2014年09月26日更新

「スタープレイヤー」(恒川光太郎)

たまには本の紹介をしましょう。


2014年9月2日に発売された恒川光太郎「スタープレイヤー」。


starplyer_Rr.jpg


2001年3月、突然目の前に現れた男にくじを引かされ、
一等賞を当てた斉藤夕月(34歳・無職)。


フルムメアが支配する異世界へ飛ばされ、スタープレイヤーに選ばれた夕月は、
スターボードに入力することで「10の願い」を叶えることができる力を与えられる。


案内人の石松から説明を受けて衣食住を調えた夕月は、
私的な欲求を満たすために「10の願い」を消化するが、
ある日、マキオというスタープレイヤーと出会ったことで、
新たな世界を知り、かつて抱いたことのない意識が芽生え始める。


そして、夕月は、想像を絶する事態に身を投じることになる。


果たして夕月は、異世界で「10の願い」をどう使い、どのように生きて行くのか?


あらすじを読んで頂ければわかるかと思いますが、ファンタジーです。


眼精疲労で読書率低下中だが、
読書は好きで年間それなりの数の本を読んでいる。


しかし、どうもファンタジー小説ってのが苦手なんだよね。


ルールなしの何でもありな世界観になりがちだし、
非現実な世界だから頭の中にイメージが浮かび難く、
読み進めるのがしんどい。


故に触手が伸びないジャンルだ。


でもこの「スタープレイヤー」は、
そんなファンタジー嫌いをものの数ページで、本の世界に引きずり込んだ。


異世界が舞台なわけですが、、
なんとなく脳内シアターにイメージが浮かび読み易い。


「10の願い」が叶えられるが、
ちゃんとルールがあり、ご都合主義的な展開もない。


そして、何よりも物語が壮大で面白い。


本書の宣伝キャッチに「光と闇、生と死、善と悪、美と醜」とあるが、
まさにその通りで、表裏一体の事象を巧みに取り入れ、
物語に奥行きをもたらしている。


久しぶりに本を一気読みした。


ということで、オススメの一冊なわけですが、
“作家”恒川光太郎の存在を知ったのは、実は昨年のこと。


小・中の時の同級生と久しぶりに会い、
同学年の友達たちの近況を教えあっていた。


「S野は、立川のラーメン屋で働いている」
「S本は、外科医になった」
「H澤は、登戸で塾講をやっている」
などなど、懐かしい名前が沢山出てきた。


そして・・・、


友達「そうそう光太郎が作家になったのは知っているよね?」


小生「光太郎って、恒川光太郎?」


友達「そうだよ。恒川光太郎だよ」


小生「まじで?作家になったの?」


友達「数年前にデビューして、賞とかとっているよ」


恒川光太郎が、作家になっていたとは!


中学生の時の旧友、恒川光太郎は知っていた。
しかし、作家としての恒川光太郎は知らなかった。


本ブログの【散策の部屋】の「海」シリーズに、
Mッチという女性が度々登場します。


「海 2011」
「海 2012」
「海 2013」


Mッチは、かつて映画情報番組の制作に携わっていて、
小生が映画の宣伝マンをしていた頃に出会って以来、
もう10年以上の付き合いになる友人だが、今は某出版社に勤めている。


Mッチなら職業柄、恒川光太郎のことを知っているかもと思い、
すぐさま「恒川光太郎を知っているか?」とメールすると、
「知っているに決まっているじゃないの」という返信が。


「中学時代の同級生だった」と伝えると、
「それは驚き!というか、知らなかったの不味くない?」というお答え。


確かに!


早速、本屋へ行きデビュー作「夜市」を購入して読破。


第12回日本ホラー小説大賞受賞作だが、ホラー小説ではない。


ホラー的な要素もあるけど、怖くはない。


ファンタジー色もあるにはあるが、
そこまでファンタジーしていない。


ジャンル分けが難しい独特の世界観があった。


「夜市」も面白かったが、併録の「風の古道」はもっと良かった。


小金井公園、多摩湖サイクリングロード、
彼の母校である学校の近くと思われる場所が登場する。


なんとなく懐かしい、不思議な気分にさせてくれる。


「夜市」「風の古道」の幻想的な世界観は、
映画『雨月物語』を思い起こさせる。


恒川光太郎の頭の中には、こんな世界があったのか?
と、驚かずにはいられなかった。


第12回日本ホラー小説大賞を受賞した「夜市」以降も、
活動目覚ましく、山本周五郎賞に3度も候補になっている。


小生の同級生が山本周五郎賞の候補だよ。
スゲェー。


そして、今年「金色機械」で第67回日本推理作家協会賞を受賞。


マジでスゲェー。


まぁ、オイラは恒川光太郎の躍進に何も寄与しておりませんが、
中学時代の同級生が、作家として大活躍しているのは、
嬉しいし、誇りに思う。


恒川光太郎が気鋭の作家になっていて、
賞の常連ということに驚いたわけですが、
さらなる驚きが待ち受けていた。


なんとMッチが、「スタープレイヤー」のパブリシティ担当に!


なんという巡り合わせ!!


手元にある「スタープレイヤー」は、
Mッチから贈呈されたもので、恒川光太郎のサイン入り。


starplayersign_Rr.jpg


中学時代の旧友のサイン入り本を10年来の友人から貰うという、
なんとも奇妙なこととなりました。


Mッチは、「スタープレイヤー」の宣伝担当ですから、
当然、恒川光太郎とも会うわけでして、
その際に、小生のことを話したという連絡が。


そのことについて、恒川光太郎がブログに書いていた。


「コウタライン」


このブログに登場するMちゃんというのが、ワタクシです。


「伊藤一之なのにMちゃんってのはおかしいだろう」
とお思いになるかもしれませんが、
家庭の事情により、大学2年生の時に養子縁組をしまして、
当時Mの付く苗字から伊藤に変わったのでした。


「スタープレイヤー」にマキオという人物が登場するけれど、
ある一部の人からはマキオと呼ばれていたことがあったなぁ。


恒川光太郎は沖縄在住なので、
Mッチを介したとしても、中々会うことは出来ない。


しかし、いつの日か酒でも飲みたいものだ。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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