2011年07月14日更新

#598 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』


7/15より丸の内ピカデリーほか全国にて
配給会社:ワーナー・ブラザース映画
(C) 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.HARRY POTTER PUBLISHING RIGHTS (C) J.K.R.HARRY POTTER CHARACTERS, NAMES AND RELATED INDICIA ARE TRADEMARKS OF AND (C)WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.




2001年に製作されたシリーズ第1弾『ハリー・ポッターと賢者の石』から10年。


ファンタジー映画史上、いや、映画史上類を見ない大成功を収めたシリーズが、
遂に完結する。


2000年の秋、以前勤めていた映画宣伝代理店を辞める際、
当時ワーナー・ブラザースの宣伝部次長だったSさん(後に部長、現在は松竹)から、
「今、辞めるなんてもったいない。来年凄い映画が来るから」と言われた。


その凄い作品が、『ハリー・ポッターと賢者の石』だった。


Sさんの仰るとおり、J.K.ローリングのベストセラーを実写映画化した『ハリー・ポッターと賢者の石』は、
実写洋画作品としては『タイタニック』の262億円に続く、
史上二番目の成績となる203億円の興行成績をあげ、
社会現象を巻き起こした。


あれからもう10年か・・・。


時が経つのは早いものです。


続く、2002年に公開されたシリーズ第2弾『ハリー・ポッターと秘密の部屋』、
2004年の第3弾『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
2005年の第4弾『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』も、
それぞれ173億円(洋画歴代3位)、135億円(洋画歴代8位)、110億円(洋画歴代15位)というメガヒットを記録している。
(全て2011年7月時点の成績)


しかしながら、世の中のフィーバー振りと逆行するように、
わたくし伊藤Pは、かなりこのシリーズに対して冷めた目で見ていた。


それは1作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』を見た時からそうだった。


児童小説の映画化だから仕方がないのかもしれないが、
話が幼稚だと思ったし、
話の展開も意味不明なところが多々あった。


大きなチェスの駒にまたがって、「ワッー!ギャー!」やられても・・・。


原作を読んでいない人に対してあまりにも不親切な作りなのも気になった。


それは1作目に限らず、後の作品に対しても同様で、
やっぱりお子様ランチであり、あまり面白いと思えなかった。


新作を楽しみにするようなこともなく、
仕事じゃなければ途中で見続けるのを中断していたかもしれない。


しかしながら、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(07)で、
マイナスな見方が一転した。


いきなりダークな世界へと突き進み、
子供が見たらびびるんじゃないの?ってな展開に。


そして、原作を読んでいなくてもあまり混乱しない内容に大満足。


それを受けて、シリーズ初となる“期待”という感情を胸に見た『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(09)。


だが、ダークな部分とくだらない恋愛パートが混在した中途半端な内容だったうえ、
また、説明不足で原作を読んでいない人には辛いという悪しき風習に逆戻り。


オーマイ!ガット!!


でもシリーズ最終章の前半となる『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』(10)が、
再びこのシリーズへの期待感を引き戻してくれた。


本作はシリーズ屈指の根暗さを誇る。


暗い。とにかく暗い。
スリリングで、どこか落ち着かず、悲壮感バリバリだ。


2部作ということで、“これから!”ってところで終るが、
それはつまり次回作への期待が、更に膨らむということだ。


原作を読んでいないから、物語の結末も当然知らないわけで、
より楽しみが増す。


当然のごとく、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』は、
シリーズの中で、最も“早く見たい!楽しみだ!”と思った作品だ。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2


なんだかんだと文句タレながらも10年間付き合ってきた。
最終章にたどり着いたという達成感もある。


でも、そんな感傷を廃し、
あえて、作品単体で見ると、
後発の後乗り型似非(えせ)ファンであり、原作を読んでいない自分にとって、
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』は、残念な作品だった。


ネタバレになるからあまり詳しくは書けないが、
とにかく盛り上がれなかった。


ハリー、ロン、ハーマイオニーが、
もっと結束して、協力しながら戦うと思ったらあまりそうでもない。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2


いや、一緒に戦わなくても良い。
それぞれが、宿敵となるしかるべき相手と戦ってくれたら良い。


ハリーは当然、ヴォルデモートだ。


では、ロンとハーマイオニーは?


