2008年12月25日更新

#316 『その男ヴァン・ダム』


その男ヴァン・ダム

『その男ヴァン・ダム』

12/27よりシネマライズほか全国にて
(c)2008 GAUMONT-SAMSA FILM-ARTEMIS PRODUCTIONS-RTBF (Television belge)




落ち目のアクション俳優ジャン=クロード・ヴァン・ダムが、
ジャン=クロード・ヴァン・ダムとして出演し、
郵便局強盗事件に巻き込まれてしまうという異色作。


若い映画ファンにとって、ジャン=クロード・ヴァン・ダム(以下、JCVD)と言われても、
ピンと来ないかもしれないけど、オーバー30(特に男子)だったら、
『その男ヴァン・ダム』という変なタイトルを見ただけで興味をそそられるでしょう。


その男ヴァン・ダム


伊藤PがJCVDの名前を知ったのは、89年の『サイボーグ』。
当時、金曜日の夜にやっていた「ショウビズ」という海外情報番組で紹介された。


荒廃した近未来が舞台で「北斗の拳」の様な世界観を持った格闘アクション映画。
マーシャルアーツでチャンピオンになったベルギー出身のJCVDという変わった名前の俳優が主役。


この2つの情報だけで、アクション大好きな映画少年はイチコロだった。


当然の如く見た。
流石に細かい内容までは覚えていないけど、スタローンやシュワちゃんには無い切れ、
ジャッキーとはまるで違う動きが新鮮だったことは、今でも記憶に残っている。


特に変則的な蹴りのインパクトは大で、
それがJCVDのトレードマークにもなった。


その後も『キックボクサー』('89)、『ブルージーン・コップ』('90)、
『ライオンハート』('91)、『ダブル・インパクト』('91)、
『ストリートファイター』('94)、『タイムコップ』('94)といった
アクション映画に出演。


これといった大ヒット作は無いけど、
ジャッキー、スタローン、シュワちゃんに続くアクション・スターとして活躍していた。

そして、JCVDの最大の功績は、香港アクションをハリウッドに持ち込んだこと。


クエンティン・タランティーノが、ジョン・ウーだ、香港アクションだと言う前に、
JCVDは、ジョン・ウーをハリウッドに招いている。
ジョン・ウーが93年に手掛けたJCVD主演の『ハード・ターゲット』は、ハリウッド・デビュー作だ。


その後も『マキシマム・リスク』('96)でリンゴ・ラム、
『ダブルチーム』('97)、『ノック・オフ』('98)でツイ・ハークと仕事をしている。


また、裏ネタも豊富で、
シュワちゃん主演のSFアクション『プレデター』('87)に登場する怪物プレデターを演じたのは、
実はJCVDだったとか、


『ユニバーサル・ソルジャー』('92)で共演した『ロッキー4』のドラコこと、
ドルフ・ラングレンとかなり仲が悪く、
カンヌ映画祭のレッドカーペットで一触触発状態になったりした。


その男ヴァンダム


そんなJCVDですが、恐らく、
日本で最後に注目されたのは95年の『サドン・デス』でしょう。


以降は完全にC級俳優。
2000年台に入って、かろうじて出演作が劇場公開されてはいたけど、
どれも小規模公開。


そして、2000年の中盤になるとほとんどの出演作がビデオ・スルーとなり、
完全に終わった人となってしまっていた。


伊藤PもJCVD作品を結構見ている方だったけど、
最後に見た出演作は2001年の『レプリカント』だ。


この作品でJCVDは来日して、なんと伊藤Pはインタビューをさせてもらった。


気難しい人という話は聞いてはいたんだけど、あまり笑顔も見せることなく、
終始硬い表情だったのを今でも覚えている。
(それでもヴァン・ダム・キックを披露してくれたんだけどね)


まぁ、インタビューもしたし、出演作品は公開されないしで、
伊藤Pの中でも『レプリカント』で一区切りって感じだった。


その後、面白いと思ったのは、テレビ東京の木曜洋画劇場で出演作が放送される際の、
“ヴァヴァヴァヴァヴァヴァンダム!”とか、
“ヴァンダミングアクション!!”といったセンス抜群の番宣CMぐらいだった。


そんなバカウケCMも、早いものでもう3〜4年も前。
すっかり過去の人となっていたところで『その男ヴァン・ダム』である。


結局、ドタキャンになっちゃったけど、JCVDにインタビュー出来そうだったし
何よりもJCVDがJCVDを演じるというのが面白いと思ったので見に行った。


まず、冒頭の長回しのアクションシーンが感涙もの。


JCVDにとって、年齢的に辛い撮影だったらしんだけど、
頑張った甲斐大有り。


“48歳だからもうアクション無理”って、そんなことないよ!


しかし、この後、この映画にはアクションシーンがほとんど出てこなくなる。


本作は映画業界でもプライベートでもどん底にいるJCVDをJCVDが演じているので、
JCVDはあくまで俳優という役柄。


郵便局強盗事件に巻き込まれたとしても、
映画のようにマーシャルアーツで犯人を倒すことは出来ない。


そこが本作のミソなんだけど、どうしてもJCVDなんで、「そこで蹴れ!!」とか思ってしまう。
一向にアクションを決めないJCVDに対して、結構、ストレスが溜まった。


その男ヴァン・ダム


あと、最初、JCVDが郵便局強盗犯かのような見せ方をした後、
時間を戻して、別の角度から郵便局内の出来事を見せ、
JCVDは人質でしたという構成なんだけど、これがあまり上手く機能していないように思う。


ただでさえ、JCVDのアクションが封印されて、我慢を強いられているのに、
驚きの無い、分かり切った展開を2回も見せられるのは辛い。


展開という展開もさほどないので、結構中だるみする。


しかしながら、JCVDと彼のファンである強盗一味の一人との会話は面白い。


舞台はJCVDの地元であるベルギーの郵便局。


今は落ち目であったとしても、JCVDは地元が生んだスーパースターだ。
その辺の“リスペクト”が泣ける。


そして、泣けるといえば、突然、JCVDが観客に向かって語るモノローグ。


自身の成功から転落に到るまでの話を激白。


勿論、映画はフィクションなんだけど、
このシーンはJCVDが本当に胸中を露呈したんだと思う。


ハリウッドで輝かしい成功を収めながらも、
次第に廃れていくスターの悲しみが滲み出ていたし、
実生活での己のミスの悔恨が痛切に伝わってくる。


JCVDの浮き沈みをリアルタイムで接してきた者は、
このシーンを様々な思いを持って見ることになるでしょう。


その男ヴァン・ダム


そして、本作の監督マブルク・エル・メクリ監督の最大の狙いは、
“俳優ジャン=クロード・ヴァン・ダム”を見せること。


得意のアクションを封印され、普通の人間として自分を演じるJCVD。
しっかりと演技していて、「なんだ、演技出来るんじゃない」って思った。


監督の狙い通り、俳優ジャン=クロード・ヴァン・ダムの新たな一面が見られる作品。


これを機に、演技派俳優の道に進んだりしないのかな?
頑張れ!JCVD!!!!


ということで、『その男ヴァン・ダム』が、
2008年最後の作品紹介となりました。


数えていないけど【裏部屋】含め、結構な数紹介させて頂きました。
ご愛読ありがとうございました。
引き続き、ご愛好の程よろしくお願い致します。


年内、まだまだ更新します!

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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