2012年02月09日更新

#644 『ドラゴン・タトゥーの女』

ドラゴン・タトゥーの女


『ドラゴン・タトゥーの女』
2012年2月10日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


冬のスウェーデン。
ジャーナリストのミカエルは、かつての経済界の大物一族の長ヘンリックから、
40年前に起きた16歳の娘ハリエットの失踪事件の謎を解いて欲しいという依頼を受ける。


閉鎖された島で起きたその失踪事件に興味を抱いたミカエルは、
情報収集能力に長けた天才的ハッカーで、
身体にドラゴンのタトゥーを入れた女リスベットを助手として迎える。


やがて2人は調査を進めるうちに、一族の忌まわしい過去を知ることになる・・・。


2005年に作家スティーグ・ラーソン(故人)が発表した小説「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」。


スウェーデンで刊行されるや否や、売れに売れ、
続いて2弾、3弾が出版され累計360万部のベストセラーとなった。


その後、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、日本など46カ国でも刊行され、
現在までの発行部数は6500万部を越えているという。


2009年にはスウェーデンで3部作が映画化され、日本でも劇場公開されている。


生憎、原作も読んでいないし、スウェーデン版映画3部作も見ていないが、
デヴィッド・フィンチャー監督、ダニエル・クレイグ主演でリメイクとなれば、
やっぱり興味をそそられる。


ダニエル・クレイグ


逆に今まで触れてこなかったからこそ、
「誰がハリエットを殺したのか?」という物語を大いに楽しめるはず。


で、見たのですが、
まず『ソーシャル・ネットワーク』でオスカーを受賞したトレント・レズナーとアッティカス・ロスが、
オルタナバンドのヤー・ヤー・ヤーズのヴォーカルであるカレン・オーにカバーさせた
レッド・ツェッペリンの「移民の歌」(ブルーザー・ブロディの入場テーマ)で幕を明けるんだけど、
まぁ、カッチョ良いですねぇ。





サウンドプロダクションも良くて、ド頭からガッツーン!!ときました。


フィンチャーは、『セブン』とかでもオープニングを凝りまくっているし、
元々ミュージッククリップを監督してきた人なので、やはりセンスが良い。
(因みに劇中、ナイン・インチ・ネイルズのTシャツを着ているキャラが登場する)


オープニングが明けると、そこから物語に一気に引き込まれた。


が、しかし、途中から少々混乱をきたした。


ヘンリック一族の人間関係が大きなポイントになってくるんだけど、
とにかくその人数が多くて、誰が誰やら・・・。


原作を読んでいないとダメなんっすか?って。
これじゃ「ハリー・ポッター」と一緒じゃんか。


ドラゴン・タトゥーの女


また、謎解きの肝の部分が、セリフだけで済まされているところもあり、
人間関係と人物名をきちんと頭の中で整理しておかないと追いつけない。


DVDとかで見ていたら、間違いなく巻き戻していただろうなと思うシーンがたくさんあった。


まぁ、読解力と映画を見る力がないだけじゃないの?って言われてしまえば、
それまでなんですけどね・・・。


とはいえ、原作を読んでいない人、スウェーデン版を見ていない人は、
少しだけ人間関係を予習しておいた方が良いかもしれません。


スウェーデン版を見ていた友人の光武蔵人監督は、
「スウェーデン版横溝正史」という表現をしていたんだけど、
言い得て妙だと思う。


それぐらい複雑です。


あと本作のもうひとつの重要要素であるミカエルとリスベットの人間関係が、
いまいちピンッときませんでした。


ドラゴン・タトゥーの女


あれだけ人を信用しないで、自分で自分を守りながら生きてきたリスベットが、
いとも簡単にミカエルに好意を寄せるのは、なぜざんしょ?


おいら、どっかの重要なシーンを見落としているのか!?


でもって、よーく考えると、そもそも物語に無理ない?って。


ハリエットが失踪してから40年間、毎年ヘンリックの誕生日に押し花が贈られくる。
押し花はハリエットがいつもヘンリックに贈っていたプレゼント。


1回だけならまだしも、毎年40年もの間、送り続けられているわけでして、
ヘンリックの財力と人脈を使ったら、その送り主ぐらい簡単に突き止められるんじゃないのって?


まぁ、見ている最中は全くそんなこと気が付かないで、
ミカエルやリスベットと一緒になって、事件の真相を追っていましたが・・・。


ちゅうことで、『ゾディアック』以降、
奥行きのある素晴らしい作品を世に送り出してフィンチャーにしては、
ボチボチな感じだったのですが、そうは言っても見るべきところはもちろんたくさんありました。


ドラゴン・タトゥーの女


先ほど謎解きの肝心な部分をセリフのみで説明したと書きましたが、
逆にセリフを極力排し、パソコン上に映し出される写真や過去の新聞記事などから、
事件の真相に迫るシーンもたくさんあった。


日本の娯楽映画にしばし見受けられるような、
わざとらしい説明台詞を極力使用しないようにしている。


こういう映画的なアプローチは大好きだ。


あとフィンチャーらしいこだわりの映像がよい。


レッド・デジタル・シネマカメラ・カンパニーの「レッドワン」と「エピック」という
多機能・高解像度デジタルカメラを使用しているそうで、とにかく美しい。


ドラゴン・タトゥーの女


凍てつくスウェーデンの光景が、見ていて本当に寒そうだし、
ある場所にある人が監禁されるシーンの寒々しさといったら・・・恐怖です。


ミステリアスで、緊迫感が続くのは、この映像によるところが大きいと感じた。


シーンや場所によって色の使い方も変えていて、
そのメリハリの付け方も、定番かもしれないが、やっぱり上手いと思う。


そして、役者たち。
ダニエル・クレイグが器用で、男も惚れるほどかっこよくて、
感情移入を促してくれる役者であることは、既にわかりきっていることだけど、
改めて良い俳優さんだなぁーって思った。


そんなダニエル・クレイグと向こうを張るヒロイン・リスベット役のルーニー・マーラーは、
大熱演。


ドラゴン・タトゥーの女


その凄さは見てもらうのが一番。


リスベットの様々な一面を演じきる演技力も凄いのですが、
大胆なシーンにもチャレンジしている。


小生はこの作品を完成披露試写会で見てまして、
この時に上映されたバージョンは、R18バージョン。


劇場では、刺激的なシーンをカットだか修正をして、R15+版で公開される。


どのシーンがどうカット・修正されているのかはわからないけど、
多分、あのシーンなんだろうなぁ・・・。


そのシーン以外でも、チョイチョイとエグイシーンが出てくるので、
苦手な方は気をつけてください。


でもそれを理由に見ないのはもったいないです。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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