映画にはかなり疎い。


『キラー・ヴァージンロード』の記事で図らずも触れることとなった『戯夢人生』。
多分、純粋な台湾映画はこれしか見ていない。


有名なエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の思い出』、
アン・リー監督の『恋人たちの食卓』といった作品からなんとなーくイメージできる台湾映画像は、
リアルなホームドラマ。


『一年之初』のチェン・ヨウチェ監督は1977年生まれの若手ということで、
“どんな感じなのかな?”と思って見てみたら、上記イメージを覆す作品だった。


まず物語の交錯のさせ方。
中々手が込んでいる。
脚本もチェン・ヨウチェ監督が手掛けており、かなり練ったに違いない。


撮影も様々な技法がエピソードごとに用いられている。


ケンカシーンでは、登場人物の肩の部分にカメラを据えて、
まるでその場にいるかのような臨場感を作り出してみたり、
その他、手持ち、長回し、クレーン、ポイント・オブ・ビューなど、
あれも!これも!な状態だ。


音の使い方も、かなり凝っている。


照明の調節だけでなく、ポスプロ段階でも手を加えたんだろうけど、
画面を飛ばして白ぽくしたり、
ザラザラさせてみたり、黄色くしてみたり、妙に生々しくしてみたり、
ふわふわさせみたりと、手間がかかっている。


一年之初


「ピカチュウ!」、『バベル』に匹敵するパカパカ高速点滅まであるので、
鑑賞の際は要注意だ。


これらの演出を斬新と見るか、鼻に付くと感じるかは受け手次第でしょう。


登場人物たちは全員何かしら苦悩のを抱えていて陰があり、
演じている俳優、特に女優さんたちには妙な透明感がある。


一年之初


作風的には、
ヌーベルバーグ+ウォン・カーウァイ+岩井俊二。


これって、伊藤Pの三大苦手要素じゃない・・・


それでもこの作品を受け入れることが出来たのは、
伊藤Pの免疫力が増したとか、精神的にオトナになったからとかでなく、
単に“やりたいことを全部入れました!”というチェン・ヨウチェ監督の意気込みが、
初々しいく感じられたからかな。


“思い入れが強い”→“勿体無い”→“カットできない”
という新人監督が陥り易いドツボにはまっている点も微笑ましい。
(だからちょっと単調な部分がある)


一年之初


登場人物たちにイマイチ共感できなかったり、
終始暗くて、悪い方へとミスリードされるので、
やや辛く感じる部分もあったけど、
最終的にきちんと着地して、爽やかな気分にさせてくれる。


でもさぁ、大晦日から元旦に掛けての話だというのに、
映画の撮影していたり、裏組織では会議が開かれていたりする。


台湾人はワーカフォリックなのでしょうか?


<情報>
チェン・ヨウチェ監督の新作『ヤンヤン』ですが、
10/17(土)から開催される第22回東京国際映画祭の「アジアの風」で上映されます。


『ヤンヤン』
■10/19 17:20 - 19:42(開場17:00)
 六本木会場 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5]
 登壇ゲスト(予定):リー・ガン(プロデューサー)


■10/24 11:00 - 13:22(開場10:40)
 六本木会場 [TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2]
 登壇ゲスト(予定):チェン・ヨウチェ(監督)、ホワン・チェンウェイ(俳優)


予告編を見る限り、“らしさ”が出ている。
手持ちカメラがブレブレで、予告編だけでちょっと酔いそうだけど・・・。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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