2009年11月20日更新

#432 『2012』


2012

『2012』

11/21より丸の内ルーブルほか全国にて
配給会社:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント




2012年を「終末の日」とするマヤの予言をモチーフにした、
地球崩壊ディザスタームービー。


このジャンルの大家と言えば、ローランド・エメリッヒ。


『インデペンデンス・デイ』、『GOZILLA ゴジラ』、
『デイ・アフター・トゥモロー』と、多くのディザスタームービーを手掛けている。


エメリッヒ本人が『インディペンデンス・デイ』はディザスターじゃないと語っているし、
厳密に言えば、『GOZILLA ゴジラ』も違うんだろうけど、
これらの作品には“破壊”が共通項として存在する。


天災だろうが、“宇宙人災”だろうが、“怪獣災”だろうが、
なんでも良いから壊しちまえ!!!って。


2012


そうローランド・エメリッヒは映画界の橋本真也なのだ。
その破壊の規範はどでかくて、ワールドワイド。
これがエメリッヒ作品の魅力。


しかしながら、『デイ・アフター・トゥモロー』を撮った後、
エメリッヒはもう破壊映画を撮りたくないと思ったらしい。
だから破壊があまりない『紀元前1万年』を次回作に選んだ。


それでも今回、プロデューサーであり盟友でもあるハロルド・クローザーに説き伏せられて、
この『2012』を撮ったという。


ハロルド・クローザーがエメリッヒを熱望した理由は、
映画を見ればよく分かる。


エメリッヒじゃないと無理だよ。
こんな破壊のつるべ打ちを映像化できる気狂いは、エメリッヒしかいないでしょう。


最初の20分以降、これでもか!というぐらいの爆殺シュート!爆殺シュート!爆殺シュート!


過去のディザスター・パニック映画がぜーんぶ入っている。


自身の作品はもちろんのこと、
古くは『大地震』、『ポセイドン・アドベンチャー』、『世界崩壊の序曲』から、
『アルマゲドン』、『ディープ・インパクト』、『ボルケーノ』、『フラッド』、
『タイタニック』、『タンテズ・ピーク』、『パーフェクト・ストーム』、
『ポセイドン』・・・。


ディザスターじゃないけど「トランスフォーマー」シリーズも入れちゃえ。


地震、地割れ、噴火、溶岩、津波、火災、崩壊、転覆、墜落・・・


2012


エメリッヒもこれで悔いを残すことないでしょう。
二度とこの手の映画を撮らないという決別を感じさせる気合の入れようだった。


どれも既視感は否めないんだけど、
これだけつるべ打ちされちゃうと、
もう本当にお腹一杯です。


ありがとうございました。


あなたは本当に凄いです。


さて、もうひとつのエメリッヒの特徴は、ビジュアルにこだわり過ぎるからか、
人間ドラマが描けない点だ。


今回、エメリッヒが本作を撮ることに決めた最大の理由は、
今まで手薄だった人間ドラマが描けるからだったという。


本作には2つのドラマがある。


ひとつは地球滅亡の事実をいち早く知ってしまった人たちが、道徳的に葛藤するドラマ。
もう一つは、バツ1の男が危機的状況の中で、家族の絆を取り戻すドラマだ。


でも、これって良くある話じゃない?
って思いながら見たんだけど、今時珍しいぐらいのド直球の人間ドラマだった。


2012


まぁ、正直、泣くまでの感情の昂りは得られなかったけど、
そもそもエメリッヒにそんなもん求めていない。
これぐらいで十分だ。


あと、エメリッヒはドイツ人だけど、
アメリカ万歳!な傾向が強い。


『インデペンデス・デイ』では、アメリカ大統領が世界を牽引する。
『GOZILLA ゴジラ』では、アメリカ軍がGOZILLAを倒す。
『パトリオット』では、アメリカ独立戦争のヒーローが活躍する。


正直、このタカ派な部分が鼻に付くところではあったのだが、
『2012』では、今の世界情勢を多分に反映した内容になっている。


今回、アメリカ合衆国大統領もアメリカ軍もあまり活躍しない。


みんなを引っ張るようなヒーローも存在しない。


2012


そして、人類存続の望みを今や大国並みに経済成長を遂げた中国に託す。


時代は変わったんだなぁーって思った。


でもね、結局、地球滅亡から逃れられるチャンスを得る国は、
先進国ばかり。


“残りの国はいいんですか!?”っていう突っ込みを入れたくなった。


国でなく一個人レベルで言うと、
生き残れるのは、博士など明らかに社会に貢献できる人たちと大金持ちのみ。


エメリッヒはアメリカ万歳!から資本主義万歳!に移行したようだ。


というのは冗談として、
とにもかくにも映像は本当に凄いです。


2012


テレビだけでなく、PCやiPod、DSといった小型デジタル機種、
更には携帯端末で映画が視聴可能な時代だからこそ、
映画業界にとってこの『2012』の存在は意義深い。


本作のキャッチフレーズは「これは、映画か?」だけど、
『2012』こそ、映画館の巨大スクリーンで見るべき映画だと思う。

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コメント (2)

まやかし:

早く観たいです。

この映画のコピー
「これは、映画か?」
は、はっきり言って真逆ですよね。

「これが、映画だ!」でしょ。

大スクリーンで見ないとダメな映画ですよね。

伊藤P:

>まやかしさん

コメントありがとうございます。
もうご覧になりましたか?


映画とはスクリーンで見るもの。


様々な環境で映画が見られる世の中になりましたが、
『2012』はそんな原点を改めて教えてくれる作品でもあると思います。


若者の映画館離れが深刻です。
『2012』みたいな映画に触れて、スクリーンで見る醍醐味を感じて、
映画館にまた来たいと思ってくれると良いのですが。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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