2010年11月18日更新

#532 『黒く濁る村』


黒く濁る村

『黒く濁る村』

1/20丸の内TOEI、シネマスクエアとうきゅうほか全国にて
配給会社:CJ Entertainment Japan




長年会っていなかった父の訃報を聞き、
父が暮らしていた村にやって来たユ・ヘグク。


父の死に疑問を感じ、暫く村に滞在することにしたユ・ヘグクは、
村全体が秘密の闇を抱えていると察知し、その秘密を暴こうとするが・・・。


ちょっと前だと『殺人の追憶』、最近だと『チェイサー』『母なる証明』など、
多くの秀作クライム映画を世に送り出して来た韓国。


韓国クライム映画の良い点は、サスペンスやミステリーの面白さに加え、
人間の暗部に鋭く切り込んでくる点。


本作もその部類の作品と推測でき、当然そこに期待したんだが、
残念ながら先に挙げた作品のレベルにまでは到達していなかった。


まず、調査に乗り出したユ・ヘグクは、村で生死に関わるようなかなり危険な目に遭うが、
ユ・ヘグクは執拗に秘密を暴こうとする。


黒く濁る村


何故、幼い頃に生き別れ、絶縁状態だった父親の死因に、
そこまで執着するのかが分からない。


これが最愛の父だったら話は別だけどね。


ユ・ヘグクの立場や信念に共感できなければ、
いくらユ・ヘグクが窮地に陥っても他人事で終わってしまう。


また肝心の村の秘密も微妙。


止むを得ない事情で隠さなければならなくなった秘密、
哀しき愛憎が絡んだ秘密、あるいは究極の選択を我々に投げかける類の秘密だったら、
「おぉ!」と思うのだが、そんな秘密ではない。


その秘密を隠そうとする村長や取り巻きは、最新から如何にも怪しいし、
人数も少ないから「コイツらがなんかしたのね?」って、すぐに落ち着いちゃう。


黒く濁る村


村自体もあまり不気味じゃないんだよね。
出入りも自由だし。
『シャッター アイランド』ぐらいの排他的な閉塞感と気味の悪さが欲しいところだ。


どれもがもうひと押し足りない。
話があまりディープではないので、
鑑賞後、真っ先に「2時間41分使って語る話じゃない」と思ってしまった。


黒く濁る村


それでも2時間41分という長丁場、飽きることなく見ることが出来る。


秘密がラストに明かされ、その秘密が想定内に収まっているから、
意外性がなくて、「あれ?」ってな感想に陥ってしまうのだが、
そこまで一気に持っていってしまうパワーはある。


更にユ・ヘグク役のパク・ヘイル、村長を演じたチョン・ジェヨンを筆頭に、
役者もみんないい味を出している。


多分、普通に考えたらそれなりによく出来た作品なんだろうけど、
鑑賞後に物足りないと感じてしまうのは、
他の韓国クライム映画の出来が良すぎるというのあると思う。


韓国映画のレベルの高さを再認識した。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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