2009年11月10日更新

#428 『なくもんか』


なくもんか

『なくもんか』

11/14より全国にて
配給会社:東宝
(C)2009 「なくもんか」製作委員会




阿部サダヲ×宮藤官九郎×水田伸生監督、
『舞妓Haaan!!!』トリオが再集結したコメディタッチのホームドラマ。


東京下町・善人通り商店街にある惣菜屋「デリカの山ちゃん」二代目店主の祐太は、
幼い頃、父に捨てられたトラウマから、いつも笑顔を絶やさない八方美人のお人好しとなり、
人々から良いようにこき使われている。


そんな祐太の元に、10数年前に商店街を出て行ったきり音信不通だった
「テリカの山ちゃん」の初代店主(故人)の娘・徹子が、子供2人を連れて現れる。


祐太と徹子は結ばれ、徹子の子供2人、
そして、痴呆症の徹子の母親と5人で暮らしだす。


なくもんか


ところが婚姻届を出すために戸籍謄本を手に入れた祐太は、
兄弟コンビ「金城ブラザーズ」として大ブレイクした芸人・祐介が、
生き別れとなっていた実の弟だということを知る・・・。


赤の他人でありながら、本当の兄弟という触れ込みでデビューしたうえ、
悲劇的な生い立ちを捏造したことで、世間の同情を買ってしまった祐介は、
兄である祐太の存在が疎ましくなる。


一方の祐太は、実の弟の存在を喜び、
祐介の気持ちを逆なでするかのように、親しげに接してくる。


まず、この兄弟の気持ちの擦れ違いがある。


続いて、祐太と徹子の夫婦関係。
徹子は子供が2人いることからも分るとおり、
音信不通の10数年間で、様々な体験をしてきたらしい。


祐太も祐太で、毎週夜中に沈んだ顔で出掛け、
翌朝、爽快な姿で戻ってくるという怪しい行動を取っている。


お互いが秘密を抱えているが、この夫婦は事実を追究しようとしない。
そんな夫婦関係がある。


そして、その徹子が連れてきた子供たち2人は、
祐太のことを父親と認めることが出来ず、決して「お父さん」と呼ぶことはない。


この兄弟、夫婦、親子の関係の間にある溝をどうやって埋めるのかが、
本作のポイントなんだけど、
これ以外にも、祐太・祐介兄弟のお父さん、祐介とその相棒・大介との関係や、
商店街の人々との交流なども描かれており、
詰め込みすぎたか、結局、どれもこれも中途半端になってしまっているような気がする。


なくもんか


それぞれのキャラクター間にある溝をどう埋めていくのか?
その過程が重要なのにも関わらず、改善のキッカケ、要因を描いていないから、
心境の変化が唐突で、あまり説得力がない。


特に祐太に対する子供たちの変化には、「なんで?」という疑問を抱いてしまった。


祐太は徹子の過去を聞かぬまま結婚しちゃうし、
徹子も夜こっそりと出掛ける祐太に、その理由を聞こうとしない。


いろんな夫婦関係があるから一概には言えないけど、
ちょっと夫婦としてどうなのか?って思ってしまった。


徹子はちょっと強引なところがあるから、
「あんた!なにやってんのよ!!」って問い詰めると思うんだけどな。


祐太と祐介の歩み寄りに関しても、もう一つパンチの効いたキッカケが欲しかった。


後半、沖縄に行ってからがちょっと雑なんだよね。


決して悪い作品じゃないし、人情劇としての狙いも良いと思うんだけど、
「なくもんか!」って思えるぐらいの感動には遠く及ばなかった。


なくもんか


続いて役者について。


阿部サダヲは、
笑顔の裏にある複雑な“負”の感情を持った祐太役にはピッタリだと思うんだけど、
ちょっとオーバーアクトかなぁ・・・。


ややオーバーな芝居はこの俳優さんの持ち味なので、
これはばっかりは好きか嫌いか好みの問題でしょう。


向かったベクトルは違うが、兄・祐太同様、
屈折した性格の持ち主である弟・祐介を演じたのは瑛太。


難しい役柄だったと思うんだけど、落ち着き払った演技で、
祐介の複雑な心情を見事に表現している。


なくもんか


動の阿部サダヲ、静の瑛太。
この主演2人の対比と絡みは、本作の面白さの一つだと思う。


そして、徹子役の竹内結子が個人的には一番良かった。


徹子はなんとなく掴みどころがないんだけど、
ちゃんと強い意志と信念を持っている。


竹内結子はこういう役所を演じるのが上手い。


なくもんか


他にも光石研、伊原剛志、いしだあゆみ、陣内孝則といったベテラン勢が、
脇を固めている。


あと、本作を見て一番強いインパクトを残しているのが、
「デリカの山ちゃん」の名物ハムカツ。


なくもんか


今から4年ぐらい前、異様にハムカツにはまった時期があって、
ハムカツを求め、近所のお肉屋さんは勿論のこと、
2、3つ離れた沿線の駅界隈にあるお肉屋さんを訪ねて回ったんだけど、
意外と売っていない。


売っていたとしても、値段の割には小ぶりだったり、
美味しくなかったり、サクサクしていなかったりした。


味とは関係ないけど、「1枚下さい」というと、
「えっ?たったの1枚?」って感じで露骨に嫌な顔をするお店もあった。


美味しくて、気楽に買えるハムカツになかなか出会えなかったのですが、
遂に理想のハムカツを発見!!


西荻窪駅近くにある「宝家牛肉店」。


ここのハムカツはサクサクで、ムチャクチャ美味い!!


1枚たったの70円!


対面ケースにハムカツがなくても、
お願いすると作ってくれる。


というか、その方が揚げたてホヤホヤのハムカツを購入できる。


しかも1枚だけお願いしても、快くオーダーを受けてくれるのが嬉しい。


『なくもんか』を見て、どうしても「宝家牛肉店」のハムカツが食べたくなり、
週末にチャリ飛ばして買いに行ってしまった。


なんだか『なくもんか』よりも「宝屋牛肉店」の宣伝になってしまいましたが、
本作を見たら、ハムカツが食べたくなること間違いなしです。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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