2008年02月06日更新

#186 『団塊ボーイズ』

仕事も妻も家も失った見栄っ張りの実業家ウディ。
昔はワイルドだったけど、妻子の尻に引かれている歯科医ダグ。
小説家を目指すが、妻と娘から粗大ゴミ扱いされている配管工ボビー。
恋愛経験ゼロのパソコンヲタのダドリー。


煮詰まった日々を過ごしているオッサン4人が、
ハーレーダビッドソンにまたがって、目指せ夢のカリフォルニア!
アメリカ横断3200kmの旅に出るロードムービー。




団塊ボーイズ
『団塊ボーイズ』

2/9より新宿バルト9ほか全国にて
配給会社:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
(C) 2006 TOUCHSTONE PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.




冴えないオッサンたちが、一念発起して夢追いの旅。
道中思い通りにいかないけど、ちょっと良いことあるよね。
という超ウルトラ典型的なアメリカンコメディ。


昔は多く公開されていたこの手の作品ですが、
今ではすっかり日本未公開のビデオストレート。


見る機会が減ってしまった分、反って新鮮で楽しんで見ることが出来た。
判りきっている展開だけど、安心だしね。


で、劇中、多くの定番ロックチューンがかかる。
特筆するべきは、その選曲のセンス。
単なる雰囲気作りのための曲ではなく、シーンごとに意味を見出すことが出来る。


今回はそのうちの幾つかを、判る範囲で解説してみよう。


■Gimme Some Lovin' - Steve Winwood(Spencer Davis Group)
スティーブ・ウィンウッドの代表作で、ブルース・ブラザースのカバーでも有名。
伊藤Pも昔、バンドで演奏したことがある。


<解説>
冒頭、ハーレーに乗った4人のオッサンが地元を走るシーンでかかる。
家族たちからさえも愛情を与えてもらえなくなったオッサンたちが、
なんでも良いから愛を求めて旅に出る。
“俺に愛情をくれぇぇぇぇ!!!”つまり、“give me some lovin'”だ。


■Call Me The Breeze - Lynyrd Skynyrd
レイナード・スキナードの代表作「Second Helping」に収録。
ちょっと前にクラプトンと共作アルバムを発表したJ.J.ケイルのカバー。
穏やかなケイルのバージョンに対して、スキナード版はトリプルギター全快のロックチューンに仕上がっている。


<解説>
旅に出た4人のオッサンたちが、気持ちよさそうに荒野を走り抜けるシーンでかかる。
バイカーはチームになってツーリングをするので、
4人のオッサンもワイルド・ホッグスというチーム名を名乗っていて、
チーム名で呼ばれることを嬉しく思っている。
“Breeze=そよ風”を浴びながら、爽快にバイクを運転する気分と、
“俺たちを○○って呼びな!”というバイカー心理から“Call Me The Breeze”だ。


■That Smell - Lynyrd Skynyrd
またまたレイナード・スキナード。
メンバーが死亡した悲劇の飛行機事故の直前に発売された「Street Survivors」収録。


<解説>
4人のオッサンは、ハーレーでアメリカ中を駆け巡るリアル・バイカーチームに憧れている。
そんなオッサンたちは、旅の途中、本物のバイカーチームが列を成して爆進する姿を目にする。
その時、オッサンの一人が「あぁ、このニオイだよ」と言う。
その後、4人のオッサンは大量のハーレーが駐車されているバーに入店する。
ところが、バーにたむろしているバイカーたちは、ちょっと危険臭の漂う怪しい奴らだった。


その店でかかっているのがこの“That Smell”。
“あのニオイ”である。


■Wanted : Dead or Alive - Bon Jovi
メガヒットアルバム「Slippery When Wet」収録、ボン・ジョビの代表曲のひとつ。
このアルバムに関しては盟友ナレーター朝ちゃんのブログ「メタル無頼漢」を参照してください。


<解説>
バーで遭遇したバイカーたちはギャング集団で、見事にはめられダドリーのハー
レーが奪われる。
一旦は引き下がるも、ウディはバーに引き返し、
こそこそ隠れながらバイカーたちのハーレーのチューブを切断。
奪われたダドリーのハーレーも取り返す。この一連のシーケンスでかかる。


“Wanted : Dead or Alive”とは、“お尋ね者 生死問わず”のこと。
西部劇とかで出てくる、お尋ね者のビラに書いてある一文だ。
スティーブ・マックィーンの出世作となったテレビシリーズ「拳銃無宿」の原題でもある。


ハーレーを取り返す、してやったりのオッサンたちだが、
当然の如く、バイカーたちが仕返しにやってくる。
そう、4人のオッサンたちはお尋ね者になるのだ。生きていようが、死んでいようが。。。
彼らの行く末を暗示する選曲。


■Highway To Hell - AC/DC
オーストラリアが生んだ偉大なるバンドにして、メタル界の大御所AC/DCの代表曲。
バンドを世界的に認知させた同名アルバムに収録。


<解説>
ハーレーを取り返し、再び旅に出る4人のオッサンたち。
意気揚々とバーの前を走りぬけ、
“ザマー!見ろっ!”とバイカーたちを挑発するシーンでかかる。


“Highway To Hell”、つまり“地獄へのハイウェイ”。
今は調子こいているけど、4人を待ち受けているのは“地獄”なんだよぉぉぉ!!


■Good Vibrations - The Beach Boys
60年代、ビートルズに対抗できる唯一のアメリカン・バンドだったビーチ・ボーイズの代表曲。
単純そうに聴こえるけどテルミンを導入したりと、凝ったアレンジがなされている。
でも、やっぱり陽気で、サーフィンで、ビーチな気分だ。


<解説>
今まではゴリゴリのハードロック主体の選曲が多かっただけに、
何故、ビーチ・ボーイズ!?って思ったけど、
4人のオッサンが行き着く先が、そこだからなのね。。。
かなり安易だけど、シーンのイメージを切り替える意味も含め、納得の選曲。


他にもGrand Funk RailroadやThe Allman Brothers Bandの曲とかも使用されているが、
1回しか見ていないので、どのシーンでかかったか忘れてもーた。


きっと、上記のようにシーンに意味を持たせる選曲になっているのでしょう。
これから見る方々、是非意識してご鑑賞下さい。


あっ、勿論、これらロックソングを知らなくても、
十分楽しめる作品ですので、安心して見て下さい。


長くなりましたが、最後に一言。


ハーレーで旅に出る。旅にルールはない。
ということで、4人のオッサンたちは出発前に携帯を破壊する。


でも腕時計は捨てない。


ハーレーが登場するロードムービーといえば、
当然『イージーライダー』だ。
『イージーライダー』の冒頭、ピーター・フォンダ演じる主人公は腕時計を捨てる。
“俺たちヒッピー、自由人。時間の概念なんていらねぇー”って。


『団塊ボーイズ』には『イージーライダー』のオマージュが多分に入っているのに、
何故時計を捨てない!


それをずっと気にしながら見ていたら、あぁ、そういうことだったねぇ〜。
試写室で噴出したんだけど、伊藤P以外、誰も笑っていなかった。。。


あと、邦題の「団塊」ですが、面白いタイトルだけど、ウディたちはこの世代ではありません。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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