2010年04月08日更新

#472 『第9地区』


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『第9地区』

4/10より丸の内ピカデリーほか全国にて
配給会社:ワーナー・ブラザース映画、ギャガ
(C)2009 District 9 Ltd ALL RIGHTS RESERVED.




28年前、南アフリカ上空に突如現れた宇宙船。
上空に浮かんだままのUFOを調べると、
そこには不衛生で弱り果てたエイリアンの群れが!


エイリアンたちは難民として地上に降り立ち、
ヨハネスブルクにある第9地区の仮設住宅に住むことに。


言葉の通じないエイリアンと市民の争いは絶えず、
第9地区がスラムと化したため、
超国家機関MNUは彼らを強制収容所に移住させる計画を立てる。


その現場責任者として選ばれたヴィカスは、
第9地区内の小屋を調査している最中に謎のウィルスに感染してしまう。


第9地区


ピーター・ジャクソンが、無名の俳優・監督を起用して製作し、
アメリカで大ヒットを記録。


更にはアカデミー賞作品賞を含め4部門にノミネートされ、
世界中を驚かせたSFアクション映画。


しかしながら、作品を見ればそんなミラクルも納得!


メチャクチャ面白いです!


こんなにもユニークな映画を見たのは、いつ以来か?
ひょっとしたら『マトリックス』以来かも!?


まず、物語はドキュメンタリー風に始まる。


本物のニュース映像を交えながら、
UFO飛来からエイリアンと人間の紛争を描き、
ヴィカスのセルフインタビューや、人々の証言映像をインサートしていく。


勿論、フィクションだけど、
南アフリカは実際に難民、スラムといった問題を抱えているので、
突飛な内容でありながらも、作品にリアリティを与えることに成功している。


主人公であるヴィカスは巨大企業の平凡な社員だが、
自己顕示欲が強く、自分の地位を利用して権力を行使しようとする。


第9地区でエイリアンたちに対してとる態度は傲慢で、
とても共感なんて出来ないような人物だ。


第9地区


ヴィカスは謎のウィルスに感染し、体に異変が現れ始め、
MNUから追われる身となってしまうが、同情なんてまるでしなかった。


しかし、第9地区に逃げ込んで、
クリストファー・ジョンソンと名乗るエイリアンとその子供と行動を共にし始めて以降、
その気持ちは90度、そして、最後には180度変わってしまう。


また、本作の宣伝方針でエイリアンのヴィジュアルは隠されているが、
気持ちが悪くて、不快に感じる容姿をしている。


でもヴィカス同様、エイリアンたちの心情が徐々に明らかにされていくにつれ、
エイリアンに対する嫌悪感は段々と薄れていく。


悪い印象を良い印象に変えて、感情移入させるという手法はよくあるんだけど、
この作品の場合、急激ではなく段階を踏んで変化させていくので、
見る側も違和感なく、スムーズに気持ちを切り替えることが出来る。


この構成力と演出は上手いと思った。


物語自体もまるで先が読めない展開。
クライマックスなんてあまりに予想外で、「こうきたか!!」と歓喜したほどだ。


第9地区


そして、娯楽映画ながらも、アパルトヘイトや先述の難民、スラムなど、
南アフリカ特有の問題をきちんと浮き彫りにさせる社会派の要素もしっかりとある。


もっと言えば、南アフリカの問題を描きながら、
世界中の国々が抱えている問題さえも照射してしまうパワーを持ちえた作品だと思う。


で、最後にどうしても言いたいことがある。


多分、『第9地区』を見たいと思う人は、男性が多いでしょう。
見たいと思う女性もいるだろうけど、普段あまり映画を見ないような女性が、
興味を引く内容だとは思えない。


スターは出ていない代わりに、気持ちの悪いエイリアンが出てくるSF映画で、
グロテスクで残酷なシーンもたくさんある。


しかしながら、本作の根底に流れるテーマは“友情”と“愛”だ。


ヴィカスとクリストファー・ジョンソンの友情。
クリストファー・ジョンソンとその子供の家族愛と故郷への愛。


そして、何よりも泣かせるのがヴィカスの奥さんへの愛だ。


詳しくは書かないけど、
クライマックスの爽快感の後に、ある感情が湧き上ってきた。


それは多くの女性にも感じ取ってもらえるものだと思う。


本当にユニークで、独創的で、
様々な感情を喚起させてくれる素晴らしい作品です。


因みに、おすぎさんは本作を早くも2010年ナンバーワンに挙げておりました。


■『第9地区』
シャルト・コプリー(ヴィカス役) インタビュー テキスト

第9地区 シャルト・コプリー


第9地区

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コメント (2)

まやかし:

旅行に行ったときに国際線の中で見ました。
もともとSFマニアなので、最初から興味を持ってみましたが
前評判はまったく知らなかったので、まっさらの状態で見れました。

面白いです。

アカデミーも当然ですね。

ところで、伊藤Pさんの上記コメントで、ひとつだけ抜けているところがあります。

この映画はメカオタクの人にも充分楽しめます。
特に後半のクライマックスに向けての主人公の活躍ぶりは
ガンダムかボトムズか!という感じです。

本当に重いテーマやメッセージがあって
しっかりと伝わってくるのに
見終わったときは、すこし笑えるし
「いい映画見たな〜」ってすがすがしい気分になれました。

こんなSF映画は、たぶん過去に例がないのではないでしょうか?

伊藤P:

>まやかしさん

こんにちは。伊藤Pです。
コメントありがとうございます。


>この映画はメカオタクの人にも充分楽しめます。
>特に後半のクライマックスに向けての主人公の活躍ぶりは
>ガンダムかボトムズか!という感じです。


よく判ります!
ここの部分はあえて書きませんでした。


“クライマックスなんてあまりに予想外で、「こうきたか!!」と歓喜したほどだ。”
というのがこのメカの部分なんです。
見る前は全くこんな展開を予想していなかったので、嬉しい意外な展開に大・大・興奮しました。
ですので、これから見る方々にも同様の感動を感じて欲しくて、詳しく書きませんでした。
この大活躍が“クライマックスの爽快感”で、その後に来る対照的な“落差”がまた泣けますね。


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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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