2008年09月06日更新

#274 『イントゥ・ザ・ワイルド』


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『イントゥ・ザ・ワイルド』


配給会社:スタイルジャム
(c) MMVII by RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC and
PARAMOUNT VANTAGE, A Division of PARAMOUNT PICTURES CORPORATION. All Rights Reserved.


ショーン・ペン監督作品というだけで見たくなるけど、
先に本作を見ていた知人より「ビシビシ来たよ」って言われ、さらに見たくなった。


裕福な家庭で育ち、大学を優秀な成績で卒業した22歳のクリスは、
全てを捨てて、誰にも言わずに旅に出る。
ルールに縛られず、新しく生まれ変わるために・・・


主人公が出会った人といろいろと話し、交流を持つというロードムービーで、
デイヴィッド・リンチ監督の『ストレイト・ストーリー』にちょっと似ている。


伊藤Pは『ストレイト・ストーリー』を“諭しの映画”と解釈しているのですが、
本作も旅に出た主人公が旅先で出会った人に「前向きな何か」を振り撒く。


しかも無意識のうちにね。


そして、見ている観客も主人公クリスと出会うわけでして、
どちらかというとクリスに自分を投影するのではなく、
クリスが旅先で出会った人たちに自分を重ねてみる感じでしょうかね。


伊藤Pと同じ様な境遇の人たちは出てこなかったけど、
今、自分の置かれている環境・状況が煮詰まっている部分もあり、
それは旅先で出会った人たちに通ずるものがあった。


だから、ちょっとだけクリスから力を貰いました。


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そうはいっても、全てを捨ててアラスカを目指すクリスの行動は、
若さが成せる技なのでしょう、
34歳のオッサンからみると“それで良いのか?”と思ってしまう部分もある。


逆に言えば、彼と同い年ぐらいの時に見たら、
どんな感想を持ったのだろうか・・・


多分、バリバリ共感したに違いない。


世代によって感じ方がだいぶ変わってくる作品なのかもしれないな。


クリスを演じたのはエミール・ハーシュ。
全世界で大コケした『スピード・レーサー』の時は、
“なんかパッとしねぇーなぁー”と思っていたけど、
本作のエミールは素晴らしい。


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無鉄砲だけど、頭が良くて、快活で、人徳があって、みんなから好かれる。
そんな嫌味のない魅力的なキャラクターを演じるのは難しいでしょう。
かなり過酷な撮影にも果敢に挑んでいる。


それから、クリスと対立する父親を演じたウィリアム・ハート。
出番は少ないけど、やっぱり強烈な存在感だ。
出てくるだけで映画が締る。


母親を演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンもなかなかのインパクト。
なんなんでしょうね、この女優さんの醸し出す良い意味での負のオーラは・・・
この映画でも『ミスト』みたいに「神よ!!!」って叫び出しそうで怖かったよ。


パール・ジャムのエディ・ヴェダーの音楽も印象的で良かった。


キャストも良いし、映像も綺麗、音楽も耳に残る、
壮大な自然も美しい、2時間28分全く飽きさせない、
そして、気品があり、詩的で、高尚な映画だった。


のですが・・・高尚過ぎちゃって・・・頭の悪い伊藤Pは、ラストの解釈に戸惑った。


<以下、ネタバレとは言っても、多くの作品紹介で出ているので、ネタバレじゃないか?>


自分の人生が全てレールに乗せられていると感じたクリスは、
自由を得るために旅に出る。


そこには両親への反発心が多分にあった。


クリスは旅の最中、何度も親に対しての不満を漏らす。
旅の原動力でもあった。


今まであった両親の束縛は、
クリスが旅先で誘われても1箇所に留まろうとしなかった要因のひとつでしょう。


クリスの取る行動の多くは、両親に起因している。


そして、アラスカに辿り着いたクリスは、誤って毒草を食べ死へと突き進む。


死の床でクリスは、
「幸せを分かち合えたり、自分を理解してくれる相手がいるって大切だ」
ということに気が付く。


死を持って、そのことを我々に教えてくれるわけですが、


最後の


「もし僕が笑顔で胸に飛び込んだなら
 見てくれるだろうか
 今 僕が見ているものを」


「光を見た
 神を見た
 本当の幸せを見た」


というセリフが上手く解釈できなくて、プチ苦しんだ。
当然、不仲であった両親が大いに関わってくるわけだ。


“うーん”と色々とない頭で考えていると、
この話が「実話」であったというテロップが出てきた。


いつもの如く何の知識も持たずに見たので、
この「実話でした」にぶったまげて、思考も吹っ飛んだ。


すげー、話だ・・・


ということで、思考回路が停止したため、未だ完全に解釈出来ていません。


と言い訳をしてみたりして。
まぁ、なんとなくは掴んでいるんだけどね。。。


エミール・ハーシュ


※『イントゥ・ザ・ワイルド』エミール・ハーシュ インタビュー テキスト

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コメント (2)

miran:

彼と同世代な私ですが、ちょっと共感できない部分があるのは私が歳をとったせいなのだと思い、20代で観ていたなら確実にさすらう旅に出ているなと思い。でも、出会えてよかった作品です。

伊藤P:

>marinさん

度々コメントありがとうございます。
そう、絶対に10代後半から20代に前半の時に見たら、スンゲー共感していたと思います!


同じ様に年齢によってまるで感じ方が違うであろう映画を、『イントゥ・ザ・ワイルド』を見て思い出しました。
故リバー・フェニックス主演の『旅立ちの時』です。
リバー演じる主人公と同年代ぐらいの時に見て、めちゃくちゃ突き刺さりました。
以来、見ていないのですが、今見ても多分、あの時の高揚感は得られないでしょう。
あの時の感動を大切にしたいと思っているので、もう見ないと思います。


見る年齢によって感じ方が大きく変わる映画ってありますよね。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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