2010年11月30日更新

#534 『極悪レミー』


極悪レミー

『極悪レミー』


12/3よりシアターN渋谷ほか全国にて順次公開
配給会社:キングレコード、ビーズインターナショナル
C)2010 Lemmy Movie LLC
photo by Wes Orshoski




随分前の2006年9月の記事、
【裏部屋】「第1部:ツインタワー 〜 オリバーおっちゃんとボクと、時々、サマンサ・フォックス」にて、
中学生の時、渋谷パンテオンでベトナム戦争映画『プラトーン』を鑑賞した帰りに、
サマンサ・フォックスのグラビア・ヌードが掲載されていた「ペントハウス」を買ったと書いた。


サマンサ・フォックスは当時、「タッチ・ミー」という扇情的な歌で、
大ヒットを飛ばしていたイギリス人シンガー。


キュートな顔立ちと巨乳の持ち主で、
「Touch me, touch me....I wanna feel your body」とセクシーに歌う彼女に、
中坊は一発爆沈!


そんなわけでサマンサ・フォックスのヌードが掲載された「ペントハウス」を購入し、
お目当ての裸を見た思春期真っ只中の中坊は、ただただ「スゲー」って。


「ペントハウス」にはそんな爆乳ヌードの他に、
サマンサ・フォックスとイカツイ顔をしたオッサンが、
スタジオのミキサールームで仲睦まじそうに寄り添っている写真が掲載されていた。


「なんだ!このオヤジは!」


写真の下には、「モーターヘッドのレミー」という説明コメントが。


これが伊藤Pにとって、初めてのレミーとの接触だった。
(前置き、ながっ!)


その頃はまだそれほどハードロック/ヘビーメタル(HR/HM)を聴いておらず、
モーターヘッドというバンドすら知らなかった。


それから数年後、
なんかの音楽番組で「エース・オブ・スペイド」を演奏するモーターヘッドの映像を見た。


疾走感溢れる骨太なサウンド。
そして、マイクスタンドを高くして、マイクを見上げるようにしながら仁王立ちでベースを弾き、
表情を変えずにダミ声で吠える大男の姿にぶったまげた。


極悪レミー


「こ、これが、あのレミーかっ!」


その後、メタリカがモーターヘッドの大ファンで、かなり影響を受けていることや、
多くのアーティストたちが、レミーをリスペクトしていることを知った。


しかしながら、数多のHR/HMのCDをコレクションしているのにも関わらず、
モーターヘッドのアルバムは一枚も持っていない。


それ以前に、誰もが知っているヒット曲が、
「エース・オブ・スペイド」ぐらいしかないのに、
何故、レミーがみんなからそこまで慕われるのかが理解出来なかった。


メタルファンを名乗るな!というぐらい不届き者なのかもしれないが、
モーターヘッドやレミーの凄さをほとんど知らないまま、
レミーの魅力に肉薄するドキュメンタリー映画『極悪レミー』を見た。


そして、この映画を見て、
メタリカのメンバーをはじめ、多くの人たちが彼に心酔する理由が分った。


レミーは、スゲェ。


まず、自分を持っている。
迎合しない。


これだと思ったことは、
信念を持って突き進む。


それは音楽的なアティチュードだけでなく、生き様もだ。


レミーは、前バンドのホークウィンドを解雇されて、
1975年にモーターヘッドを結成して以来、
一貫してその音楽的な志向を変えていない。


スピード!爆音!ロックンロール!!
ベースを歪ませて、ブリブリと爆走!


極悪レミー


世の中がディスコブームになろうと、
パンクムーブメントが起ころうと、ニューウェーブが来ようと関係ない。


80年代のHR/HMブームが終わっても、
グランジをぶっ飛ばし、ラウド・ヘヴィネス系をも蹴散らす。


というか、後発組がモーターヘッドから影響を受けているのだ。


『極悪レミー』には、メタリカのメンバーや、
アンスラックスのスコット・イアン、メガデスのデイヴ・エレフソンが登場し、
レミー(モーターヘッド)からの影響を語っている。


