![]() 1/17より日比谷スカラ座ほか全国東宝系にて 配給会社:東宝 (C)2009 映画『感染列島』製作委員会 |
突如、日本列島を襲った新型ウィルス。
瞬く間に大感染していく見えない敵と闘う医師、
患者、そして、患者の家族たちの姿を描いたパニック人間ドラマ。
まず、オリジナル企画であることに注目したい。
リメイク、テレビドラマやベストセラー小説、人気漫画の映画化が多い昨今の邦画。
その中でも先導的な東宝が、このクラスの娯楽作品をオリジナル脚本で作った。
これが良い意味で意外だった。
ドラマや小説、漫画にある程度の知名度があれば、
それらが映画化されるというだけで話題になるし、
余程ファンを裏切るような内容でない限り、集客も想定しやすい。
でも『感染列島』には、
そういった基盤がないから、完全に映画で勝負しなくちゃならない。
しかし、元がない代わりに、本作には時代性という強い味方が存在する。
今年の1月2日にベトナムで13歳の少女が、鳥インフルエンザと見られる症状で死亡。
5日には中国・北京で鳥インフルエンザに感染していた19歳の女性が死亡した。
世界保健機構(WHO)は、2009年1月7日時点で、
全世界で発症者数393人、うち死亡248人と報告。
発症者の63%の人が死亡している。
(コチラのサイトを参照)
ヒトからヒトへの感染例はないけど、
変異して新型のインフルエンザになる可能性も示唆されている。
どちらにしても、現に鳥インフルエンザで死亡者が出ているし、
いつ新型ウィルスに変異するかも分からない。
現実社会でウィルス危機の不安を抱えている中で、
この『感染列島』はあまりにもタイムリーだ。
『感染列島』に登場するウィルスは、
有効なワクチンが存在しない、しかもヒトからヒトへ感染する新型ウィルスで、
瞬く間に全国的に広がっていく。
鳥インフルエンザじゃないけど、やはりこれだけ頻繁に報道されていると、
当然、思い起こしちゃう。
そんな今の時代だからこその『感染列島』ですが、
今までの映画になかったウィルスとの戦いが描かれている。
かつて『アウトブレイク』とか、近年では『アイ・アム・レジェンド』とか、
ウィルスを扱った映画はあるけど、ウィルスが感染していく過程と、
ウィルスを分析し、どう対処していくかを描いた作品はなかったのでは?
・それは何か? → ウイルスの正体
・それは何をするのか? → 感染者の症状
・それはどこから来たのか? → 感染経路の究明
・それをどう殺すのか → 治療法
4つの命題を一つずつ潰していき、それからワクチンが開発される。
こうやってウィルスに対峙していくんだぁーって。
そして、その間、医師や看護師たちは患者に対症療法を施すしかなく、
その医師たちの奮闘ぶりは、この映画の肝でもある。
自分に感染する恐れもある中、家にも帰らず患者を診る医師と看護師たち。
肉体的にも精神的にも辛い、過酷な現場に従事する彼らの姿をリアルに描き出している。
![感染列島](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/kansen5.jpg)
また、役者も概ね良かった。
医師を演じた妻夫木聡はいつも通りっちゃいつも通なんだけど、
役柄にピッタリとはまっていると思う。
![感染列島](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/kansen4.jpg)
相手役の檀れいは、
事態の究明と感染拡大を防ぐためWHOから派遣されたメディカルオフィサー役で、
私的感情を押し殺して、自分のやるべきことをやらなければならない女性を、
説得力を持って演じている。
![感染列島](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/kansen6.jpg)
この二人の芝居が滑ると、映画の世界が台無しになってしまうんだけど、
流石、共にキャリアを積んでいるだけあって、安心して見ていられる。
国仲涼子、池脇千鶴、佐藤浩市、藤竜也、光石研、キムラ緑子と、
他の主要キャストも実力派が揃っている。
少々気持ちの悪い無名の研究者を演じたカンニング竹山が、
思いの外、演技が上手くて驚いた。
![感染列島](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/kansen3.jpg)
逆に同じくお笑い芸人の田中裕二(爆笑問題)は、ちーと芝居が臭かったな。
でもそういう役柄だから仕方ないか・・・
![感染列島](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/kansen7.jpg)
オリジナル企画、時事性、内容、キャスティングどれも良いんだけど、
一点、残念なことがある。
それはリアリズム。
序盤と病院内のやり取りは、リアリティがあるんだけど、
爆発的な感染によって、交通危機が凍結し、都市機能も停止。
日本の経済すら破綻してしまうという描写は、やや大風呂敷を広げ過ぎたように思う。
銀座とか未曾有の事態に陥っているのに、
そこからそれ程遠くない場所で暮らしている住民(特に田中裕二親子)は、ノホホンとしていたりする。
都市機能が崩壊しているのなら、惨事を伝える報道機関だって正常に機能していないでしょう。
流通機能も麻痺しているだろうから、食を得るのも困難だろうし、
ガスや電気の供給も通常とはいえないでしょう。
電気で言えば、田中裕二親子の家はローソクで明かりを取っているのに、
舞台となる病院は電気バリバリ使っている。
携帯電話のメールは勿論、パソコンの通信だって出来ちゃう。
『252-生存者あり-』もそうだったんだけど、
こういった被害の規模にムラがあると、やや白ける。
そして、これだけウィルスが猛威を振るっているというのに、
妻夫木聡と檀れいは、外出時にマスクすらしていない。
ちーと無防備過ぎやしませんか?
あと、日本での感染の原因を作った○○の行動も腑に落ちないな。
あれだけの感染力を持っているウィルスなんだから、
どう考えても○○が○○に辿り着くまでに、もっと多くの人たちに、
それも多くの国々の人々に感染するでしょう。
重箱の隅を突くようで、申し訳ないんだけど、
もうちょっと細部まで徹底してくれたらなぁ〜って。
因みに、エンディング間近の大学講義室で檀れいが、
宗教改革者マルティン・ルターの格言を口にするんだけど、
全く同じ格言が映画『フィッシュストーリー』(3月公開)で使用されていた。