2013年03月01日更新

DVD#026 『ハイ・フィデリティ』

highfidelity.jpg


『ハイ・フィデリティ』
ブルーレイ
発売中
2,381円(2,500円税込)
発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)TOUCHSTONE PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED


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先週、メタル好きの野郎飲みをした。


面子は、本ブログに度々登場するメタル無頼漢・佐藤アサトの大学時代の友人で、
2011年のデフ・レパードの来日公演を一緒に体感したNさんとKさん。


この2人は「メタルの輪」という記事にも登場している。


生憎、佐藤アサトは仕事のため不参加となったのですが、
佐藤アサト抜きでもメタル談義に花が咲いた。


そして、その際に『ハイ・フィデリティ』という映画の話になった。


本作は、中古レコード・ショップを経営している音楽オタクで恋愛オンチの30代独身男、
ロブ・ゴードンが主人公。


ある日突然、同棲中の恋人ローラが、理由も告げずに出て行ってしまう。


過去の恋愛においても、ロブは女性から捨てられ続けてきた。


自分が経験した辛い失恋トップ5を挙げ、
昔の彼女たちに「自分の何が問題だったか」を問いただし、
ローラの本当の気持ちを理解しようとするが…。


というダメ男の話なんだが、
ロブは、自選の曲をカセットテープに入れてプレゼントするのを趣味としている。


これは昔、自分もよくやっていた。


佐藤アサトも同じようなことをしていたと過去に語っていたんだが、
彼はカセットテープからCDにメディアを変え、
未だにメタルコンピを作っては、我々メタル野郎どもに配ってくれる。


先日もSEX MACHINGUNS、陽炎座、VOWWOW、X JAPANといった
ジャパニーズ・メタルのコンピCDをもらった。


この手のバンドをあまり聴く機会がなかったので、
今回のコンピCDのお陰でその魅力を知るに至った。


そんなメタルコンピCDの話の流れから、
『ハイ・フィデリティ』に行き着いたのですが、
NさんもKさんも未見とのこと。


『ハイ・フィデリティ』にはメタルの話はあまり出てこないが、
音楽ネタはたくさん出てくる。


Nさん、Kさん共にメタル以外の音楽にも造詣が深いし、
同世代なので、音楽だけでなく、『ハイ・フィデリティ』のほかの要素でも、
響くんじゃないかと思い強く推薦した。


しかし薦めては見たものの、小生が『ハイ・フィデリティ』を見たのは、随分前。
薦めた手前、「改めて見ておかなくては」と思い、
家にあったDVDを引っ張り出してきて久しぶりに鑑賞した。


つい最近の作品のような気がしていたんだが、
何気に2000年の映画。
もう13年も前なんですね。


初めてみたのは確か、2002年ぐらい。


その時は、ジョン・キューザック演じるロブと自分が大いに重なり、
「ロブの中に俺がいる!!!」とメチャクチャク共感したのを今でも覚えている。


恋愛が下手で、ふられてばかり。
でも実は自分の方がふっていることもある。
そんなことに気付かず、自分で自分にダメ出しをし続け、劣等感を蓄積していく。


自信がないくせに自己顕示欲は強く、無意識のうちに持論を他者に強要してしまう。


自家製コンピアルバムを作り、好きな人にプレゼントするという行為も、
実は自分の口から気持ちを伝えられない自信の無さの表れであり、
この曲を聴いてくれという自己顕示欲のひとつだったりする。


明らかに自分より地位が高いと思われる人たちや、
同属と思えない人たちとは交われない。


屈折していて、ひねくれていて、穿った角度から物事を見る傾向がある。


辛い失恋ベスト5はやらないにしても、
好きなアルバムベスト5とか、好きなギタリストベスト5とか、
好きなギターソロベスト5とか、好きなおニャン子クラブのメンバーベスト5とか、
なんでもベスト5とかカテゴリーごとにまとめたがる。


アルバムを几帳面に整理整頓する。
収集癖がある。
ウンチクをたれる。


などなど、ジョン・キューザックみたいにカッコ良くないけど、
ロブの中に己を多く見出した。


しかし、10年前と今を比べると自分を取り巻く環境は、大きく変わっている。
多分、考え方や感じ方も変化しているはず。


果たして、『ハイ・フィデリティ』を今見てどう感じるのか?
共感できるのか?


