2013年05月09日更新

#699 『フッテージ』

フッテージ

『フッテージ』
2013年5月11日よりヒューマントラストシネマ渋谷、ユナイテッド・シネマほか全国にて
配給:ハピネット
©Alliance Film (UK) Limited All Rights Reserved


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スランプに陥っているノンフィクション作家のエリソンは、
一家首吊り殺人事件をテーマにした新作執筆のため、
事件現場となった家に妻と2人の子供を連れて引越してきた。


引っ越して早々、エリソンは、屋根裏部屋で古びた映写機と5本の8mmフィルムを発見する。
それらの“フッテージ”には、この家で起こった首吊り殺人に加え、
時代も場所も異なる家族たちの凄惨な殺害現場が映されていた。


そして、エリソンは、それぞれ全ての映像に、不気味な仮面の男と、
犠牲者の血しぶきで描かれた記号が写り込んでいることに気付く。


この“フッテージ”をもとに、再びベストセラーを出したいという野心も相まって、
エリソンは次第に事件の謎に取り憑かれはじめる・・・。


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『グレイヴ・エンカウンターズ2』以来となる久しぶりのホラー映画鑑賞ということで、
なんだか少しドキドキしながら見始めた。


そして、そのドキドキは映画が始まってからも継続した。


まず、いきなり本作の主役とも言える“フッテージ”を見せられる。
普通、もう少しじらさんか?と思いつつも、作品の世界に引きずり込まれた。


見てはいけない映像を見てしまうという点で、
なんか『リング』みたいだなぁーと思っていたら、
それもそのはず、本作の脚本家が『リング』を見た晩の夢にヒントを得たそうな。


その後も、断続的に“フッテージ”を見せつつ、
エリソンに降りかかる不可解な出来事を小出しにして、緊張感を維持。


特に前半は、ゆっくりと間を持たせ、ジリジリと攻めてくる。


何か凄まじいことが起きたりするわけでもないし、
視覚化におっかないわけでもない。


それでも、音やカメラアングル、カット割で恐怖を演出。
オーソドックスなスタイルだけど、最近ここまで正統派なのも珍しい。


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前半から中盤にかけて、かなりネチネチしている。
丁寧といえば、丁寧。


ネチネチと攻められ、劇中のエリソンは段々と憔悴していき、
“フッテージ”に収められていた事件にのめりこんで行く。


引っ越してきた作家が、次第に何かに取り憑かれるようになり・・・って
なんだか『シャイニング』に似ているなぁ〜と思っていたら、
それもそのはず、製作陣は意識的に『シャイニング』に近づけたそうな。


『リング』×『シャイニング』なわけですが、
このほかにも『悪魔の棲む家』といった70年代のオカルト映画のテイストが盛り込まれている。
これも意図的にそうしたという。


『リング』、『シャイニング』、『悪魔の棲む家』は、
科学では説明できない超常現象を扱っている点が共通している。


『フッテージ』もその類なのか?と思いつつも、
“フッテージ”に記録されている殺人シーンは、
呪いによるものではなく、溺殺、焼殺、刺殺、轢殺といったリアルな殺人だ。


それ故に、もしかして、『フッテージ』は、超常現象ではなくて、
科学的、物理的に説明がつくような殺人ホラー・ミステリーものかな?とも思わせる。


でもやっぱり、エリソンを襲う不可解な現象は、オカルトじみている。


科学的に説明できる類のもの(大槻義彦教授派)と
超常現象(宜保愛子派、または江原啓之派)とが共存していて、
その真ん中を突き進んでいくところが、この作品の魅力のひとつだ。


大槻義彦教授派なのか、宜保愛子派なのかは、
中盤以降、明確になるんだけど、どちらが良いかは好みの問題でしょう。


監督は、『エミリー・ローズ』のスコット・デリクソン。


scot.jpg
監督作『地球が静止する日』で来日した際のスコット・デリクソン監督


実際にアメリカで起きた悪魔祓いの事件をもとにしたホラーテイストの強い法廷サスペンスで、
この作品も大槻教授と宜保愛子が同居しており、こういうテイストが得意なのかもしれない。


『エミリー・ローズ』で来日した際に、
インタビューしたんだけど、哲学の勉強をしていたと言っていた。


さらに『地球が静止する日』でも取材しており、その時は、
“人間は良い方向に変容する前に、混乱状態を引き起こし、それが変化のキッカケとなる”
と監督の哲学的な人間観を語っていた。


この考えは、『フッテージ』でのエリソンにも当てはまる。


あと『エミリー・ローズ』も『地球が静止する日』も
使う色を減らして逆に色を強調する手法を取っている。


『フッテージ』もブラックを基調にしていて、
時たま赤、黄色、橙色などが印象的に使われていた。


また、デリクソン監督は、黒澤明監督の影響から、
雨、霧、風といった天候を上手く用いて、演出効果を高めるようにしている。


今回も同様だ。


さらに役者のリアルな演技を追求するのも、デリクソン監督の手法。
(どの監督でもそうだと思いますが・・・)


主演のイーサン・ホークは、序盤、中盤、後半、クライマックス前・後と、
シーンごとに心理状況が異なるエリソンを見事に演じている


本作の舞台は、ほとんど家の敷地内で、その多くは室内だ。
後は車の中ぐらい。


観客を不安に陥れる“フッテージ”や、驚かす超常現象の仕掛けや演出があるけど、
限られた空間の中で、物語を牽引していくのは、エリソンに他ならない。


故にイーサン・ホークの演技が、とても大切になってくる。


撮影が順撮ではないことを考えると、結構、大変だったんじゃないかと。
(まぁ、プロ&ベテランですから、これぐらいチョロイのかもしれませんが・・・)


盲目になり、間違った方向に突き進んでいく主人公に、
見ているこちらはイライラする。


「そっちに行っちゃダメだよ!!!」と思わせるのは、ホラー映画の鉄則だけど、
主人公がバカだったりすると、「どーでもいいよぉ〜」となってしまう。


そこをそうさせないのが、イーサン・ホークの役目だ。


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ラストのオチは、「こんなもんかなぁ〜」というところではありましたが、
監督の作家性も出ているし、イーサン・ホークも良かった。


1時間50分というこの手のジャンルとしては、割と長めの上映時間であるにも関わらず、
一度も退屈することはなかった(しかもほとんど室内)。


この“退屈しない=どうでもよくならない”というのは、
自分の中ではプライオリティが高いのであります。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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