2009年02月04日更新

#334 『ララピポ』


ララピポ

『ララピポ』

2/7よりシネクイント、シネ・リーブル池袋、新宿ミラノ3ほか全国にて
配給会社:日活
(C)2009『ララピポ』製作委員会




世の中にはたくさんの人がいます。


野心家の風俗スカウトマン


デブ女。


風俗嬢になるOL


一流大学を出ながらも全く売れないフリーライター


SFオタクのカラオケボックス店員


ゴミ屋敷で暮らす実は熟女系AV女優の主婦


こんな人たちが織り成す群像劇『ララピポ』


「イン・ザ・プール」、「サウスバウンド」の奥田英朗の原作を、
『嫌われ松子の一生』 、『パコと魔法の絵本』の中島哲也が脚本化し、
彼の弟子である宮野雅之が初メガフォンを執っている。


原作は読んでいるのだけど、まるで覚えていない。
そんな昔に読んだわけじゃないのに・・・


配給の方が「結構、原作通りに描いていますよ」と言っていたが、
映画見ている最中も、全く内容が思い出されず、
自分の記憶喪失ぶり絶望した。


でも、そんな若年性痴呆症が功を奏し、
ほとんど原作に囚われることなく映画を見ることが出来た。


まず、特筆すべきは役者さんたちかな。


風俗専門のスカウトマン栗野を演じたのは成宮寛貴。


チャラさと強かさと、
結局“飼い犬”であるスカウトマンの駄目さ加減が絶妙にブレンドされている。


資料曰く「栗野にはすごく感情移入出来る(成宮談)」とある。


なんで成宮寛貴が、栗野に共感したのかは・・・
すまん・・・ご自身の力で調べてください・・・


ララピポ


続きまして、その栗野にスカウトされ言われるがままに、
風俗店で働くことになったトモコ役の中村ゆり。


これが本当に素晴らしい。


これだけ若くて、美しい女優がこんな役をやってしまうとは・・・
まさに体当たり演技。


ややセクシャルなシーンに対して、
本人曰く「まったく抵抗感がなかった」という根性の座りよう。


勿論、そういう度胸の良さだけでなく、
流されながらも、逞しいというトモコの複雑な性格も見事に体現している。


ナイス・キャスティング!


もうひとつのナイス・キャスティングといえば、
森三中の村上知子。


ロリータ・ファッションに身を包み、初の濡れ場にも果敢に挑んでいる。


資料曰く、本人が当時まだ男性経験が無かったこともあり、
濡れ場に対してかなりナーバスになったらしいんだけど、
こういう大胆なチャレンジは、意外と高い評価に繋がったりする。


しかも、本作の撮影中に出会った男性にその悩みを相談しているうちに、
そのまま電撃結婚。


キャリア、プライベート共に、
凄まじく結果オーライ。


濡れ場に限らず、
この村上知子は演じた玉木小百合のキャラを上手く表現している。
物怖じしない腹黒女で、見ているだけで相当むかつくんだな。


劇中でもボコられていたけど、本当にぶん殴りたくなる様なキャラだ。


こういう男性(だけかな?)の神経を逆なでするような女を演じるのも難しいと思うし、
イメージ的にも勇気がいるでしょう。


他の主要キャラも濱田マリを筆頭に、皆さんそれぞれハマリ役でした。


ララピポ


で、結構、強烈なキャラクターが出てくるので、
中身もちょっと強烈です。


風俗やらAV女優やらがガンガン登場するから、
チ○コネタとかも当然の如く出てくる。


ポスタービジュアルとかはカラフルな感じなので、
軽いノリのコメディだと思って見ると、やや戸惑うかも。


そして、このイメージと内容の乖離が、
実はこの作品最大のマイナス要素の様な気がする。


『嫌われ松子の一生』同様の手法で、
きつい内容をユーモアと色彩で包み込んで、ややマイルドにしているものの、
バカコメディだと認識した女性とかは、見たら絶対に引くと思う。


その溝を埋めるのが宣伝の仕事なんだろうけど、
そうはいっても中々難しいよね。


まぁ、宣伝の仕事はお客さんに劇場へ行ってもらうことだから、
バカコメディだろう勘違いされようと、劇場まで足を運ばせたら勝ちなんだけどね。


タイトルの意味も判りにくいし。
(ポスターとかチラシを良く観察するとタイトルの意味が書いてある)


ダメ人間たちの生き様を丁寧に描きながらも、
最終的にはポジティブな気分にさせてくれるし、
ラストに向かっての集約のさせ方もスマート。


コメディはコメディだけど意外と毒がある。


ってことを理解したうえで見れば、今の時代に合っている作品だと思うし、
あまり抵抗感無く楽しめるのでは?

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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