2012年06月08日更新

#665 『ディヴァイド』

ディヴァイド

『ディヴァイド』
2012年6月9日よりシアターN渋谷ほか全国にて
配給:プレシディオ
©2010 R & D FILM 1, LLC. All rights reserved.


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何者かによって爆撃を受けたニューヨーク。
ビルの地下にあるシェルターに逃げ込んだ男女9人。


少ない食料と水、他人との共同生活、そして目的がわからない敵の陰。
彼らは互いに疑心暗鬼を募らせ、心身共に憔悴していく・・・。


ディヴァイド


閉鎖空間に置かれた複数の人たちがいがみ合い、
やがて秩序が崩壊するという展開は、よくあるパターンだ。
本作もその範疇で、特に目新しさを感じさせない。


いや、この手の他の作品にはない要素もあるにはある。


シチュエーション・スリラーは、「閉鎖空間からいかに出るか?」という
脱出劇的な要素を強く打ち出すことが多いが、本作はそれがそれほどでもない。


壊れていく人間に焦点を当てるために、この要素をあえて排したのかもしれないが、
もうちょっと展開や目的を作って起伏をつけてくれないと、見ている方はやや辛い。
上映時間112分とやや長めだしね。


また、9人たちがシェルターに追いやられるキッカケとなった爆撃が、
いったい誰によるものなのかが、きちんと明かされない。


シェルターに待避したのち、防御服を着た人たちの襲撃を受けるが、
子供を拉致するだけだ。


さっさと大人たちを殺せばいいのに殺さない。
その辺の理由ももったいぶるだけで明確ではない。
あそこまで見せるならもう少し説明があってもいいんじゃない?


監督はつるっパゲのアサシンが暴れまくる『ヒットマン』を撮ったパスカル・ロジェ。
フランス人らしく節々にヨーロピアンな雰囲気が漂う。
映像の色彩とかはジャン=ピエール・ジュネっぽい。


ディヴァイド


で、スタイリッシュ(死語?)なんだけど、アクションの演出はあんまり上手じゃないね。
戦闘シーンとか何がなんだかわからんかったよ。


そのわからなさを助長させたのが、役者たち。
女子は子供を抜くと2人だから区別は簡単なんだけど、野郎どもは似てるんだよね。顔が。
誰が誰だかよくわからない。


とはいえ、役者たちはみんな素晴らしい。
予算が潤沢にあるとは思えないB級のジャンル映画だけど、
そんなの関係ない!ってぐらい、皆さん力が入ってます。


海外は役者の層が厚いってことを改めて認識しましたね。


そんな役者陣の中で注目なのは、我々の世代としては、やはりマイケル・ビーンでしょう。


ディヴァイド


『ターミネーター』のカイル・リース。
『エイリアン2』のヒックス伍長。
『アビス』のハイラム・コフィ大尉。


ジェームズ・キャメロン監督のお気に入り俳優として活躍し、
日本でもかなり人気が高かった。


小生もマイケル・ビーンのファンであり、
常に気になる俳優のひとりだった。
そして、それは今でも変わらない。


キャメロン監督作品以外では、
チャーリー・シーンと共演した『ネイビー・シールズ』、
山岳アクション『K2/ハロルドとテイラー』などで主役を張ったり、
マイケル・ベイの『ザ・ロック』にも出演している。


その後は、多くのジャンル映画に出演しているベテラン俳優だ。


『ディヴァイド』では、以前よりシェルターで暮らしていたミッキーを演じている。
独裁者的で、みんなから煙たがられる存在だが、実は全うな人柄で、
ご贔屓俳優ということもあり、9人の中でも特に応援をしてしまった。


もう1人、注目なのがマリリンという母親を演じたロザンナ・アークエット。
80年代の洋画で育った人ならば、ピンッとくる名前でしょう。


マーティン・スコセッシ監督作『アフター・アワーズ』、
リュック・ベッソン監督作『グラン・ブルー』のヒロインを演じた女優さんだ。


ロックファンの間では、
TOTOの大名曲「ロザーナ」のタイトルの由来となった人物として知られている。





90年代もアクション、コメディ、シリアスドラマと幅広く演じ、
2002年には『デブラ・ウィンガーを探して』というドキュメンタリー映画の監督も務めている。


妹は『ロスト・ハイウェイ』のパトリシア・アークエット。
その他の兄弟もみんな俳優だ。


ロザンナ・アークエットは美人だし、出るとこは出ている女優さんだったので、
思春期真っ盛りのジャリは、イチコロでやられましたねぇ。
(マジでエロっくて、コケティッシュで、かわいかったんですよ!)


そんな青春時代の女優さんが、出演しているのは嬉しいんだけど、
今回はなんだか凄い役柄で・・・。
ちょっと複雑な気分になってしまいました。


ディヴァイド


まぁ、年の割には美を維持しているんだけど、
こんな役をよく受けたなぁ・・・って。
まぁ、逆に言えば、女優魂を感じるんですけどね。


ちゅうことで、マイケル・ビーンとロザンナ・アークエット共演作という点が、
小生にとってはとても重要なポイントでありました。
酒の肴になりますよ。


舞台が限定されている分、もう少しメリハリが欲しいところだが、
役者たちがとても頑張っていて、
風貌や態度の変化の過程を見事に演じている。


「役者で持っている」
そんな感じの映画でした。


さて、先日、マイケル・ビーンのインタビューを「エンタメ〜テレ 最新映画ナビ」に掲載したんですけど、
その中で、「出演者はみんな仲が悪かった」という発言があった。


その事実を知ったうえで『ディヴァイド』見ると、緊迫感が増します。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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