そんな興味を抱きながら見始めたのですが、
結果は、10年前とあんまり変わらず。


ラストの方で、少し泣きそうにさえなった。


同じように共感できたってことは、自分は成長していないってことか!?
と一瞬思ったりしましたが、そんなことはなくて、
『ハイ・フィデリティ』で描かれているロブという男が、自分の中で普遍なのです。


一度でもロブに感情移入できたのならば、永遠にロブの中に自分を見出せる。


前回見て共感した部分は、今と考え方が違っていたり、
自覚してやらなくなったりしたとしても、
過去の自分の実体験があってこその共感なのだから、何年経っても消えることはない。


一方で、この10年間での実体験がもたらした新たなシンパシーもあった。


ラスト近くで味わった幸福感は、10年前に感じたものとは明らかに異なった。


多分、10年後に『ハイ・フィデリティ』を見直したら、
また新たな共感が生まれるんだと思う。


年齢を重ねても寄り添えるそんな作品だ。


さて、先述の通り、ロブは、カセットテープに自分のオススメソングを入れる。
その際に「自分の気持ちを他人の曲に委ねて伝える!」「曲順も大切だ」と語る。


かつて小生がコンピカセットテープを作成していた時、
ロブと同じように選曲、曲順には大いにこだわった。


カセットテープだから、オンタイムで音楽をかけながら録音しなくてはならない。
よって、60分ぐらいデッキの前にはりつけ状態となる。


全体を貫くテーマを決めた後、頭の1、2曲目をチョイスした後は、
ジャンルごとにアルファベット順に並べているCDラックとにらめっこして、
これだ!というアルバムを取り出して、選曲していく。


アップテンポの曲を2曲続けたら、次はバラードを入れて、
その次はミドルテンポの曲・・・というような感じ。


適当にアルバムを選んで、飛ばしながらテーマ、曲順にマッチする曲を選ぶこともあり、
今まであまり気にも留めていなかった曲が、好きになったりもした。


夜、酒飲みながら作ったりすると、
なんだかとんでもなくメロウなものが出来上がっちゃって、
翌朝、選曲を見て恥ずかしくなったりなんてこともあったなぁ。


あと、テープの残量を限りなく減らすことにもこだわった。


A面が終わって、すぐにオートリバースでB面に切り替わることで、
早送りをする手間が省けるし、流れを継続することが可能となる。


B面からA面への移行もスムーズにすれば、
丹精込めて作ったカセットテープを繰り返し聴いてもらえるかもしれない。


よって、残りの収録可能時間を考えて曲を選んだ。


たまに失敗して、曲の途中でテープが終わっちゃったりして、
違う曲を入れ直したりなんってことも多々あった。


そんな苦労を楽しみに変えながら、丹精込めて一生懸命、
コンピカセットテープを作って、友達や好きな人にあげた。


そのテープはまだ、その人たちの手元にあるのだろうか?


今の時代はパソコンでコンピCDをものの数分で作れてしまう。


便利といえば便利なんだが、
カセットに比べると淡白で作り甲斐がない。


利便性を追求した結果、
なにか大切なものを失っているのでは?と思ったりして・・・。


『ハイ・フィデリティ』が製作された時代、すでにCDはあったけど、
カセットテープはまだ現役だった。


しかし、13年後の今、カセットテープは化石となっている。
カセットテープの存在すら知らない子供たちもたくさんいるんじゃないか?


時代の流れの速さに一抹の寂しさを覚える。


AXIA、TDK、マクセル、DENON、ノーマル、ハイポジ、メタル・・・。
今は無き吉祥寺のラオックスでまとめ買いしたなぁ〜。


バイトをしてハイポジ、メタル対応のミニコンポを買ったときは、歓喜だった。
パイオニアのセルフィー(因みに未だに現役)。


ワープロがない時代は、アルファベットのレタリングシールを買ってきて、
ごしごしと擦って、カセットラベルにタイトルをつけたりした。


Eとかすぐなくなるんだけど、XとかZはあまりなくならない。


雑誌「FM STATION」には、
わたせせいぞう風のカセットラベルのオマケがついてくるので、よく買った。


うーん、懐かしい。


そんな思い出を引き出してくれる『ハイ・フィデリティ』。


やっぱり好きですネェ。


本作のエンドロールにかかるのは、
スティービー・ワンダーの「I Believe (When I Fall In Love It Will Be Forever)」。


『ハイ・フィデリティ』のラストに流れるに相応しい曲だ。


この曲が収録されているアルバム「トーキング・ブック」を久しぶりに聴きました。
このアルバムは・・・とウンチクを垂れそうになるのを我慢しつつ・・・。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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