レミーが結成したモーターヘッドがいなければ、
メタリカもメガデスもスレイヤーもアンスラックスも存在しなかった(かもしれない)。


このスラッシュ四天王がいなければ、
ラウド系も・・・となる。


ハードロック・ファンが毛嫌いするグランジに至っても、
本作には元ニルヴァーナのデイヴ・グロールや、サウンドガーデンのジェイソン・エヴァーマン、
アリス・イン・チェインズのマイク・アイネズといったグランジを支えたアーティストが登場し、
レミー(モーターヘッド)の魅力を語っている。


オジー・オズボーン、アリス・クーパー等、共にロックを牽引してきた盟友たちや、
元ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュ、
スティーヴ・ヴァイ、モトリー・クルーのニッキー・シックスといった、
HR/HMファンにとっては馴染み深い人たちも、もちろん登場する。


その他、ラモーンズのマーキー・ラモーン、クラッシュのミック・ジョーンズといったパンク勢、
ニューウェーヴ系である元ジョイ・ディヴィジョンのピーター・フック、
ロカビリーバンド、ストレイ・キャッツのスリム・ジム・ファントムなど、
もうジャンルを超越して、様々なミュージシャン達がレミーをリスペクト。


そして、なぜ、彼等がレミーと、レミーが作り出す音楽を愛するのかが、
このドキュメンタリー映画を見れば分る!


レミーは彼等に「オレを尊敬しろ」などと強要していない。
レミーの預かり知らぬところで、勝手に周りが影響を受けたのだ。


その影響力の強さは音楽だけではなく、
レミーの人柄に拠るところも大きいと思う。


レミーはとにかくポリシーを変えない。


ベースはリッケンバッカーしか使わない(ビートルズの影響)。
アンプはマーシャル直結で、音色はLOWとHIGHをゼロ、ミドルをマックスが定番。


極悪レミー


私生活ではマルボロ、ミリタリーグッズ、ブーツ、ゲーム、
好きなものはとことん極める。


女も大好きで、「今までに1000人以上の女と寝た」という。


酒も大好きで、コーラのジャックダニエル割りは、水みたいなもんだ。
糖尿病と診断されたのに、調合の割合を変えただけで飲み続けている。


義理堅く、気配りも出来て、ユーモアも忘れない。
ファンを大切にする。


だからみんなレミーを慕うんだ。
ってことがこの映画を見れば分る!


そんな影響を撒き散らしながら、
35年間、ひたすらレミーらしさ、モーターヘッドらしさ貫き通し、
尚且、日々、精進し続けている。


そんなレミーがスゲェ。


その凄さは『極悪レミー』を見れば分る!


モーターヘッドなんて知らない、レミーなんて知らない、
この手の音楽に興味がないという人は別に見なくていいけど、
HR/HMに触れたことのある人たちは、絶対に見た方が良い。


たったの2時間弱でレミーが好きになります。


ちゅうかさ、この前のさいたまスーパーアリーナでのメタリカの公演を見に行った人たちは、
見るべきだと思う。


この映画を見ずしてメタリカ・ファンと名乗るべからず。
(といいながら、メタリカのライブに行っていない、俺・・・)


さいたまスーパーアリーナのキャパがナンボかしらんが、
万単位でしょ?


大挙してメタリカのファンが『極悪レミー』を見に行ったら、
シアターN渋谷は大盛況だ!


『極悪レミー』の中での個人的なハイライトは、メタリカとの共演シーン。


メタリカの練習中に現れたレミーとラーズ・ウルリッヒ、カーク・ハメット、
ジェームズ・ヘットフィールドとのやり取りは感動的だ。


そして、メタリカのライブにレミーが客演し、
「ダメージ・ケース」を演奏するんだが、
こんなに楽しそうにしているジェームズを見たことがない。


本当に、本当に嬉しい!
オレはレミーが大好きだ!!


ということが、全身から伝わって来る。


それはカークも、ラーズも、新しいベーシストのロバート・トゥルージロも一緒。


帝王メタリカのメンバーの顔を破顔させてしまうレミー。


やっぱりスゲェ〜


極悪レミー


さて、余談ですが、
冒頭にサマンサ・フォックスのことを書きました。


“そういえば、最近どうしているんだろう?”と気になり、
調べてみたら、なんとレズビアンであることをカミングアウトし、
更には結婚したとか、しないとか。


しかもその仲介人をレミーが務める(た)との情報も。


やっぱりレミーはスゲェ〜。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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