2009年11月11日更新

#429 『脳内ニューヨーク』


脳内ニューヨーク

『脳内ニューヨーク』

11/14よりシネマライズほか全国にて
配給会社:アスミック・エース エンタテインメント
(C) 2008 KIMMEL DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved




ニューヨークに住む劇作家ケイデン・コタード。


体調も優れなけば、夫婦中も上手くいかない。
演出した舞台は家族にけなされる。
遂には嫁と娘は家を出ていき、新たに恋人を作ろうとするも逃げられる。


失敗だらけで、人生のどん底に陥っていたケイデンだったが、
マッカーサー・フェロー賞を受賞。


思わなぬ大金と名誉を手にしたケイデンは、
一世一代の大プロジェクトを実行する。


それは自分の人生をやり直すことを意味していた。


脳内ニューヨーク


『マルコヴィッチの穴』、『エターナル・サンシャイン』の脚本家チャーリー・カウフマンの初監督作品。


今までの脚本作品を見るに、本作も一筋縄ではいかないだろうと予測はしていたが、
思った以上に手強い作品だった。


正直言って、良く理解出来ませんでした。


ちょっと不条理で、もの事がスムーズに進まない摩訶不思議な世界観で、
フェデリコ・フェリーニの作品を見ているかのようだった。


時間を持て余していた学生の頃は、フェリーニとか背伸びして見てたけど、
今は単純明解な作品ばかり好んで見ているから、脳みそ腐ってきたかな・・・。


しかも悔しいのが、なんとなーく分かりそうなんだけど、
やっぱり分からないというほどほどの難解さなんだよね。


で、難解ではあるが、ちゃんとストーリーもあって、
こちらの予想をことごとく裏切ってくれる展開なので、決して退屈することはない。


脳内ニューヨーク


そして、ところどころに自分の人生について考えさせられるエピソードやセリフがある。
これが結構、突き刺さる。


“自分はちっぽけな人間だけど、みんなそれぞれが人生の主役”
とても勇気をもらえるコメントだ。


“君を失望させたね”
“まさか、あなたは誇りよ”

恋人がいる人や既婚者の方々には、響くであろう一言だ。


“人生は細かい枝葉の積み重ね。その選択が正しいかどうかは数年後に分かる”
自分の人生が本当に幸せだったかどうかは、死期になって分かると思っているので、
大いに共感した。


“もうキミは僕の一部だ。呼吸と一緒”
“空気みたいな存在で、ときめかない”というモロ倦怠期な表現があったりしますが、
それと違って、このセリフはとても深い愛情がこもっていると思う。


これはケイデンがサマンサ・モートン演じるヘイゼルに発した一言なんだけど、
この2人の関係がとても良かった。


脳内ニューヨーク


ケイデンとヘイゼルはくっ付きそうでくっ付かず、
お互いが必要であると認め合った時、
既に2人とも老いていて性的な行為にも至らない。


でも精神的な部分で繋がっている。
あの年齢でそういう人がいるだけでも素晴らしい。


こんな感じで、難解でありながらも、
心にたくさんのお土産をくれる作品だ。


それから、本作はキャストが魅力的だ。


ケイデンを演じるのはフィリップ・シーモア・ホフマン。
彼の上手さは今更説明する必要もないでしょう。


脳内ニューヨーク


そして、ケイデンを取り巻く女性たちを演じた女優陣が凄い。


先述のサマンサ・モートンを筆頭に、
キャスリーン・キーナー、エミリー・ワトソン、ダイアン・ウィースト、
ミシェル・ウィリアムズ、ジェニファー・ジェイソン・リー、ホープ・デイビス。


地味に豪華だ。


脳内ニューヨーク


演技だと感じさせない実力派俳優たちの演技が堪能しつつ、
あんまり深く考えないで、
天才チャーリー・カウフマンが提示する奇抜な世界に身を委ねる。


そんな感じの作品でございました。

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» 映画: C カウフマン初監督「脳内ニューヨーク」 肥大する幻想に取り込まれる感覚を楽しむ。 送信元 日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜
原題は、synecdoche new york 。 「マルコヴィッチの穴」Being John Malkovich、「エターナル・サンシャイン」Sunsh... [詳しくはこちら]

コメント (2)

伊藤P様、はじめまして、是蘭と申します。
「脳内ニューヨーク」、かなりビミョーな気持ちになりつつも、
がんばって最後まで見て、レビューをしたためました。
大変いい映画なるも、見る方の体力・気力も問われる映画かと。

「原初のキス」: http://zelan.exblog.jp/ (11/23記事)

伊藤P:

>是蘭さん

今更ですがコメントありがとうございました。
忙しさにかまけてコメント返し、サボっておりました。


「原初のキス」を読むにコラージュ作家さんなのですね。
美術は疎く大した知識はありませんが、ダリとか好きです。
(ダリがコラージュなのかどうかもようわからんのですが・・・)


プログレッシブ・ロックのアルバム・ジャケットも大好きです。
(コラージュと関係ない?)


『脳内ニューヨーク』は確かにコメディぽく見えますし、
見たら見たで体力のいる作品ですね。
特に後半。


「ハリウッド映画と真逆」
言い得て妙ですね。


また映画を見たら感想を書いて下さいねぇ〜。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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