2008年04月07日更新

#204 『つぐない』

タイトル、コスプレチックな衣装を身にまとったキーラ・ナイトレイ。
このメイン・ビジュアルに完全にミスディレクションされた。




『つぐない』
『つぐない』
4/12よりテアトルタイムズスクエア、シャンテ・シネほか全国にて順次公開
配給会社:東宝東和




てっきり宮廷とか上流階級のお嬢ちゃん、お坊ちゃんの恋愛映画かな?って。
いや、確かに政府官僚の長女の恋愛を描いている。
だけど、スケールがこんなに大きい超大作映画だとは思わなかった。


1930年代、戦火が忍び寄るイギリス。
政府官僚のタリス家の長女セシーリアと使用人の息子ロビーは、
互いに強烈に惹かれ合い愛し合う。
しかし、この二人のやり取りを勘違いして受け取った妹のブライオニーの狂言によって、
セシーリアとロビーの運命は大きく狂いだす。


オスカーに多部門でノミネートされただけあって、見所はたくさんある。


恋愛、悲哀、心理ドラマ、ミステリー、戦争と様々な要素を入れつつ、
上手くブレンドしていて、偏りがない。
おまけにきっちりとオチをつけて終わらせてくれる。


このオチがとても効果的で、引き裂かれたセシーリアとロビーだけでなく、
ブライオニーの長年の苦悩を一瞬にして浮き彫りにさせ、
タイトルの『つぐない(Atonement)」に直結させられる。


『つぐない』


役者陣も良い。
セシーリアを演じたキーラ・ナイトレイは、いつも演技に力みがあるように見えるんだけど、
今回は大爆発するシーンもあるけど、比較的抑えた演技で感情を表現している。


ロビー役のジェームズ・マカヴォイは、不可抗力な悲劇に見舞われ苦悩する。
前作『ラストキング・オブ・スコットランド』同様、
マゾな男が良く似合う。


そして、何よりもブライオニーを演じ、
若干13歳でアカデミー助演女優賞にノミネートされたシーアシャ・ローナンと
成長したブライオニー役のロモーラ・ガライが良い。


シーアシャは後先考えずに、無責任な発言をしてしまう子供の残酷性を良く出している。

ロモーナはとにかくキモイ。
何を考えているのかわからないし、そのずんぐりとして容姿から、
『ノーカントリー』の殺し屋シガーを連想してしまった。
“なにしでかんすんだ〜、この女”って。


アカデミー作曲賞を受賞した音楽も使い方が面白いし、効果的。


それと撮影もテクニカルだ。
戦場となったダンケルクの砂浜を、ロビーが徘徊するシーンでは、
『トゥモロー・ワールド』には及ばないまでも、素晴らしい長回しを見せてくれる


『つぐない』


重量感のある美術やセット、一流の役者たち。


一見、こじんまりとした作品に見えるが、
一人の子供によって運命を狂わされ、
さらには戦争によって、より大きな渦へと巻き込まれていく人々を、
巧みな演出で描いた大河メロドラマだ。


最後に:先日亡くなったアンソニー・ミンゲラ監督がちょっとだけ出演している。合掌。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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