![]() 3/20より角川シネマ新宿ほか全国にて 配給会社:角川映画 (C)2009「ドロップ」製作委員会 |
不良に憧れていたヒロシは、不良が集まる公立狛江北中学校に転校。
狛江北中最強の達也と意気投合し、仲間と共にケンカや悪さを繰り返す。
ドロップアウトした生活の中で、ヒロシは友情、家族の大切さを学び、
段々と成長していく。
お笑い芸人コンビ品川庄司の品川祐が、
品川ヒロシ名義で(?)書いた自伝的小説&コミック「ドロップ」の映画化。
『七人のおたく』、『ナトゥ〜踊る!ニンジャ伝説〜』の南原清隆(ウッチャンナンチャン)、
『岸和田少年愚連隊』、『無問題』の岡村隆史(ナインティナイン)など、
昔からお笑い芸人が映画に出演することはあったけど、
ここ数年、お笑い芸人の映画進出が目に付く。
『蛇イチゴ』、『純喫茶磯辺』ほか多数:宮迫博之(雨上がり決死隊)
『うた魂♪』、『GOEMON』:ゴリ(ガレッジセール)
『キサラギ』、『ハンサムスーツ』:塚地武雅(ドランクドラゴン)、大島美幸(森三中)
『感染列島』、『守護天使』:カンニング竹山
『ヤッターマン』:ケンドーコバヤシ
『天国はまだ遠く』:徳井義実(チュートリアル)
『ララピポ』:村上知子(森三中)
『さくらな人たち』:河本準一(次長課長)
先述のナンチャンは、最近『その日のまえに』に主演しているし、
岡村隆史も『少林少女』に出演している。
挙げ出したらたらキリがない。
そして、お笑い芸人が役者として映画に出演するだけに留まらず、
映画を撮ってしまうケースも当然ある。
その筆頭が、北野武監督だろう。
あとは『大日本人』に引き続き、新作を撮っている松本人志(ダウンタウン)や、
あまり知られていないけど『ピーナッツ』の内村光良(ウッチャンナンチャン)等が挙げられる。
そして、ここに来てカンヌ映画祭に参加して味をしめた(?)吉本興業が、
沖縄映画祭(3/19〜3/22)を開催し、本格的に映画業界に進出。
『ドロップ』をはじめ、
既に劇場公開が決まっている『ニセ札』(木村祐一監督)、
『南の島のフリムン』(ゴリ監督)、『板尾創路の脱獄王』(板尾創路監督)といった感じで、
映画祭に向けて所属芸人の監督作品を連発してきた。
既にネームバリューがあるお笑い芸人が映画監督に挑戦するだけで、
それなりにインパクトがあり、ニュース性も高くなる。
ビジネスの幅も、集客も新人監督よりは広がる見込みがある。
これは役者にも言えたことで、
ある程度の演技が保証されていて、ちょっと無理なことでもやってくれる。
観客にとっても顔馴染みのお笑い芸人の方が新人を使うよりも安心だ。
ということで、メリット多々ありなんだけど、
これをやり過ぎちゃうと、生粋の映画職人や役者が成長しないというデメリットもある
なので、滅多やたらとお笑い芸人の方々が、
映画業界に進出するのは如何なものか?と思っていた。
で、『ドロップ』。
![ドロップ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/drop2.jpg)
品川祐は、テレビで見る限り頭の回転は速いし、知識も豊富だし、
発言も筋肉ネタしかない相方の庄司智春よりも気が利いている。
が、頭が良いから映画監督が出来るとは限らないわけだし、
あれだけテレビに出まくっている人が、
映画監督という超過酷な仕事をこなせるわけも無い。
ということで、「お手並み拝見!」という感じで見始めたんだけど、
結構、良く出来ていました。
宮川大輔のアドリブと思しきセリフや、
次長課長の河本準一のネタ(面白かったけど)とか、不必要なところもあるけど、
映画としては整合性がきちんと取れていると思う。
初監督作品は、“切る勇気”が無くて、
必要以上にダラダラしてしまうケースが多かったりするんだけど、
『ドロップ』はテンポが良い。
内容も単純明快。
分かる奴だけ分かればよいという様なマスターベーション映画よりも100倍良い。
中学生(途中から高校生)の設定なのに、
二十歳を越えている成宮寛貴、水嶋ヒロらが演じているのは不自然という人もいるようだが、
じゃぁ、現役中学生の役者たちを起用して面白くって、
世間から注目されるような『ドロップ』が作れるか?
といったら、絶対に無理だと思う。
それは『クローズ ZERO』にも言えたことだ。
![ドロップ](http://www.t-shirt-ya.com/itoup/images/drop3.jpg)
あと、喧嘩のシーンがかなり良かった。
品川ヒロシ監督はジャッキー・チェンからの影響を受けたとコメントしている通り、
身体の一連の動きがちゃんと分かるように撮ってある。
引きの絵を撮らずに、寄りのショットを細かく繋いで、
アクションをしているかのように見せる演出が最近多かったから、
『ドロップ』のアクション演出は見ていてとても気持ちが良かった。
そして、こういうアクションを撮るということは、
役者がメチャクチャ大変ってことだ。
成宮寛貴、水嶋ヒロをはじめ、出演者たちは吹替え無しでアクションシーンを演じた。
一連の動きが分かるということは、誤魔化さないでやっているってことで、
その運動量は凄まじかったことでしょう。
更には拳にしろ、蹴りにしろ、バットにしろ、
結構、マジ当てをガンガンやっていた。
事実、成宮寛貴&水嶋ヒロの両雄にインタビューしたら、
アクションは相当ハードで、全身アザだらけになったと言っていた。
しかも成宮寛貴は、誤って水嶋ヒロの股間を蹴ってしまったと言う。
この役者たちの苦労は、壮絶な喧嘩シーンからヒシヒシと伝わってきた。
学校にも行かない、勉強もしない、仕事もしない。
喧嘩に明け暮れているだけの十代の若者たちを見て、
「そんなんじゃダメだ!!!」と言う大人もいると思うけど、
それを言っちゃ、不良映画は成り立たないよ。
『ガキ帝国』、「ビーバップハイスクール」シリーズ、、
「3年B組金八先生」第1シリーズ、「スクールウォーズ」など、
80年代の映画やテレビドラマでもそんな不良たちは出てきた。
そして、『ドロップ』のヒロシをはじめ、
登場人物たちは多かれ少なかれ、きちんと成長を遂げている。
『ドロップ』は今風な部分を取り入れながらも、80年代カラーが多分にあって、
個人的には懐かしさを感じつつ、気持ちよく見ることが出来たんだよね。
初の映画撮影現場だから、周りのスタッフたちのサポートもあっただろうけど、
品川ヒロシ監督は、本当に器用だと思う。
『ドロップ』
※成宮寛貴&水嶋ヒロ 取材記
※成宮寛貴&水嶋ヒロ インタビュー テキスト