2010年04月06日更新

#471 『シャッター アイランド』


シャッター アイランド

『シャッター アイランド』

4/9よりTOHOシネマズスカラ座ほか全国にて
配給会社:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
(C) 2010 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.




精神を患った犯罪者だけを収容する孤島“シャッター アイランド”。
島内の鍵のかかった病室から、一人の女性患者が忽然と姿を消した。


事件の真相を探るべく、島を訪れた連邦保安官のテディとチャックは、
消えた患者の部屋から「4の法則」と題した暗号を発見する。


更に捜査を進めたテディとチャックは、次々と不可解な出来事に遭遇する。
“この島は何かがおかしい・・・”。


マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオが、
『ギャング・オブ・ニューヨーク』、『アビエイター』、『ディパーテッド』に続き、
4度目のコンビを組んだミステリー巨編。


スコセッシ監督のNY愛にイマイチついていけなかった『ギャング・オブ・ニューヨーク』。
ラストがチンプンカンプンでポカ〜ンとしてしまった『アビエイター』。
オリジナルの方が500倍良くできていると思う『ディパーテッド』。


ということで、あまり2人のコンビ作で、“これは!”と思う作品はないんだが、
『シャッター アイランド』は、4作品の中で一番楽しむことが出来た。


シャッター・アイランド


まず、密室から女性が煙のように姿を消すという取っ掛かりが良い。


しかも絶海の孤島で。


一体何故!?
どうやって!?って。


島で働く人たちは何かしらの秘密を共有しているような怪しさがあり、
必要以上に厳重な警備体制がなされた施設自体も不気味。
そして、嵐が襲来し、島は完全に外部と遮断されてしまう。


観客もテディとチャックと一緒に、
異様な孤島に拉致され、まさに孤立無援状態で危険な謎解きに参加させられる。


本作最大の売りであるその謎解きだが、
密室から女性が消えるトリックは、比較的アッサリと一旦は解明され、
後から出てきた謎や問題の解決へと物語はシフトチェンジしていく。


途中、誰を信じていいのか、何が正しいのか判らなくなるよう、
様々なミスディレクションが仕掛けられており、
見る者を翻弄する。


しかしながら、確信は持てないまでも「ひょっとしたら」という着地点が、
途中で見えてきてしまう。


確かに驚かなかったし、ガッカリもしたんだが、
“オチ”の先に描かれる物語には、かなり胸をえぐられた。


単なる謎解きミステリーで終わらせるのではなく、
重厚な物語をしっかり持ってくる辺りはスコセッシ監督らしい。


重厚といえば、レオナルド・ディカプリオの演技が重い。


シャッター アイランド


レオ様は、『ギャング・オブ・ニューヨーク』辺りからずっと重みのある役柄が続いている。


多分、スコセッシ監督との出会いが、
ディカプリオの役者としての成長に大きな影響を与えているんでしょう。


今回も凄惨な戦争体験と愛妻の死というトラウマに苦しみながらも、
それが捜査の原動力となるテディを熱演している。


テディと一体化出来るか否かが、本作最大のポイントで、
ディカプリオの演技がその責務を負っている訳だけど、
伊藤Pはテディに感情移入することが出来ました。


その他の出演者も演技派揃い。


テディの相棒チャックにはマーク・ラフォロ。


シャッター アイランド


相棒ではあるが、たまに混乱を招くような発言をし、
テディだけでなく観客を惑わすこともある人物だ。


マーク・ラファロは『イン・ザ・カット』、『コラテラル』、『ゾディアック』など、
刑事や捜査官役が多いんだが、今回もバッチリはまっていた。


島の医師たちを演じたベン・キングズレー、マックス・フォン・シドーは、
紳士的な振る舞いながらも、いかにも胡散臭くて精神的に追い詰めてくるし、
役柄はあえて触れないけど、
ジャッキー・アール・ヘイリー、イライアス・コティーズたちは、
もうビジュアルからして凄まじい。


シャッター アイランド


唯一、ビジュアルが綺麗で、見る側にとっても救いとなるはずのテディの妻、
ドロレスを演じたミシェル・ウィリアムズまでもが、おっかねぇ。


曲者俳優たちが作品に異様なテイストを持ち込んでおり、
『シャッター アイランド』の世界観に大きく貢献している。


才能豊かな役者たちが集まり、
スコセッシ監督は、喜々として本作を撮影したに違いない。


スコセッシ監督は、丁寧な演出で複雑に入り組んだ話に整合性を持たせるとともに、
時に67歳とは思えないエグイショットをインサートしてくる。


ナチス将校たちを銃殺するワンカットのシーンは衝撃的だし、
重傷患者が収容されている建物への潜入とかちょっとしたホラーだった。


それから見ている最中、音楽がやたらとヘビーだなって思っていたら、
元ザ・バンドのロビー・ロバートソンが担当していた。


スコセッシ監督はザ・バンドの解散コンサートの模様を収めた『ラストワルツ』を撮っている。


テディとチャックが島にたどり着いた際にかかるズゥーン、ズゥーンという音色が、
今でも耳に残っている。
“ロビーってこんな音楽も作るんだ”って、意外な一面を発見した。


シャッター アイランド


ミステリーのオチは賛否両論あるだろうし、
雰囲気で押し切ってしまう部分は否めないが、
細かい演出や痛切な物語と素晴らしい役者たちの演技が、その穴を十二分に埋めている。


一流のスタッフとキャストだからこそ成し得ることが出来る、
そんなプロの仕事がそこかしこに見られる作品。


個人的には140分弱。
十分楽しむことが出来ました。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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