今までの流れで行くとハーマイオニーは、絶対にベラトリックスでしょう。


ロンは良くわからんが、それ相応の大物をあてがうか、
ベラトリックス戦でハーマイオニーをサポートすれば良い。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2


そして、この3人のうちの誰かを失うような(まぁ、ハリー以外が妥当)、
最終章の最後の最後に相応しい悲劇的な窮地に追い込まれ、
でも、ハリーは、多くのものを失いながらも、
不屈な精神と仲間の協力によって危機を脱し、
遂に勝利を得るというカタルシスを期待していた。


それが全くなったか。


なぜ、あのキャラクターが、あっけなく死ぬ。


なぜ、あのキャラクターが、こいつに殺される。
こいつじゃなくて、あいつに殺されるべきだろう。


いきなり脇役大活躍ですよ。


仲間の助けを借りた総力戦という見方も出来なくないが、
全部が唐突。


ヴォルデモート軍団がホグワーツに攻め込んできて
マギー・スミス演じるミネルバ先生を筆頭に先生たちが戦うってなった時は、
「おぉぉ!!!!!」と興奮したんだけど
ただ杖をふっているだけで、個々の戦いが一向に盛り上がらない。


戦い自体にドラマがないからだ。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2


原作では語られているんだけどねぇ・・・
という言い訳はもう聞き飽きた。


原作を読んでいる人たちは無意識的に、
省かれている部分を補うことが出来ると思うが、
読んでいない人はそれが出来ない。


映画と原作は別物だ。


原作がこれほどまでに有名じゃなかったら、
映画はここまで成功しなかったんだろうけど、
その反面、このシリーズって原作に忠実であることが、
かえって足かせになっているんじゃないのか?って思ってしまった。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2


あと、もう一つ楽しみにしていたのが、
ハリーの父親とスネイプスの因縁。


どの作品だったか忘れたが、
若きスネイプスが、ハリーの父親にいたぶられているシーンが、
一瞬だけあった。


実はハリーの父親は、とてつもなく嫌な奴だったのでは?という、
意外な展開を期待していたんだが、
あまりハリーの父親とスネイプスの関係は、本作で語られなかった。


その代わりにハリーの母親とスネイプスの関係が、
しっかりと描かれるんだが、
オイラとしてはハリーの父親の部分もしっかり語って欲しかった。


勝手に期待していた自分が悪いんだけど、
全てにおいて予想していた展開とあまりに違っていたので、
大分がっかりでございました・・・。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2


でもね、そうは言っても、
もしも『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』まで見ているのであれば、
やっぱり最後なんで、見ないとダメでしょう。


見た人それぞれに思い入れ、思い出があり、
当然、それぞれの感じ方があるわけだから。


『ハリー・ポッターと死の不死鳥』以降の世界観は、
映像的には継承されていて良かったし、
もちろん、VFXも素晴らしかったです。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2


最後に3Dに関して。


今回の3D形式は、XpanD。


嫌いな3Dだが、今までの教訓を生かして一番後ろの席で鑑賞したからか、
あまり疲れなかった。


でもやっぱり暗い。


ヴォルデモートがホグワーツに攻め込んでくるシーンとか、
真っ暗で何にも見えませんでした。


そして、隣に座ったオッサンが鑑賞中、
やたらと肩を揉む。


同じく3Dによる肩こりに悩まされているので、
気持ちは良くわかるが、それをずっとやられるとちょっと辛いっす。


更に少し離れた席から、
終始、ビニールのガサガサ音が。


更に更に、多分、配給・宣伝の方々だと思うけど、
途中で出たり入ったりがあり、
一番後ろの席だから、扉を開けた際に発せられる入り口の明かりが、
メガネの内側に反射して、何度か鑑賞の妨げになった。


3D鑑賞にはこんなストレスも伴うのだと、
初めて知った。


などなど、見た環境もあまり良いとはいえなかった。


ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2
映画館で迷惑行為をする奴はインペディメンタしちゃうぞ!


と、こんなことを書いておきながら一言。


この作品に携わってきたキャスト、スタッフ、
さらには配給・宣伝の仕事をしてきた人たちにとっては、
自分なんかよりももっともっと深い、深い感慨があることでしょう。


本当にお疲れ様でした。


そして、自分なんかよりも本シリーズを熱心に応援し続けて来たファンにとっても、
この10年間、様々な思い出があるでしょう。


多くの人たちにとって、
きっと生涯忘れることの出来ない思い出のシリーズになったことでしょう。


「ハリー・ポッター」シリーズは、ひとまず完結しましたが、
スピンオフなんぞも今後出てくるのではないでしょうか?


J.K.ローリングはきっとまだまだ稼ぎます!!!

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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